子どもがいない夫婦の相続について、新宿の弁護士が解説

2019年04月10日
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子どもがいない夫婦の相続について、新宿の弁護士が解説

被相続人に子どもがいれば、配偶者と子どもが相続人になりますが、夫婦の間に子どもがいない場合は誰が相続人になるのでしょうか?

実は、子どものいない夫婦の財産の相続については、亡くなった夫婦の両親、兄弟姉妹や甥姪を含めて遺産トラブルが起きるケースが少なくありません。

正確な知識がないと誰が相続人になるかの判断は困難です。たとえば子どものいない叔母が亡くなった場合に、叔母の兄弟姉妹や甥・姪は相続人になるのでしょうか。

今回はあらゆるケースから子どものいない場合の相続について、新宿の弁護士が解説していきます。

1、法定相続人と順位について考える

まず、今回のように子どものいない夫婦の場合、夫婦のどちらかが亡くなったときに遺産を相続する権利がある法定相続人を確認する必要があります。そのために法定相続人になる可能性がある人達と、それらの人たちの優先順位を知っておく必要があります。

  1. (1)配偶者相続人

    配偶者は常に相続人となります。婚姻関係のある配偶者であれば問題ありませんが、「愛人」や「内縁の妻」などはこれに該当しません。

  2. (2)血族相続人 第1順位:子ども・孫

    続いて、血族相続人の第1順位となる「子ども・孫」です。

    婚姻関係のある夫婦の間に生まれた嫡出子(ちゃくしゅつし)に限らず、非嫡出子(例えば認知された愛人の子ども)も相続人になります。また、養子も嫡出子と同じように相続人になります。

    ちなみに、子どもがすでに亡くなっていて、孫が生まれている場合には、相続権は子どもから孫へ(これを代襲相続といいます。代襲相続については(5)で詳しく説明します。)と引き継がれます。

  3. (3)血族相続人 第2順位:父母・祖父母

    続いて、血族相続人の第2順位となる「父母・祖父母」です。

    父母がすでに他界しているという場合には、子ども・孫のケースと同じように、祖父母へと相続権が引き継がれます。

    夫婦に子どもがいないケースにおいて、配偶者以外にも法定相続人となり得る人物がいることが分かります。

  4. (4)血族相続人 第3順位:兄弟姉妹・姪・甥

    続いては、血族相続人の第3順位となる「兄弟姉妹・姪・甥」です。

    兄弟姉妹がすでに他界しているという場合には、父母・祖父母のケースと同じように、他界している兄弟姉妹の子である甥や姪に相続権が引き継がれます。

    つまり、冒頭でもご紹介したように、叔母が亡くなった場合で、子どもも孫もいない、両親も祖父母もいないという状況であれば、叔母の兄弟が(叔母の兄弟が他界していればその子どもである甥・姪が)第3順位の相続人となります。

  5. (5)代襲相続とは?

    相続する予定だった方が、被相続人よりも前に死亡、または相続欠格※1により相続権を失った場合に、代襲相続が行われます。

    代襲相続人とは、代襲相続が起こった際に本来の相続人に代わって相続人になった「本来の相続人の子」などのことをいい、代襲者とも呼びます。

    代襲相続人は、被相続人の子どもの子ども(ひ孫や玄孫も含む)、または兄弟姉妹の子どもと限定されています。

    この代襲相続について養子が代襲相続人となるかは注意が必要です。

    養子縁組前に生まれていた子どもについては被相続人と血族関係が生じませんが、養子縁組後に生まれた子どもについては被相続人と法律上の血族関係が生じます。したがって、養子縁組後に生まれた子どもには代襲相続が認められます。

    ※1.相続欠格:脅迫により遺言を書かせた、被相続人を殺害したなどを指します。

2、相続人別で見る法定相続分について

法定相続人が順位によって決まることが分かりました。

では、その順位ごとに相続できる財産の割合についても見ていきましょう。

法定相続人 法定相続分
配偶者のみ 配偶者がすべての財産を相続する
配偶者+子ども 配偶者が2分の1、子どもが2分の1を相続する
配偶者+親 配偶者が3分の2、親が3分の1を相続する
配偶者+兄弟姉妹 配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続する


  1. (1)配偶者のみ

    財産を相続できる方が配偶者しかいない場合には、原則として配偶者がすべての財産を相続します。

  2. (2)配偶者+子ども

    もし子どもがいた場合ではどうでしょうか。
    この場合、配偶者と子どもが2分の1ずつ均等に財産を分けます。
    子どもが複数いる場合には、子どもに振り分けられた2分の1をさらに子どもの人数で分ける流れとなります。

  3. (3)配偶者+親

    相続人が配偶者と被相続人の親だけだった場合には、配偶者が3分の2、親に3分の1が分けられます。両親ともに健在の場合は、親に振り分けられた3分の1を父と母で半分に分けることになります。

  4. (4)配偶者+兄弟姉妹

    相続人が配偶者と被相続人の兄弟姉妹だけだった場合には、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。兄弟姉妹が複数いる場合には、兄弟姉妹に振り分けられた4分の1をさらに兄弟姉妹の人数で分ける流れとなります。

  5. (5)相続人である配偶者がいない場合

    では、既に亡くなっていたり、離婚していたりして、配偶者がいない場合はどうなるでしょうか。
    この場合は、被相続人に子どもがいれば子どもの人数で相続財産を割り、子どもがいなければ被相続人の親で相続財産を分け、子どもも親や祖父母等の直系尊属もいなければ被相続人の兄弟姉妹の人数で相続財産を割ります。

3、法定相続分は絶対的なものなのか?

法律により定められた法定相続分は絶対的なものなのでしょうか。

法定相続分は法律で定められているものになりますが、あくまでも遺産を分ける上での「基準」という意味合いで使用されます。

たとえば、相続人同士が遺産の分配について話し合いを行い、全員が納得すれば法定相続分とは異なる割合でわけても問題はありません。

また、亡くなった被相続人が、生前お世話になった人や、相続させたい人に対して遺言を残しておくことで、法定相続分と異なる割合を特定の相続人に相続させることが可能となります。

たとえば「自分の介護をしてくれた姪には財産を多く相続したい。」という場合であれば、その姪に特定の財産を相続させるなどと遺言をすることも可能です。

しかし、姪に多くの財産を相続させてしまった場合に、他の相続人はどう思うでしょうか。

他の相続人としては、本来であれば法定相続分として決められた割合があるにもかかわらず、そこへ遺言の意思通りに姪に多くの財産が行き渡るのは納得がいかないでしょう。

そのような場合には、一定の範囲の相続人が最低限の財産を受け取ることのできる「遺留分」を請求することが考えられます。

相続が開始される1年前の贈与や、遺留分を侵害するつもりの贈与などの生前贈与も遺留分の対象となります。

遺留分等の相続に関する制度は複雑ですので、大きな相続トラブルに発展する前の段階で専門家である弁護士に相談されることをおすすめいたします。

4、相続のトラブル防止!なるべく公正証書遺言を作成する

この公正証書遺言とは、公証役場にて公正証書として保存してもらう遺言のことを言います。

公的な書類であるため、被相続人が自筆で残した遺言(自筆証書遺言書)よりも証拠としての効力が強く、相続トラブルになってしまった時に役立ちます。

公正証書遺言をするには、証書に「公証人」の署名・押印が必要です。

この公証人とは、法務大臣により選ばれた公正証書の作成者のことを言います。

公証人は長年法務に携わった人から選出されるため、滞りなく公正証書遺言の作成をしてくれます。

公証役場は全国にありますが、病気の方や体が不自由な方で公証役場にいけない方は、公証人に病院や自宅等まで出張してもらうこともできます。

公証人以外にも二人の証人を用意する必要があり、公証役場にて紹介してもらうことも可能です。

この証人になれる方には条件があり、下記にあてはまる方は証人にはなれません。

  • 未成年
  • 相続人や配偶者、直系血族
  • 公証人の配偶者、また公証人の4親等以内の親族
  • 公証役場の職員などの関係者
  • 遺言書が読めない方や理解できない方


公正証書遺言は、残された遺族の法的紛争を避けるための有益な手続きです。

無用なトラブルを避けるためにも、遺言書は正確かつ適切な形で残しておくべきでしょう。

5、まとめ

今回は、子どもがいない夫婦が相続する場合について解説しました。相続権に関するトラブルは、相続問題に詳しい弁護士に相談するのが最良の手段です。
ベリーベスト法律事務所・新宿オフィスの弁護士が、あなたの悩みを早期解決に導きます。
相続に関して疑問・不安があれば、ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています