不倫の慰謝料を請求するには? 不貞行為の決定的証拠の集め方と注意点
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東京都福祉保健局の公開しているデータによると、令和元年の新宿区内の離婚件数は572件でした。新宿区の離婚件数に限ってみれば、平成25年以降減少傾向にあるようです。
それでも、最近、配偶者の様子がおかしいと思い、不倫を疑っている方は少なくないのではないでしょうか。もっとも、本人に問い詰める前に、不倫の証拠集めをしておかなければ、適切な慰謝料を受け取ることができないまま離婚に追い込まれてしまう可能性があります。
また、配偶者が不倫していると判明した場合、不倫相手にも慰謝料を請求したいと考えることは自然なことです。その際においても、「不貞行為の証拠」が求められることになります。
相手の言い逃れを防ぐためにも、証拠集めは重要です。裁判でも使える証拠の集め方や注意点について、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。
1、不貞行為とは
まず、浮気や不倫と、法律上での「不貞行為」の違いを確認しておきましょう。
一般的な感覚として、配偶者以外の異性に好意を持ち親しく交際することを「浮気」や「不倫」と言い表すことがあります。しかしながら、法律上で夫婦の貞操義務に反する不法行為、つまり「不貞行為」とされるのは、肉体関係を伴う交際であるケースがほとんどです。
浮気相手に「好きだよ」と言ったり、ふたりで食事やデートをしたりしているだけでは不法行為と認められず、慰謝料請求ができない可能性が高いでしょう。
2、不貞行為で慰謝料を請求するには
民法第709条、710条において、不法行為をした者は被害者の受けた損害を賠償する責があると定められています。つまり、不法行為をした者は損害賠償義務を負い、被害を受けた者は慰謝料請求権があるのです。
民法上、不貞行為は、婚姻という契約において課される貞操義務に反した「不法行為」にあたります。不法行為をした側は、損害賠償義務を負うことになります。ただし、相手側が否定した場合には慰謝料請求をする側が相手側に不法行為があったことを証明しなければなりません。
したがって、もし、あなたが配偶者と不倫相手に対し慰謝料を請求したい場合は、配偶者と不倫相手に「不法行為」つまり肉体関係があったと証明する必要があります。
性交渉を伴う交際があったと認識できるもの、あるいは客観的に推測できる証拠が必要です。
3、不貞行為の証拠例
不貞行為の証拠の具体例は以下の通りです。
●ホテルで一緒に宿泊したことがわかる写真や動画
一般的に、男女がふたりきり同室で一泊したという事実があれば、性交渉があったと推測されます。そのため、ホテルへ一緒に出入りしているところをとらえた写真や動画は、不貞行為の証拠と認められる可能性が高いでしょう。特にそのホテルがラブホテルであれば、顕著でしょう。
なお、ホテルへの1回だけの出入りでも証拠になりますが、継続して不貞行為があったことを示すためにも、複数回ラブホテルへ出入りした写真や動画があれば理想的です。
●不倫相手の家やマンションへ出入りした写真や動画
ひとり暮らしをしている不倫相手の家やマンションへ出入りしたという事実は、性交渉をしたと推測することが可能です。入室から退室まで一定以上の時間滞在したことがわかるタイムスタンプ付きの写真や動画、その際に部屋の電気を消したことがわかる写真・動画は、証拠としての価値が高いです。
●肉体関係があることを推認させるデータ
音声データや動画などは、その内容が重要です。肉体関係があることを推認させる内容としては、性交渉中の音声、感想、「来週、またホテルで会おう」などの会話が証拠としての価値が高いでしょう。また、不倫関係を配偶者や不倫相手が自白した音声も同様に証拠としての価値が高いです。
●肉体関係のあることを推認させるメールやSNSの履歴
性交渉の感想や「この間行ったラブホテルへまた行こう」など肉体関係を推認させるメールやSNSの履歴は証拠になります。ただし、これらのデータを取得する際にこちらが不正アクセスなどの違法行為をしないよう注意が必要です。
●ホテルの領収書やGPSデータ
ホテルの領収書や車で入ったGPSデータも、不貞行為の証拠になりえます。ただし、これだけでは誰とホテルに行ったということまで特定できないので、他の証拠でこの部分を補う必要があります。
●ホテルへ入るところを見たという第三者の証言
配偶者と不倫相手がホテルへ入るところを見たという第三者の証言は、証言の信用性が問題になります。他の証拠と照らし合わせて証言の一貫性が認められると、証言の信用性が高まり、配偶者と不倫相手がホテルに入ったという事実を認定してもらいやすくなります。
4、不貞行為の証拠とならないもの
不倫をしているのではと思わせても、それだけでは不貞行為の証拠にならないものもあります。以下のようなものは、それだけでは不貞行為の証拠とならないので注意してください。
●ビジネスホテルへ出入りする写真や動画
男女でビジネスホテルを利用したとしても、その事実だけでは不貞行為の存在を推認することはできません。このことに加え、その男女が同室で宿泊していた事実を証明する必要があります。
●肉体関係に言及していないメールやSNSの履歴
「また食べに行こう」「大好き」などのメールやSNSでのやり取りだけで、不貞行為の存在を推認するのは困難です。肉体関係をうかがわせるような内容ではないからです。
●ラブホテル以外の店舗の領収書やGPSデータ
レストランや居酒屋、カフェなど飲食店の領収書や、そこへ行ったGPSデータは、それだけでは不貞行為の証拠になりません。飲食店は性交渉をする場所ではないため、肉体関係があったことを証明できないからです。
●不倫相手からの手紙やプレゼント
不倫相手からもらった手紙やプレゼントを発見することがあるかもしれませんが、これもそれだけでは不貞行為の証拠にはなりません。手紙やプレゼントを渡すという事実だけでは、肉体関係があったと推認することはできないからです。
5、不貞行為の証拠の集め方や注意点
性交渉は隠れて行われるケースがほとんどです。そのため、不貞行為を直接的に示す証拠の収集が難航することが多いです。ただし、複数の証拠を組み合わせるなどの方法があるため、あきらめずに集めることをおすすめします。
本項では、証拠の集め方と注意点について解説します。
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(1)探偵や興信所に依頼する
探偵や興信所に依頼するというのもひとつの手です。費用はかかりますが、裁判において不貞行為の証拠として認められやすい写真や動画の撮影に慣れているためです。状況にもよりますが、ラブホテルへ出入りする写真や動画など不貞行為を推認する確実な証拠を獲得できる可能性が高いでしょう。どの業者に依頼したらよいかわからない場合は、弁護士に相談して紹介してもらうことをおすすめします。
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(2)自分で集める
一方、自分で証拠を集める場合は、配偶者のパソコンや携帯電話などから証拠を得やすいでしょう。メール・SNSなどの履歴や不倫相手と一緒にいる写真が見られる場合は、配偶者のパソコンや携帯電話の端末ごと撮影するとよいでしょう。
配偶者の衣服や所持品などから、ラブホテルの領収書などが得られることもあるかもしれません。配偶者の衣服や所持品から出てきたことが分かるように写真を撮り、コピーをとっておきましょう。
配偶者や不倫相手が何らかの写真や出掛け先の情報をネット上にアップしている場合は、後日削除されることもあるのでスクリーンショットなどで保存しておくことをおすすめします。 -
(3)不正アクセスやプライバシー侵害に注意
不貞行為の証拠を集めるために、配偶者のパソコンや携帯電話などをチェックすることがあるかもしれません。ところが、行為内容によっては不正アクセスやプライバシー侵害となるケースがあるので注意してください。
●不正アクセスは法律で処罰される
不正アクセスと聞くと、パソコンを使った高度な技術によるハッキングをイメージするかもしれません。しかし、配偶者のパソコンや携帯電話のデータを見ることも、不正アクセス禁止法に違反する可能性があります。
具体的には、配偶者のメールやSNSなどを調べるために「勝手にログインする」、「不正にパスワードを入手する」「パスワードを調べて保管しておく」「本人に見せるように強要する」行為などが不正アクセス禁止法違反として処罰される可能性があります。
●プライバシーの侵害になる
個人的な情報を他人に知られたくないという権利は、プライバシー権として人権のひとつとして保護されます。
不貞行為の証拠を集める方法が不正アクセス禁止法に違反していなくても、プライバシーを侵害しているケースがあるので注意しましょう。たとえば、不貞行為の証拠として入手した写真・動画を知人に拡散したり、インターネット上で公表したりする行為がプライバシー侵害に該当する可能性があるでしょう。
不倫をされた怒りにかられて、不用意に不倫相手や配偶者の個人情報を拡散してしまうと、プライバシーの侵害として、逆に法的手段をとられる可能性があります。これらの行為はあなたの状況を不利にしてしまう可能性があるので、慎むことをおすすめします。冷静な対応が難しいときは、弁護士に相談してください。
6、まとめ
不倫相手と配偶者に慰謝料を請求するためには、不貞行為の決定的証拠が求められます。証拠が集まる前に、不倫を疑って本人に強く問い詰めると、証拠が残らないように隠されてしまうかもしれません。まずは冷静に対応することが重要です。
他方、証拠を集める行為が法律違反にならないよう気を付けなければいけません。不安があれば、事前に弁護士に相談することをおすすめします。
不貞行為の証拠を集め、慰謝料請求をしたいとお考えのときは、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスまでご相談ください。新宿オフィスの弁護士があなたの不安を解決するために最善を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています