借金の利息はどう計算すればよい? モデルケースとともに紹介

2022年04月20日
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借金の利息はどう計算すればよい? モデルケースとともに紹介

裁判所が公表している司法統計によると、令和2年度に東京地方裁判所に新たに申し立てられた破産事件の件数は、1万737件でした。この統計から多くの方が借金に悩んで自己破産を選択していることがわかります。

借金の返済でお困りの方の多くが、ご自身の借金額を正確に把握しておらず、毎月の返済を続けています。そのような状態では、毎月の返済によって借金が減っている気がしていても実は利息の支払いしかしておらず、ほとんど元金が減っていないということもあります。

借金を完済して借金の悩みから解放されるためには、まずは、ご自身の借金(元金、利息、遅延損害金など)をしっかりと把握することが大切です。今回は、借金の利息とその計算方法について、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。

1、借金と利息

お金を借りた場合には、借りたお金(元金)に利息を付けて返済するのが基本となります。以下では、利息に関する基本的な考え方について説明します。

  1. (1)利息の上限

    借金に利息を付ける場合の利率については、債権者と債務者との間で自由に取り決めることができますが、法律上の上限が設定されています。

    ① 利息制限法
    利息制限法は、お金の貸し借りをする際の利息や遅延損害金の利率の上限を定めている法律です。お金を貸し借りする際には、お金を貸す側よりも借りる側の方が圧倒的に弱い立場にあります。そのため、利率に関する規制がなければ、貸主が暴利を設定して、借主を搾取するということが起こり得ます。利息制限法は、このような状況に歯止めをかけて、借主を守るための法律です。

    利息制限法では、金利の上限について、以下のように規定しています。

    借入額 金利の上限
    借入額が10万円未満の場合 年20.0%
    借入額が10万円以上100万円未満の場合 年18.0%
    借入額が100万円以上の場合 年15.0%

    このように利息制限法では、借入額に応じて利率が変動することになりますので、当初は10万円未満の借り入れであったとしても、その後借り入れを繰り返し100万円以上となった場合には、適用される利率が変わってきます。
    なお、利息制限法で規定されている上限金利に違反した金利を設定した場合には、上限を超えた部分については無効となり、上限の範囲内での利率が適用されることになります。

    ② 出資法
    出資法とは、金融業者などが不当に高い利率でお金を貸すことに歯止めをかけることを目的とした法律です。出資法は、貸金業者を対象とした法律であり、出資法に違反した場合には、罰則が適用されます。
    出資法では、年20%を超える利率を定める契約を禁止しています。

  2. (2)消費者金融のグレーゾーン金利とは

    消費者金融のグレーゾーン金利とは、出資法の上限利率と利息制限法の上限利率に差があることから生じた問題です。

    以前は、出資法の上限利息は29.2%とされていましたので、多くの消費者金融では、利息制限法の上限利率を超えて出資法の上限利率の範囲内での貸し付けを行っていました。しかり、20%を超える金利では、返済することができない債務者が増えてきたことからグレーゾーン金利が大きな社会問題となり、平成18年に利息制限法を超える金利によって返済をしていた借金ついては返還請求をすることができるとの最高裁判決が出ました。これがいわゆる「過払い金」というものです。

    過去にグレーゾーン金利で返済をしていた方は、過払い金が発生している可能性がありますので、早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。

2、利息の計算方法とモデルケース

以下では利息の計算方法の基本を説明したうえで、具体的なケースでどの程度の利息が発生するかをみていきたいと思います。

  1. (1)利息の計算方法

    利息の計算は、「元金×金利×借入期間」によって計算をします。元金とは、借りた金額のことをいい、「元本」ともいいます。金利については、消費者金融やカードローン会社によって異なってきますので、契約書や借入明細書などによって確認をしてみるとよいでしょう。

    ただし、借金の返済は、借り入れ後一括で行うのではなく、毎月分割で支払っていくのが通常です。そのため、実際の利息を計算する場合には、毎月の返済金額を考慮しなければならず、非常に複雑な計算となります。そのため、正確な利息の金額を知りたいという場合には、インターネット上で提供されている返済シミュレーションなどを利用してみるとよいでしょう。

  2. (2)モデルケース

    具体的なケースで利息がどのくらいになるのかをみていきましょう。以下では、計算を簡単にするために、毎月の分割払いではなく、一括で返済をしたものとして計算をします。

    ① 100万円を金利18%で借りて1年で返済をした場合の利息
    100万円×18%×(365日÷365日)=18万円

    ② 100万円を金利18%で借りて3年で返済をした場合の利息
    100万円×18%×(1095日÷365日)=54万円

    ③ 1000万円を金利18%で借りて5年で返済をした場合の利息
    100万円×18%×(1825日÷365日)=90万円


    このように返済期間が長くなればなるほど利息は膨らんできますので、借金の負担を少しでも軽減しようとするのであれば早めに返済をすることが大切です。

3、借金に関するその他の計算

借金に関する計算方法は遅延損害金についても押さえておく必要があります。

  1. (1)遅延損害金とは

    遅延損害金とは、期日までに借金の返済をしなかったことに対して生じるペナルティのことをいいます。遅延損害金は、「遅延利息」や「延滞利息」などと表現されることもありますが、利息とは異なる損害金になります。

    利息制限法では、利息の利率だけでなく、遅延損害金の利率についても上限を設定しています。利息制限法4条1項では、利息の上限利率の1.46倍を遅延損害金の上限利率とし、それを超える部分については無効になるとしています。したがって、利息制限法に基づく遅延損害金の上限利率は、以下のようになります。

    借入額 遅延損害金の上限利率
    借入額が10万円未満の場合 年29.2%
    借入額が10万円以上100万円未満の場合 年26.28%
    借入額が100万円以上の場合 年21.9%

    ただし、消費者金融業者などからの借り入れの場合には、利息制限法7条1項が適用されますので、遅延損害金の上限利率は20%になります。

  2. (2)遅延損害金の計算方法

    遅延損害金の計算は、「借入残高×遅延損害金利率×延滞日数」によって計算をします。具体的なケースでの遅延損害金の金額は以下のようになります。

    ① 借入残高100万円、遅延損害金利率20%で10日間滞納した場合の遅延損害金
    100万円×20%×(10日÷365日)≒5479円

    ② 借入残高100万円、遅延損害金利率20%で30日間滞納した場合の遅延損害金
    100万円×20%×(30日÷365日)≒1万6438円

    ③ 借入残高100万円、遅延損害金利率20%で60日間滞納した場合の遅延損害金
    100万円×20%×(60日÷365日)≒3万2877円

4、借金の返済は弁護士へ相談を

借金の返済でお困りの場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)最適な債務整理の方法を提案してもらえる

    借金に関する問題は、弁護士による債務整理によって解決することが可能です。債務整理には、「任意整理」、「自己破産」、「個人再生」の3つの方法がありますが、どの方法が最適であるかについては、個別具体的な状況によって大きく変わってきます。

    任意整理は、債権者との交渉によって将来利息のカットや返済期間の延長などによって借金の返済を可能にする方法です。利息の負担が大きくてなかなか借金が減っていかないという方は、任意整理を利用することによって、借金の返済の負担を軽減することができます。

    自己破産は、裁判所から免責決定を受けることによって借金をゼロにすることができる方法です。借金がなくなることによって借金の負担からは解放されますが、一定以上の資産がある場合には、それをすべて換価処分して債権者への返済に回さなければなりません。

    個人再生は、裁判所から再生計画の認可を受けることによって、借金の大幅な減額が可能となり、減額された借金を3年(最大5年)で返済していく方法です。住宅ローンのある自宅を持っている方などは住宅資金特別条項付きの個人再生の手続きを利用することによって、自宅を残した状態で住宅ローン以外の借金の減額を行うことができます。

    このように、債務整理の方法にはそれぞれ特徴がありますので、借金の負担を効率的に軽減するためには、最適な債務整理の方法を選択することが重要です。弁護士であれば、債務者の個別具体的な状況を踏まえて最適な債務整理の方法を提案することが可能です。

  2. (2)債権者からの督促が一時的にストップする

    弁護士に債務整理を依頼すると、弁護士は各債権者に対して受任通知という書面を送ります。受任通知は、弁護士が債務整理の事件の依頼を受けたことを各債権者に知らせる書面であり、当該書面が債権者に届いた後は、債権者は債務者に対する直接の督促が禁止されることになります。

    借金を滞納している方の中には、債権者からの督促によって精神的ストレスを抱えている方もいるかもしれませんが、弁護士に依頼することによってそのようなストレスから解放されます。また、債権者への返済を一時的にストップしますので、その間に経済的な再建を図ることができます。

5、まとめ

借金には利息がありますので、返済額が少ない場合には、何年も支払いをしていたにもかかわらず、利息の支払いしかできておらず借金の元本がほとんど減っていないということもあります。

借金の返済が難しくなった場合には、弁護士による債務整理によって解決することができますので、早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。借金問題でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています