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覚書と契約書の違いは? それぞれどのように使い分ける?

2022年08月04日
  • 一般企業法務
  • 覚書
  • 契約書
  • 違い
覚書と契約書の違いは? それぞれどのように使い分ける?

企業に勤めていると、時折「契約書の変更内容は覚書で」という話が出てきます。

契約書や覚書はビジネスマンにとって身近な書類といえますが、具体的にその違いはどういった部分にあるのでしょうか。また、覚書の法的拘束力は、どのような場合に認められるのでしょうか。

各書類の違いや作成方法などについて、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。

1、覚書と契約書の違いは?

早速、覚書と契約書の違いから見ていきましょう。

  1. (1)覚書と契約書

    覚書と契約書はどちらも企業間取引でよく用いられる文書ですが、ふたつの違いがあります。

    ひとつは、定義の違いです。覚書とは、当事者の間で取り決めた内容を忘れないように記しておく文書やメモのことをいいます。一方、契約書は、当事者間で契約を締結する際に作成されるその契約の内容を表示する文書とされています。どちらも当事者が合意した内容を記載した文書であることには変わりないため、契約書ではなく覚書を用いて契約を取り交わすこともあります。

    もうひとつは、各書類に対するイメージです。契約書がやや堅い雰囲気があるのに対して、覚書はライトな印象が持たれています。

  2. (2)念書について

    覚書や契約書とよく似た文書に、念書があります。これは、当事者の一方がもう一方の当事者に対して差し入れる書面で、差し入れる当事者だけが義務を負う場合に作成することが一般的です。

2、覚書と契約書の使い分けについて

覚書と契約書には定義やイメージの違いがあるものの、上述したように、覚書が契約書の代わりに使われることが少なくありません。それでは、実際どのように使い分けられているのでしょうか。一般的な使用場面についてご紹介します。

  1. (1)覚書を用いるとき

    ビジネスにおける覚書は、基本的に契約書の補佐的な役割として用いられます。例えば、契約をスムーズに進めるために、相手との相談によって決まった内容を記録しておくために作成する、といった具合です。

    また、事前に取り交わした契約書の内容を変更するときにも、よく用いられます。相手と取引をしている中で契約書の内容を部分的に変更する必要が出てきたとき、変更箇所のみを記載した覚書を作成する、といったケースは珍しくありません。

  2. (2)契約書を用いるとき

    契約書が取り交わされるのは、相手が契約に基づく行為をしない(契約の不履行)ことを抑制したり、万が一契約の不履行があった際のトラブルが発生したりすることを防いだりするためです。

    きちんとした文書が残っていないと、「御社はそのように言った」「いや、言っていない」という水掛け論になってしまいます。収拾がつかなければ、裁判に発展する可能性もあるでしょう。

    契約書には法的拘束力があるため、そのようなトラブルが発生するリスクを下げることが可能です。

3、覚書が法的拘束力を持つと判断される可能性が高いケース

契約を締結した際に契約書を取り交わした場合、契約書に書かれた内容に違反する行為をすると、民事上の責任が生じる可能性があります。言い換えれば、当事者の行動を契約によって法的に制限する力(法的拘束力)を持っているのが契約書です。

では、そうした法的拘束力は、覚書にはあるのでしょうか。

取り交わした書面が契約書ではなく覚書であっても、作成した経緯や覚書の内容によっては、法的拘束力を持つと判断されることがあります。
文書の名称は「覚書」でも、その実態が契約書と同等であると考えられるのであれば、契約書に準じた文書として法的拘束力を持つといってもいいでしょう。

覚書が法的拘束力を持つか否かは個別的に判断されますが、法的拘束力を持つと判断されるためには、少なくとも以下の事項を満たしていることが必要です。

  1. (1)覚書の内容について両当事者が事前に同意している

    契約は、当事者の一方が契約の内容を示したうえでその締結を申し入れ、もう一方の当事者がその申込みを承諾したときに成立する、とされています(民法522条1項参照)。

    事前に取り交わした契約書の内容を変更するために覚書を作成することになったとしましょう。このとき、相手方と事前に話し合い、変更点について合意を得たとします。そのうえで契約書の変更内容を記した覚書は、法的拘束力があると判断されるのが通例です。

    しかし、こちらで一方的に契約内容を変更し、それを相手方に通知するために作成された覚書は別です。この場合、相手方の承諾を得られていないため、法的拘束力を持たないと判断される可能性が高いでしょう。

  2. (2)内容が具体的・現実的である

    契約では、仮にお互いが合意をしていても無効とされるときがあります。例えば、「納品物は速やかに納品する」「催促に対する連絡がなかった場合は契約を解除する」など、内容があまりにも抽象的な場合です。契約の内容は、第三者から見ても内容がすぐに分かる程度に、具体的に決めておく必要があります。

    また、物理的に実現できない内容や、明らかに社会通念から外れている内容の契約も、無効とされる可能性があります。そのため、実際にその契約内容を果たせるのかなどをシミュレートしながら、作成することが大切です。

4、覚書の法的拘束力に関する事例

ここで、覚書の法的拘束力が認められなかった事例をふたつご紹介します。どのようなときに覚書の内容が無効とされるのか、一緒に見ていきましょう。

  1. (1)契約内容と異なるという理由で認められなかったケース

    店舗の賃貸借契約を締結する前に取り交わされた覚書と、実際の契約内容が異なるために法的拘束力が認められなかったケースです。

    この事例では、店舗の貸主側が、覚書には「改定後の月額賃料は、改定前の月額賃料に7.5%相当額を加えた額とする」という自動増額条項が記載されており、その覚書に基づいて基本協定書が結ばれたから、覚書の内容は法的拘束力を持つという主張をし、賃料の増額分を借主に請求しました。これに対し、借主が、「自動増額条項は基本協定書に書かれていない」などの反論をしたため、裁判となりました。

    甲府地裁は、基本協定書に自動増額条項が記載されていないことを指摘しました。また、貸主側の主張に対しては、曖昧な覚書の内容を補完するために基本協定書を作成したのであれば、基本協定書に明記すべきだったと判断しました。結果として、裁判所は貸主側の請求を棄却、借主側の請求を一部容認する判決を下しています。

  2. (2)内容が明確でないという理由で認められなかったケース

    契約を締結した後に取り交わされた覚書の法的拘束力が認められなかったケースです。

    ある株式会社の代表取締役が、別の株式会社と、上場が速やかにできるように支援を要請する旨を盛り込んだ株主間契約を締結。その1年後、更に覚書を締結しました

    その後、上場に伴う過程で、代表取締役が相手企業に対して持株比率を20%未満にするなどの請求をしたのに対し、相手企業はこれを実行せず。そのため、代表取締役は相手企業に対して損害賠償請求をしました。

    しかし東京地裁は、覚書に相手企業がどのような義務を負うのか明確に書かれていないことから、覚書に法的拘束力はないと判断。また株主間契約についても曖昧な点や矛盾点があるなどを指摘し、代表取締役の請求を棄却しました。

5、覚書の書き方・作成方法

上記2つの事例から分かるように、作成側は「法的拘束力がある」と思っている覚書でも、裁判では認められないことがあります。

覚書の内容が原因のトラブルを避けたい場合、どのような内容であれば法的拘束力を持つ覚書として認められるかを把握しなければいけません。

  1. (1)覚書の作成方法

    覚書を作成するときは、まず用紙の一番上に「覚書」「○○○についての覚書」などの題をつけます。その上で誰が・いつ・どんな内容に対して合意したのかなどの具体的な内容、それについて合意したという文言を端的に記します。最後に日付を記入する欄と、自社と相手企業が署名・押印をするスペースを設けましょう。

    作成が終わったら、自社用と相手企業用に2部印刷します。お互いに内容を確認したあと、両者の署名・押印をすれば完成です。なお、文書の枚数が多くなったら製本(ホチキス留めしたあとに製本テープを貼る)し、両者の割印をするのが一般的となっています。

  2. (2)印紙について

    覚書の法的拘束力が認められる(=契約書と同等の扱いになる)場合、もしそこに課税に関する事項が記載されているなら、印紙税が発生します。必要に応じて正しい金額の収入印紙を文書に貼り、消印をするのを忘れないようにしましょう。なお、収入印紙の金額は合意内容や契約金額によって異なるので、国税庁のホームページで確認するようにしてください。

6、まとめ

中小企業庁がウェブサイトで呼びかけているように、企業間の取引に関するトラブルは後を絶ちません。厚生労働省が平成30年に発表した「契約条件の明示 契約内容の決定・変更・終了のルールの明確化等」でも、独立自営業の方が経験したトラブルでもっとも多かったのは「作業内容・範囲についてもめた」で、次に「仕様を一方的に変更された」でした。

契約書よりもライトなイメージのある覚書ですが、やはり後のトラブルを避けるために、確実に法的拘束力が認められるような文書を作成することが大切です。

もし作成した覚書が法的拘束力を持つのか不安な場合は、企業法務に関して深い知識を持っている弁護士のリーガルチェックを受けてみるといいでしょう。

またこれを機に、顧問弁護士を依頼するのもおすすめです。顧問弁護士であれば、その企業の依頼を優先的に行うので、覚書をはじめ各種契約書を早くチェックしてもらいたいときに役立ちます。また、万が一企業間でトラブルが発生したときでも、顧問契約で企業の内情をよく知っている分、交渉や裁判などをスムーズに進めることができます。

ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスでも受け付けていますので、ご検討いただけたら幸いです。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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