相続の基礎控除とは? 知っておきたい相続税の計算方法
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東京都における平成30年の年間死者数は11万9253名でした。この数字は年々増え続けており、30年前である昭和63年の6万7078名と比較すると、1.8倍近くにもなります。
これらの数字から、死亡者数の増加とともに、相続が年々身近な問題になってきていることがわかります。
相続の場面で大きな問題となるのが、相続税です。相続税の負担は、相続人の方にとって非常に重くのしかかってきます。
しかし、相続税には「基礎控除」が設けられており、相続財産の金額がこの基礎控除の範囲内であれば、相続税を支払う必要がなくなるのです。
この記事では、基礎控除の考え方を含めた相続税の計算方法について、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。
1、相続税の基礎控除とは
まずは、相続税の基礎控除の基本的な考え方について解説します。
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(1)相続財産のうち、相続税がかからない金額
相続税の基礎控除は、簡単にいえば「相続財産のうち、相続税がかからない金額」のことです。相続税の金額は、被相続人が死亡時に所有していた相続財産の金額を基準として計算されます。
その際、計算の基礎となる相続財産の金額から、基礎控除相当額が控除されることになっています。つまり、相続財産の金額が基礎控除の範囲内であれば、相続税がかかることはありません。
また、相続財産の金額が基礎控除の範囲を超えている場合でも、超過分についてのみ相続税が課税されます。 -
(2)法定相続人の人数によって基礎控除の金額が決まる
相続税の基礎控除の金額は、法定相続人の人数によって決まります。
具体的には、3000万円に法定相続人ひとり当たり600万円を加算した金額が、相続税の基礎控除の金額です。
2、相続税の基礎控除に関する注意点を特殊なパターンで解説
シンプルな家族構成であれば、法定相続人の人数がわかりやすいため、相続税の基礎控除の金額を計算するのも簡単です。しかし、特殊な事情が関係する場合には、相続税の基礎控除の金額を計算する際にも注意が必要となります。
以下では、相続税の基礎控除を計算するに当たって注意すべき特殊なパターンについてみていきましょう。
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(1)被相続人に養子がいる場合
被相続人の養子は、民法上は被相続人の子どもとして取り扱われるため、法定相続人に含まれます。
しかし、相続の場面においては、被相続人が亡くなる間際になってたくさんの養子を取って、基礎控除の金額を大幅に拡大する行為などが考えられます。そのため、基礎控除計算の際に、法定相続人として算入できる養子の人数は制限されているのです。
具体的には、被相続人に実の子どもがいる場合にはひとりまで、実の子どもがいない場合にはふたりまでの養子を法定相続人としてカウントすることができます。
ただし、養子の数を法定相続人の数に含めることにより、相続税の負担を不当に減少させる結果となる場合には、養子を法定相続人としてカウントすることはできないとされています。 -
(2)相続の欠格・廃除があった場合
法定相続人であっても、被相続人や同順位以上の相続人を故意に死亡させた場合や、被相続人に詐欺・強迫などの非違行為をした場合は、相続人の欠格事由に該当して相続人となることができません(相続人の欠格事由、民法第891条)。
また、被相続人に対して虐待・侮辱その他の著しい非行があった場合には、被相続人が家庭裁判所に請求することで、相続人としての資格を失うことがあります(推定相続人の廃除、民法第892条)。
このように、欠格または廃除により相続人になることができなくなった法定相続人については、相続税の基礎控除を算定する際に法定相続人としてカウントしません。 -
(3)代襲相続があった場合
被相続人の子どもが死亡・欠格事由・廃除により相続権を失った場合、さらにその子ども(被相続人の孫)が代わりに相続人となります。これが「代襲相続」です(民法第887条第2項)。
代襲相続により相続権を得た者は、相続税の基礎控除を算定する際に、全員法定相続人としてカウントされます。 -
(4)相続放棄がされた場合
法定相続人は、相続放棄をすることにより、被相続人の権利義務を一切承継しないことができます。
ただ、相続税の基礎控除の計算との関係では、相続放棄をした法定相続人についても、法定相続人としてカウントすることが可能です。
3、相続税の基礎控除の計算方法
具体的なモデルケースを用いて、相続税の基礎控除の金額を実際に計算してみましょう。
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(1)基礎控除の計算式
まず、相続税の基礎控除の計算式は以下のとおりです。
相続税の基礎控除=3000万円+600万円×法定相続人の人数
法定相続人の人数については、前述の特殊なパターンにおける法定相続人のカウント方法を踏まえつつ数える必要があります。
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(2)モデルケースで見る基礎控除の計算例
それでは、実際にモデルケースを設定して、それぞれのケースにおける相続税の基礎控除の金額を計算してみます。
①ケース1:シンプルなケース【相続人】- 配偶者
- 子どもふたり
配偶者と子どもふたりのみが相続人の、もっとも基本的かつシンプルなケースを考えます。
この場合、法定相続人の人数は3人ですので、相続税の基礎控除の金額は以下のとおりです。
相続税の基礎控除
=3000万円+600万円×3
=4800万円
②ケース2:養子がいるケース
【相続人】- 配偶者
- 子どもふたり
- 養子ふたり
次は、養子がいるケースを考えます。
この場合、法定相続人の人数は5人です。しかし、相続税の基礎控除の計算上は、実子がいる場合には養子はひとりまでしか法定相続人としてカウントすることができません。
したがって、相続税の基礎控除の計算に当たってカウントされる法定相続人は4人となり、基礎控除の金額は以下のとおりです。相続税の基礎控除
=3000万円+600万円×4
=5400万円
③ケース3:推定相続人の廃除・代襲相続があった場合
【相続人】- 配偶者
- 子どもふたり(孫ふたりの父親を除く)
- 孫ふたり(代襲相続)
まず、推定相続人の廃除によって相続人でなくなった法定相続人は、相続税の基礎控除の計算上、法定相続人としてカウントされません。一方、代襲相続により相続権を得た孫ふたりは、相続税の基礎控除の計算上、いずれも法定相続人としてカウントされます。
したがって、相続税の基礎控除の計算に当たってカウントされる法定相続人は5人となり、基礎控除の金額は以下のとおりです。相続税の基礎控除
=3000万円+600万円×5
=6000万円
④ケース4:複雑なケース
【相続人】- 配偶者
- 子どもA
- 養子D・E
- 子どもAの子どもF(被相続人の孫。遺言書により相続分を与えられた)
※子どもCは欠格事由により相続権を失った
最後に、少し複雑なケースを考えてみましょう。上記のケースで、相続税の基礎控除の計算上カウントされる法定相続人は何人でしょうか。
まず、配偶者と子どもAは、被相続人の法定相続人ですので、相続税の基礎控除の計算上も法定相続人としてカウントされます。
次に養子D・Eについてですが、実子がいるケースですので、相続税の基礎控除の計算上、養子はひとりまでしか法定相続人としてカウントすることができません。便宜上、養子Dひとりを法定相続人としてカウントすることにします。
子どもAの子どもF(被相続人の孫)は、遺言書により相続分を与えられていますが、被相続人の法定相続人ではありません。
したがって、相続税の基礎控除の計算上、法定相続人としてカウントしません。
子どもBは相続放棄によって、初めから相続人とならなかったものとみなされましたが、相続税の基礎控除の計算上は、相続放棄をした相続人も法定相続人としてカウントされます。
子どもCは欠格事由により相続権を失っています。欠格事由により相続人でなくなった人は、相続税の基礎控除の計算上、法定相続人としてカウントされません。
上記をまとめると、相続税の基礎控除の計算上の法定相続人は配偶者・子どもA・子どもB・養子Dの4人です。したがって、基礎控除の金額は以下のとおりとなります。相続税の基礎控除
=3000万円+600万円×4
=5400万円
4、遺産相続のご相談は専門家へ
ご家族が亡くなり、遺産の相続が発生した場合には、弁護士と税理士にお早めにご相談ください。
相続は身内同士の問題であるが故に、話し合いが感情的になってしまうこともしばしばです。そのため、弁護士による法的な観点からの冷静な助言を受けつつ、できる限り円満な相続問題の解決を目指すことをおすすめします。
また、特に相続財産が多額に及ぶケースでは、相続税申告の問題が生じます。相続税申告の際には、財産をどのように評価するかによって、実際の納税額が大きく変わる場合があります。
税理士に相談すれば、適法な範囲で相続人にとって有利な財産評価を行い、相続税の金額を抑えることができる可能性があります。さらに、税理士に依頼した上で相続税申告を行えば、後で税務調査が入りにくくなるというメリットもあります。
このように、相続について弁護士・税理士に相談するメリットは非常に大きいため、ぜひお早めにご相談なさってはいかがでしょうか。
5、まとめ
相続財産の金額が基礎控除の範囲内であれば、相続税を納付する必要はありません。
ただし、基礎控除の計算ひとつを取っても、どのように法定相続人をカウントするかなど、法律上複雑な点があります。
その上、相続税の金額を計算する段階では、相続財産の評価など、さらに複雑な問題が生じてきます。
ベリーベスト法律事務所では、税理士とも緊密に連携を行い、相続問題でお悩みの方を、法律・税務の両面からサポートしています。
相続問題でお悩みの方は、ぜひお気軽にベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています