2回目の自己破産、費用や手続きは? 債務整理について弁護士が解説
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帝国データバンクの集計によれば、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、2020年4月の倒産件数および負債総額は前年同月の数字を上回る結果となりました。
昨今の新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、経済的に苦しくなってしまった人は少なくないでしょう。法務省のウェブサイトでも新型コロナウイルスに関する特設ページを用意し、自己破産や特定調停などの債務整理の方法を提示しています。
しかし、一度自己破産をした人が、再度自己破産をすることは可能なのでしょうか。
この記事では、2回目の自己破産をするときの要件や、自己破産できない場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。ご自身のご負担をいち早く軽くするために、ぜひご参考ください。
1、2回目の自己破産はできるのか
2回目の自己破産は、結論から先に言うと、できないわけではありません。自己破産について規定している破産法には自己破産の回数を制限するような文言がないからです。
ただし、自己破産ができることと、自己破産によって借金・債務を免責してもらえることは異なります。自己破産ができる可能性があるからといって、借金・債務の返済義務がなくなる可能性が同じくらいあるとは限りません。
2、2回目の自己破産をする要件
2回目の自己破産の場合、免責してもらうためには、以下の条件をクリアすることが必要です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
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(1)1回目の免責許可から7年以上経っている
破産法第252条第1項には、免責不許可事由がまとめられています。免責不許可事由とは、借金の返済義務をなくす「免責」を与えない一定条件のことです。免責不許可事由に当てはまる場合、基本的に免責の許可を得ることはできません。
このうち、第252条第1項第10号では、次のように記載されています。十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申し立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
したがって、2回目の自己破産によって免責許可を得るためには、1回目の自己破産で免責をしてもらってから7年以上経過している必要があります。
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(2)裁判所から裁量免責を得る
人によっては、やむを得ない理由で、7年以内に自己破産しなければいけないこともあるでしょう。そうした人を救済するために、破産法では、裁判所の判断で免責許可を決定できるものとしています(第252条第2項)。これを裁量免責といいます。
詳しい判断基準は次章で説明しますが、7年以内の自己破産であっても、この裁量免責で免責許可がおりる可能性もなくはありません。
ただし、2回目の自己破産の場合、裁判所は免責許可を出すべきかを相当厳しく審査します。加えて裁判所が、破産管財人を選任する可能性が高いです。
破産管財人とは、裁判所によって任命され、破産手続において破産財団に属する財産の管理および処分をする権利を有する者をいいます。通常は、破産者および主要な破産債権者と利害関係のない弁護士が選任されます。破産管財人は破産者に免責許可を下していいかどうか調査したり、破産者の財産を現金に換えて債権者に分配する業務を行います。
破産管財人が先導して進める手続きを、管財事件といいます。
管財事件となった場合、破産者は、まず破産管財人と打ち合わせ・面接を行います。このとき、借金を作った理由や月の収入金額、財産の有無などが聞かれるため、破産者は正直に答えなければいけません。
破産管財人は破産者との打ち合わせ・面接や、財産の売却と債権者への現金分配を通して、免責許可をしても問題ないか調査し、裁判所に報告を行います。報告を受けた裁判所によって免責許可決定がなされれば、借金返済の義務がなくなるという流れです。
なお、管財事件では、破産管財人に対して報酬(引継予納金)を支払う必要があります。東京地方裁判所の場合は、以下のとおりです。
●負債総額5000万円未満……50万円費用
●負債総額5000万円以上1億円未満……80万円費用
●負債総額1億円以上5億円未満……150万円費用
●負債総額5億円以上10億円未満……250万円費用
なお、東京地方裁判所には「少額管財事件」という手続きがあり、この場合は破産管財人の報酬が20万円となります。少額管財となるためには、「弁護士に依頼している」「破産手続きが3か月で終わる可能性がある」「債権者が50社未満」という3つの条件を満たさなくてはなりませんが、実務上はほとんどが少額管財事件として処理されています。
3、免責となる判断基準
前章で紹介したように、1回目の免責許可から7年以内の2回目の自己破産でも、裁判所が免責許可決定を出せば借金の支払義務がなくなります。
では、どのようなときに裁量免責がなされるのでしょうか。主な判断基準をご紹介しますが、下記に当てはまるからといって、必ず免責になるとは限らないことに留意してください。
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(1)1回目とは異なる原因で自己破産をする
2回目の自己破産をする原因が、1回目と異なるときは、裁量免責によって借金の返済義務がなくなる可能性があります。たとえば1回目は収入に見合わない買い物をしすぎて自己破産、2回目は病気による収入減で自己破産、といった場合などです。
ただ、たとえそれぞれの理由が異なっていたとしても、裁量免責が約束されるわけではありません。1回目は競馬で負けて自己破産をしていながら、2回目は友だちと遊びすぎて膨大な借金を作ったというような、二度も免責不許可事由が絡む場合は、むしろ厳しく審査されるでしょう。 -
(2)やむを得ない状況で自己破産をする
不可抗力で借金を抱えてしまい自己破産した場合も裁量免責となる場合があります。たとえば、親の介護で働けなくなった、就職先が倒産して生活費が稼げなくなったなどがあげられるでしょう。
また、昨今の新型コロナウイルス感染症の影響によって自己破産せざるを得ないようなときも、免責が認められる可能性があるでしょう。
4、2回目の自己破産ができない場合
2回目の自己破産で免責が得られない(あるいはそれが簡単に予想できる)場合は、以下のような、別の債務整理ができないか検討してみましょう。
●任意整理
任意整理とは、裁判所を通さず、債務者と債権者が話し合いを行い、返済方法を和解する手続きです。
具体的には、払いすぎた利息がある場合は利息制限法の利率に直し、元本への充当を行います(これを引き直し計算といいます)。さらに、今後の将来利息を免除してもらい、それによって負担を減らしつつ、債務者の支払い能力に応じた返済計画を立てていきます。
任意整理は、毎月の負担額が減るのが利点です。ただ、任意の話し合いのため、そもそも債権者が応じてくれない可能性があります。
●特定調停
特定調停とは、債務者と債権者の間に、裁判所が専任した調停委員が入り、返済方法の提案を行う手続きです。
債務者が裁判所に特定調停を申し立てると、裁判所から債権者に申し立ての通知がされます。その後、借金の引き直し計算が行われ、返済条件の協議へと進みます。返済計画に対して両者が合意すれば、手続きは完了です。
特定調停は、裁判所が間に入るため、双方が納得できる話し合いとなりやすいのが特徴です。一方、債権者が同意せず調停が成立しないことがある、成立した調停調書どおりの返済ができない場合は直ちに給料の差し押さえなどの強制執行がされてしまう危険性がある、といった注意点があります。
●個人再生
個人再生とは、借金を大幅に減額して返済を目指す手続きです。
利用する場合は、裁判所に再生計画案を提出し、その認可をもらわなければいけません。また、再生計画案が認められた場合、基本的に3年以内に借金を返済する必要があります。
個人再生のメリットは、住宅を残したまま借金の整理ができることです。ただし、債権者の過半数が不同意意見を出すと再生計画が認められない、手続きが煩雑である、などの注意点もあります。
5、まとめ
2回目の自己破産は、裁判所に厳しく審査される場合がほとんどです。
また、自己破産以外の方法を採るにしても、多くの法律知識が必要になってきたり、手続きが煩雑で手間がかかったりするなど、時間と手間が必要となります。
ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士であれば、個々の状況に応じて最適な方法を提示できるだけでなく、裁判所の手続きや債権者との交渉にも対応が可能です。
また、弁護士から債権者に対して債務整理を開始したことを知らせる受任通知をすることで、借金の取り立てをストップさせることもできます。
いずれにしても借金による精神的な負担を大きく減らせますので、ぜひお気軽にご相談いただければ幸いです。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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