遺産争いになりやすいケースとは? 相続トラブルや解決の流れを解説
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相続はある日突然発生します。テレビやドラマなどで題材になることの多い遺産争いは、いつ自分に起きてもおかしくないのです。
激しい争いとなると、簡単には解決できません。働き盛りの世代にとっては、仕事が忙しいうえに遺産争いまで起これば、精神的にも体力的にもかなりの負担となるでしょう。
それでは、どんなケースが遺産争いに発展しやすいのでしょうか?
今回は、よくある相続トラブルと解決の流れについて、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が具体的にご紹介します。遺産争いでお困りの方はぜひ参考にしてください。
1、遺産争いは増えている
相続は「争族」と表記されることもあるほど、争いになりやすい問題です。実際、当事者間では解決できず、裁判所を利用するケースも増えています。
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(1)遺産分割事件は増加傾向にある
遺産分割について法定相続人だけで解決ができない場合、一般的には家庭裁判所に調停を申し立て、解決をはかります。
最高裁判所によると家庭裁判所が扱った遺産分割事件の件数は増加傾向にあり、平成30年は1万5706件と、平成20年に比べて約3000件も増えました。
遺産分割事件は、その多くが遺産争いによるものです。
これは高齢化により相続自体が増えたことが大きな要因ですが、家族関係が希薄になっていることや、権利関係が複雑化していることなども影響していると考えられます。 -
(2)弁護士が関与するケースは8割
遺産分割事件の件数は増加傾向にありますが、弁護士が手続き代理人として関与した割合も増加しています。平成30年は家庭裁判所を介した争いのうち約8割が弁護士を利用しており、かなりの割合で代理人がつくようになりました。
これは弁護士への相談が一般化したことのほか、トラブルが複雑化した結果とも考えることができるでしょう。
2、遺産争いでよくあるトラブル
遺産争いというと遺産の取り分をめぐるものというイメージがあるかもしれませんが、実際にはその原因は多岐にわたります。よくある相続トラブルを見ていきましょう。
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(1)遺言書の内容に偏りがある
遺言書は、被相続人の意思を示したものでありその意思は尊重されるべきものです。遺言書があって遺言執行者が指定されている場合には、その内容に沿って相続手続きを進めるのが基本といえます。
しかし、遺言書に書かれている内容が「特定のひとりだけに全財産を渡す」というものだった場合、ほかの相続人が納得できず、トラブルになることが少なくありません。
一定の範囲の法定相続人には、最低限の取り分である「遺留分」が認められています。遺留分を侵害するような内容の遺言が残されていた場合、遺留分が侵害されている法定相続人は、遺留分侵害額請求(旧民法では遺留分減殺請求)ができます。 -
(2)相続人以外への分割が指定されている
被相続人は遺言書によって法定相続人以外に財産を渡すことも可能です。
ただし、それが被相続人の愛人だったり、家族が知らない人物であったりすると、被相続人が作成した遺言書であったとしても、相続人は簡単には受け入れられず、争いになることがあります。
また、相続人以外への分割が指定されていて遺留分が侵害されている場合には、相続人は遺留分侵害額請求ができます。 -
(3)被相続人の面倒をみていた相続人がいる
被相続人と同居して長年介護をしてきたり、家業を手伝ってきたりした相続人がいる場合、相続分にプラスして「寄与分」を受け取ることができます。
また民法改正により、平成31年からは被相続人の長男の妻など法定相続人以外も「特別寄与料」を請求できるようになりました。
寄与分は貢献の対価といえますが、ほかの相続人が不満を持ち、トラブルになることがあります。また、寄与分に明確な基準がないため、その額も争いの種となりがちです。 -
(4)財産を勝手に処分した相続人がいる
できるだけ多くの財産をもらおうと、一部の相続人が相続財産を隠したり、分割前に勝手に売却したりしてしまうことがあります。
ほかの相続人にとっては、法定相続分どおりであればもらえるはずだった金額が減ってしまうことになるため、到底認めることはできないでしょう。
民法改正により、勝手に処分された相続財産は、処分した相続人以外の、全相続人の同意があれば分割対象財産に含めることができるようになりましたが(民法第906条の2)、身勝手な行為は相続人同士の対立を招きます。 -
(5)生前贈与を受けていた相続人がいる
被相続人が亡くなる前に、一部の相続人が贈与を受けているケースは珍しくありません。このような生前贈与については、本来の相続財産の一部であると考えて遺産分割を行う「特別受益の持ち戻し」が可能です。
ただし、他の相続人が知らない間に生前贈与が行われた場合は不信感につながるため、その後の協議に影響が出るおそれがあります。 -
(6)財産の全容が不明、分けにくい財産がある
相続を進めるためには、まず相続財産の洗い出しが必要です。被相続人が生前に財産の整理をしていなかったり、家族が財産について把握していなかったりすると、全容を明らかにするのに時間がかかります。
また、不動産などの分けにくい財産があると、分割方法で揉めることがあります。まず不動産を評価したうえで、誰が不動産を相続するのか、売却してから分割するのかなど方法を考えなければならないため一筋縄ではいかず、トラブルになりがちです。
3、遺産争いの解決の流れ
遺産争いは相続人にとって大きなストレスになります。そのため当事者同士で無理に解決しようとせず、積極的に弁護士の力を借りて法的手続きを活用しましょう。
遺産争いが生じた場合には、通常は次のような流れで解決を目指します。
- ①遺産分割協議
- ②調停
- ③審判
- ④裁判
まずは、相続人同士で話し合う「遺産分割協議」を行い、全員が合意すれば、その内容に基づき分割を進めます。
合意できなかった場合には、家庭裁判所に「調停」を申し立てましょう。
調停では、調停委員と一緒に分割方法などを考えます。調停が成立すればその内容に沿って相続を進めますが、不成立の場合は審判に移行します。
審判では、遺産の内容や相続人の状況をもとに裁判所から決定が下され、この決定に不服の場合は、高等裁判所に不服を申し立てることが可能です。
4、遺産争いに対して弁護士ができること
相続トラブルになってしまった場合、当事者だけで解決するのは難しいでしょう。その場合は弁護士への相談・依頼がおすすめです。
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(1)財産の洗い出し
前章でご説明したように、相続をスムーズに進めるためには相続財産の洗い出しが必要です。
ただし、財産が預貯金以外に株や債権、不動産など多岐にわたっていたり、家族が知らない借金があったりすると、家族だけで調べるには限界があります。
相続に詳しい弁護士に依頼すれば、相続人に代わってさまざまな手段で財産を調べ上げ、内容をまとめてくれます。 -
(2)遺産分割協議のアドバイス
遺産分割協議を成立させるためには、相続人全員の合意が必要です。しかし、内容に納得できない相続人がいたり、相続人同士の仲が悪かったりすると、簡単には合意までたどり着けないでしょう。
その際に弁護士がいれば、遺産分割協議に立ち会ったり、分割方法などについてアドバイスをしたりしてくれるため、遺産分割協議がスムーズに進む可能性が高まります。また、相続人全員の合意が得られたら作成する「遺産分割協議書」の作成をしてもらうことも可能です。 -
(3)遺留分侵害額請求や調停のサポート
遺留分侵害額請求や遺産分割の調停をする場合には、書類作成から裁判での主張など、さまざまな手続きをしなければいけません。こういった手続きが初めての場合、まず何をしたらいいのかわからないという方も多いでしょう。
弁護士に依頼すれば代わりに手続きを進めてくれるうえに、依頼者にできるだけ有利になるように手を尽くしてくれます。 -
(4)相続手続きの代行
遺産分割協議で合意できたり、調停が成立したりした場合、次は相続手続きを進めなければいけません。
たとえば不動産を相続した場合、不動産登記の名義変更をしなければならず、別の相続人に代償金を支払う場合には資金の準備が必要です。
また相続税の申告も忘れてはいけません。相続税の申告期限は、相続が発生したことを知った日の翌日から10か月以内です。
弁護士に依頼すれば、こういった面倒な手続きを正確かつ期限に間に合うように進めてくれます。 -
(5)相続でもめたら弁護士に相談
相続は被相続人との関係性、相続人の感情、金銭が絡む問題という特性などから、非常にもめやすい傾向にあります。適切に対応しなければ法定相続分がもらえなかったり、感情的に対立して兄弟が口もきかなくなってしまったりするかもしれません。
そのため、相続開始当初から弁護士と一緒に進めていくのがベストです。弁護士は財産の洗い出しから遺産分割協議、相続税の申告まであらゆる場面でサポートしてくれます。
法律的な観点からアドバイスがもらえるほか、弁護士が介入することで相続人同士が冷静に話し合いをするきっかけにもなるでしょう。
5、まとめ
高齢の親がいる方などはいつ相続が起こってもおかしくありません。
ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスでは、相続に関するあらゆる困りごとの解決をサポートしています。相続に関する初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。
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