遺言書を残したい。法的に効力が認められる書き方や注意点を弁護士が解説!

2019年07月19日
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遺言書を残したい。法的に効力が認められる書き方や注意点を弁護士が解説!

近年、社会全体の高齢化の進展に伴い生じる問題の解決や、相続をめぐる紛争を防止する必要性が高まっています。相続における紛争は、調停や裁判に発展することも多く、東京においては、平成29年の家庭裁判所での遺産分割事件数は1515件にのぼり、他の地域よりも非常に多くなっています。 こういった背景を受けて、平成30年7月に相続に関して大きく見直しを図る法律が成立しました。改正内容の一部には、遺言書の方式を緩和するといった内容も含まれ、遺言書の相続における重要性が分かります。
遺言書は、最後の自分の意思を伝える手段であるとともに、相続人間における紛争を防止する役割を果たすものです。
しかし、その方式は厳格に定められており、書き方や注意点を知らずに作成してしまえば、効力が認められないばかりか、残された相続人同士の争いを生む結果になってしまう可能性もあります。
本コラムでは、遺言書を残したい方に向けて、法的に効力が認められる遺言書の書き方や注意点をベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説していきます。

1、遺言の種類と法的に効力が認められる書き方や注意点

遺言には、緊急時などに行われる特別方式の遺言と、普通方式の遺言があります。
ここでは、一般的な遺言といえる普通方式の遺言について、説明していきます。

  1. (1)自筆証書遺言

    自筆証書遺言とは、遺言者本人が自書して作成する遺言で、作成後は自分で保管場所を決めて保管します。
    自筆証書遺言は、紙とペンがあればいつでも手軽に作成することができます。費用がかからないこと、周囲に内容を秘密にしておけること、というメリットがあります。
    自筆証書遺言の書き方は、遺言者が「遺言書の全文」「日付」「自分の氏名」を「自筆」して、「印鑑」を押します。この印鑑については、認め印でも構わないとされています。

    しかし、このように手軽に作成できる反面、主に次のような3つの注意点があります。

    一つ目の注意点は、方式や内容に不備がないように書かなければならないということです。これは、もし書き方などの方式に不備があれば、遺言書の効力が無効になってしまい、内容に不備があれば、後に解釈をめぐって紛争になる恐れがあるためです。
    二つ目の注意点は、保管状況や保管場所に注意を払う必要があるということです。
    これは、保管状況や保管場所によっては、本人以外の第三者によって内容の偽造や改変などが行われる可能性や、遺言書の紛失や遺言書の存在自体を隠されてしまう可能性があるためです。
    三つ目の注意点は、遺言を執行するためには、家庭裁判所の検認手続きが必要になるということです。
    家庭裁判所の検認手続きは、遺言書を遺言者本人が作成したものかどうかや遺言の内容が有効なものかをチェックするものですが、遺言書を見つけた人は、遅滞なく検認手続きを受けなければなりません。
    自筆証書遺言では、本人が不備のないように作成し、保管場所に注意しているつもりでも、本人だけではチェックしきれない部分が出てくることが多いです。
    そのため、有効な遺言書を確実に残すためには、作成の段階から弁護士に依頼し、遺言の内容や方式のアドバイスやチェックを受け、保管場所についても相談することが必要です。

  2. (2)公正証書遺言

    公正証書遺言とは、公証人によって遺言書を作成してもらい、公証役場で遺言書を保管してもらう方式の遺言です。
    その作成方法は、遺言者がふたり以上の証人とともに公証役場に行き、遺言者が公証人に遺言内容を口述する方法によります。そして、遺言者の口述内容通りに公証人が遺言書を作成されたことを、遺言者と証人が確認し遺言書に署名押印したものに、さらに公証人が署名押印を行います。
    公正証書遺言は、法律のプロである公証人が作成するので方式や内容などに不備が生じるおそれがなく、公証役場で保管されるため紛失や改ざんの心配もありません。
    また、公正証書遺言に関しては、家庭裁判所の検認手続きを受ける必要もありません。
    以上のことから、遺言書の方式の不備や保管に関する注意点はないといえます。しかし、費用がかかることや、証人ふたり以上にお願いしなければならないこと、公証人と証人には遺言の存在や内容を知られるという点には注意しておきましょう。

  3. (3)秘密証書遺言

    秘密証書遺言は、遺言者が署名押印し封印した遺言書に公証人や証人の確認を受けて、その後自分で保管場所を決めて保管するものです。
    その作成方法は、まず、遺言者が遺言書に署名押印し封印した遺言書をもって、証人ふたり以上とともに公証役場に行きます。そして、公証人は、その遺言書が本人のものであることを確認して、その旨を封書に書き入れ、遺言者と証人ふたり以上とともに署名押印します。
    秘密証書遺言では、遺言が存在すること自体は明らかになりますが、その内容については公証人や証人に知られることはありません。
    しかし、遺言書の形式や内容に公証人は関与しないことから、内容や形式に不備があり遺言書が無効になってしまう可能性や、内容の解釈に争いが生じてしまう可能性があります。また、自分で保管場所を決めることから、紛失や第三者に破棄されてしまうことに注意しなければなりません。更に、家庭裁判所の検認手続きが必要であることに注意しましょう。

2、遺言書に書けること

遺言書は、「兄弟仲良くしてほしい」といった家族に向けたメッセージや自分の思いなど、何を書いても自由です。
しかし、遺言として法的に効力があると認められる内容は、次のように限定されます。

  1. (1)財産や遺言執行に関する事項

    • 遺贈や寄付行為など遺言者の相続財産の処分
    • 法定相続分と異なる相続分にするための相続分の指定または指定の委託
    • 遺産分割方法の指定または指定の委託
    • 5年以内の遺産分割の禁止
    • 相続人相互の担保責任の指定
    • 遺留分減殺請求方法の指定
    • 祭祀(さいし)財産の承継者の指定
    • 遺言執行者の指定または指定の委託
    • 信託の設定
  2. (2)身分に関する事項

    • 推定相続人の廃除または廃除の取り消し
    • 認知
    • 未成年後見人・未成年後見監督人の指定

3、法的に無効となる遺言書があるので注意が必要

自筆証書遺言は、方式や内容に不備があり無効になるケースも多く、無効にならないように注意して作成しなければなりません。自筆証書遺言で無効となる遺言書には、次のようなものがあります。

  1. (1)パソコンや代筆で作成した自筆証書遺言

    自筆証書遺言は、筆跡が遺言者本人のものであることを確認するために自書で行うものなので、パソコンで作成した遺言書や他人が代筆した遺言書は無効となります。 なお、相続に関する法律の改正により、平成31年1月13日からは、自筆証書遺言に添付する財産目録については、各ページに署名押印があれば自書でなくパソコンなどで作成したものでも有効になります。

  2. (2)日付が明確でない自筆証書遺言

    自筆証書遺言には、日付の自筆が必要なので、日付の書き漏れがあると、無効になります。また、存在しない日付や、「〇月吉日」などといった曖昧な日付を記載している場合にも、無効になります。ただし、「満60歳の誕生日」などといった日付の記載については、遺言書の作成日を特定できるので有効とされています。

  3. (3)遺言書の訂正方法が適切でない自筆証書遺言

    自筆証書遺言の内容を訂正する場合には、適切な訂正方法で行わなければ無効になる可能性があります。そのため、無効にならないようにする確実な方法は、遺言書を全て書き直すようにすることといえるでしょう。

4、財産を調査しよう

遺言書を作成する際に、財産を調査することは、遺言の目的を実現し、相続で争いが生じないようにするためにも重要です。
そのため、自身の所有する不動産や現金、金融資産などの財産を調査し明らかにするほか、生命保険の受取人なども確認しておくようにしましょう。
なお、権利関係が複雑であったりして、自身で調査しても相続財産を把握できない場合などには、弁護士に依頼して調査する方法もあります。

5、財産目録を作っておこう

遺言書における財産目録は、被相続人の財産を一覧で判別できるようにするもので、相続財産の有無や詳細を明確にすることができます。
財産目録は、作成を義務付けられているわけではありません。しかし、どういった財産がどこにどれだけあるのか目録を作っておけば、残された家族が相続手続きを始める際も役立ちますし、後々のトラブル回避にもつながるため、作成しておく方がよいものといえるでしょう。
しかし、財産目録の作成方法がわからなかったり、財産目録に記載する相続財産を把握できないこともあります。
そういった場合には、弁護士に相談して、財産目録の作成を任せるとともに、相続全体に関するアドバイスを受けると良いでしょう。

6、まとめ

本コラムでは、遺言書を残したい場合に、法的に効力が認められる書き方や注意点を解説してきました。
自筆証書遺言は、手軽に作成できるメリットがある反面、厳格に方式を守って作成しなければ無効になるおそれも高い方法です。そのため、自筆証書遺言を作成する際には、内容及び方式の不備や保管場所に注意して、無効になることを避けなければなりません。
ベリーベスト法律事務所新宿オフィスの弁護士は、自筆証書遺言の作成、財産調査、及び財産目録の作成だけでなく、公正証書遺言などの作成や相続全般に関しての相談を受け付けています。
ベリーベスト法律事務所新宿オフィスの弁護士は、遺言の目的を達成し、残された相続人の方々が争うことなくスムーズに相続できるように尽力しますので、ぜひお気軽にご相談ください。

ご注意ください

「遺留分減殺請求」は民法改正(2019年7月1日施行)により「遺留分侵害額請求」へ名称変更、および、制度内容も変更となりました。

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