遺言書の保管場所はどこが良い? 遺言書の内容は相続人に伝わらなければ意味がない

2020年09月15日
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遺言書の保管場所はどこが良い? 遺言書の内容は相続人に伝わらなければ意味がない

相続の内容を決める遺言書があると、相続人が相続手続きをスムーズに行うことができます。

そして、遺言書を作成したときに問題となるのが、その保管場所です。

被相続人の生存中に遺言書が見つかってしまうと、遺言の内容を相続人に知られたり気づかぬうちに改ざんされたりしてしまうリスクがあります。一方、あまり手の込んだ隠し方をすると相続人に遺言書を見つけてもらえないかもしれません。

本記事では、遺言書を保管するならどんな場所がいいのか、また、どのような内容を書くべきなのか、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が紹介します。

1、自筆証書遺言の保管場所は?

自筆証書遺言とは、全文を自筆で書き上げる遺言書のことです。遺言書は被相続人が死亡した後に開封されるので、それまで封をして保管する必要があります。

それでは、遺言書はどこに置いておくとよいのでしょうか?

  1. (1)基本的にはどこでも良い

    遺言書は要件が備わっていれば有効です。極端な話をすれば、自筆であり要件を備えていれば、一般紙以外に遺言をしたためても有効です。そのため、遺言書を保管する場所に関して、義務や制限はありません。

    しかし、存命中、被相続人が気づかぬうちに、相続人によって遺言書の内容を改ざんされたり破棄される可能性もあります。ですから、「見つけにくく、相続人の手に渡りづらい場所」を選ばなくてはいけません。

    単に見つかりづらい場所ということであれば仏壇の裏や畳の下、天井裏などたくさんの候補が思い浮かびます。しかし、遺言書は様式に不備がなくとも、見つからなければ執行できません。つまり遺言書は相続人にその存在を知られなければ効果を発揮しないのです。

    そのため、遺言書の保管場所は、被相続人以外が遺言書に手をつけることが難しく、被相続人の死後相続人が容易に発見できる場所が望ましいでしょう。

  2. (2)金庫

    遺言を保管する場所の最有力候補といえば金庫です。金庫は十分な強度があり、簡単に開けることができません。そのため、遺言書を改ざんしようとしている相続人が、勝手に中を見ることはできないでしょう。

    ただ、ご自宅の金庫に保管している場合は、何かのきっかけで金庫を開けることになるかもしれません。また、被相続人が予期せぬ状況で亡くなった場合、相続人に金庫の開け方を伝えることができない可能性があります。

    このようなリスクを回避するために、貸金庫を借りることも考えてみましょう。貸金庫を借りていることやその中に遺言書を保管していることを、あらかじめ複数の相続人に伝えておくことで、適切なタイミングで遺言書が相続人の手に渡ります。

  3. (3)タンスや机の引き出し

    金庫がない場合はタンスや机の引き出しに入れるという選択肢もあります。他人があまり開けない場所であればそのまま入れておいてもいいでしょう。しかし、安全性と確実性を考慮すると、鍵つきの引き出しが最適です。

    また、遺言書と同様に現金や有価証券も、金庫がなければ、鍵のついた場所に入れておくようにしましょう。

  4. (4)信頼できる他人

    遺言書を信頼できる他人に預けるということもひとつの手段です。そうすれば、相続人が遺言書を勝手に開封したり内容を改ざんなどしたりするリスクがぐっと減少します。

    しかし、預けた友人・知人などが、勝手に遺言書を開封したり遺言内容を相続人に言いふらしたりしてしまうリスクがあるでしょう。

    だからこそ、本当に信頼できる人にしか遺言書を預けてはいけません。また、被相続人が亡くなった後、相続人が遺言書を探せるように、その人に連絡するよう伝えておくとよいでしょう。

  5. (5)弁護士など

    信頼できる他人という点では弁護士に依頼するのがおすすめです。弁護士は、遺言の書き方や内容についてもアドバイスをしてくれます。

    この場合も、相続人から依頼した弁護士に連絡するよう書き置きしておくことが望ましいでしょう。

2、より確実な遺言書の保管場所は?

遺言書は相続人に見つけてもらわなくては意味がありません。とはいえ、どこに保管すればいいのかわからない、そもそも遺言書の形式や内容が正しいのか不安になる、といったこともあるでしょう。

遺言書は氏名や日付が欠けている、書かれている内容で財産を特定できないといったミスでその全部または一部が無効となります。また、自筆証書遺言の場合、相続人が遺言書を見つけた後、家庭裁判所で「検認」という手続きを行わなくてはなりません。

検認とは、封がされている遺言書が破棄されたり、内容が改ざんされないように、家庭裁判所で開封することです。提出した検認申立書や書類に不備がなければ、申し立てから約1か月後に家庭裁判所から相続人全員に検認の期日が郵送で送られてきます。この検認の手続きにより遺産の分割が遅れてしまいます。

これらのことを考慮し、被相続人にとって最適で、相続人にとっても負担のない遺言書の保管場所はどこでしょうか。

  1. (1)公正証書遺言は公証役場に保管される

    遺言が無効になってしまうリスクを減らすためにおすすめしたいのが、公正証書遺言です。「公正証書遺言」は、公証役場の公証人が被相続人から伝えられた内容を元に遺言書を作成するため、様式不備による遺言書無効を回避できます。

    また、公正証書遺言であれば、検認をする必要がありません。

    公正証書遺言の場合、原本が公証役場に保管され、「正本」という原本と同じ効力をもつ写しが交付されます。原本が公証役場にあるため、正本を開封する際に検認しなくてもよいのです。

    もしも、正本を紛失していたとしても、公証役場に依頼すれば、再発行してもらうことができます。

    もっとも、公正証書遺言が存在していることだけは相続人に伝えておくようにしましょう。

  2. (2)自筆証書遺言は法務局での保管が可能に

    遺言書は自分で書きたいという方もいるでしょう。とはいえ、独力で自筆証書遺言を書くと、遺言書が有効となる要件が備わっておらず無効になる危険性が高まります。他方、公正証書遺言は自筆証書遺言に比べて確実性が高い一方、費用がかかることや二人以上の証人が必要であることがデメリットです。

    このような問題がある中、民法改正によって自筆証書遺言の法務局保管が可能となりました。

    これまでは自分で作成して自分で保管していた自筆証書遺言を法務局で保管してもらい自筆証書遺言の写しを発行してもらえるようになったのです。法務局の保管となるため紛失や破棄される心配がなくなりました。また、法務局で保管してもらう自筆証書遺言については、相続発生後の検認の手続きが不要となり、相続手続きをスムーズに進めることができるというメリットがあります。

  3. (3)どの方法でも相続人に伝える必要あり

    公証役場や法務局に遺言書を預ければ被相続人が亡くなった後に、相続人が検索することですぐに遺言書へのアクセスが可能となります。しかし、どれだけ便利でも相続人が「遺言書がそこにある」という事実を知らずして遺言書を探し当てることは不可能です。

    そのため、遺言書を残すときは、相続人にその存在を伝えておきましょう。

3、遺言書に書くべきことは?

次に、遺言書に書くべき内容、書くことができる内容を見ていきましょう。

  1. (1)氏名と日付は必ず書く

    大前提として氏名と日付は絶対に書いてください。

    日付を「●月吉日」と曖昧に書いただけでもその遺言書が無効となってしまいます。なお、思い直して遺言書を書き直した場合は、日付がもっとも新しい遺言書が有効です。

    また、訂正をするときは法律に従った訂正をしなければ、その部分は無効になります。

    公正証書遺言の場合は様式による無効を心配する必要はありませんが、自筆証書遺言の訂正は細心の注意を払ってください。

  2. (2)財産の相続先と財産目録は明確に

    遺言書を書く主目的は「どの財産を誰に承継するか決める」ことです。財産の承継先を決めておけば遺産分割協議で相続人が揉めることが少なく、法定相続人以外の誰かに遺産を渡すことも可能です。このように、遺言によって財産を渡すことを遺贈と呼びます。

    遺言で財産を指定する際は、その財産を客観的に特定できなくてはいけません。たとえば銀行預金であれば銀行名と口座番号までしっかり記載する必要があります。

    相続する財産を財産目録にまとめれば、相続先の指定漏れ対策ができるでしょう。

    改正民法では、財産目録の部分のみ、パソコン等による作成が認められています。すべての財産を目録としてまとめて相続先の指定漏れをなくしましょう。

  3. (3)子どもの認知をするか

    子どもの認知についても遺言に書くことができます。認知された隠し子は非嫡出子として嫡出子と平等の相続権が与えられ、遺留分も平等に請求できます。

  4. (4)祭祀承継を誰にするか

    お墓や仏壇といった祭祀道具を誰に承継するか、これも遺言で決めることが可能です。なお、祭祀道具は相続税の対象となりません。

4、まとめ

遺言は被相続人が亡くなってから効果を発するので、被相続人の他に遺言書を見つけられる方がいないと、遺言執行ができません。したがって、遺言の保管の仕方は費用や確実性を考慮して慎重に選ばなければいけません。

遺言書の書き方、保管方法についてお悩みならベリーベスト法律事務所 新宿オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています