離婚時に父親が親権を勝ち取るために知っておきたいこと
- 離婚
東京都の統計によると、新宿区の平成29年の離婚件数は579件でした。減少傾向にあるとはいえ、離婚を考えている夫婦が多いのは確かです。一方で男性の中には、離婚を考えていても子どもと離れたくない一心で踏みとどまる方も多いでしょう。
父親が親権を勝ち取るためには、裁判官に親権は父親が持つことが相当だと判断してもらわなければなりません。裁判や調停を有利に進めるために、父親が知っておくべきことがあります。
本コラムでは、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が「離婚時に父親が親権を勝ち取るために知っておくべきこと」を解説します。
1、父親が親権を勝ち取るのは非常に難しい?
まずは、親権が争いになった場合の判断基準や父親が親権を獲得するのが難しいと言われる理由について説明いたします。
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(1)親権が判断されるポイントとは
夫婦間の話し合いでどちらが親権を持つか決められるのであれば問題ないのですが、審判や裁判で親権を争う場合、以下のような判断基準があります。
①子どもへの愛情
子どもへの愛情が深いと判断された方が、親権者として適切とみなされる傾向にあります。
とはいえ、愛情は数値で測れるものではありません。そのため、子どもと過ごした時間の長さが子どもへの愛情の深さの目安にされます。
子どもと過ごした時間以外の客観的事実も考慮され、どちらが子どもへの愛情が深いか判断されます。
②今までの子どもの監護状況
調査員が重要視するポイントです。子どもが生まれてから今まで、夫婦のどちらがどのように子どもの養育を行ってきたか、教育の仕方・子どもへの接し方など、様々な客観的観点から今までの子どもの監護状況が判断されます。
子どもにとって、離婚後も離婚前と環境が変わらないほうがよいと考えられているため、夫婦が別居している場合、子どもと同居している親の方が親権者の決定において有利に働きます。
③経済的に安定している
子どもを養育するためには、学費や生活費などお金がかかります。経済的に厳しい状況では子どもの監護者として相応しくないと判断されかねません。
ただ、親権者ではない側から養育費を受け取ることもできるので、親権者の決定においては必ずしも重要なポイントではありません。親権者は、「なるべく経済的に安定している方がよい」とされている程度にとどまります。
④肉体的・精神的に健康である
健康状態が良くない、深刻な精神的疾患を抱えていたり、性格に問題があったりする場合は、親権者に相応しくないと判断される傾向にあります。
親権を獲得するためには、肉体的・精神的に健康であると認めてもらうことも重要なポイントです。
⑤子育てに十分時間を割くことができるか
子どもと一緒に過ごせる時間が長い方が、親権者に相応しいと判断される傾向があります。仕事で忙しいと難しいかもしれませんが、可能な限り子どものことを考えた生活スタイルを送ることができれば、親権者争いでも有利になります。
また、ご自身だけではなく親族に面倒をみてもらえるかどうか、保育所など預けられる場所はあるかという点も考慮されます。「母親がいなくても、しっかりと面倒をみてもらえるのか?」ということを問われるのです。
⑥子どもの意思・年齢
親の意向だけでなく、子ども自身の意思も考慮されます。特に満15歳以上の場合は、家庭裁判所は子ども自身に意見を聞き、子どもの意思を十分に考慮した判断をします。
一方、乳幼児や未だ自分の意思をしっかりと表明できないくらいの年齢の子どもの場合には、そもそも意思を確認することが困難であったり、あるいは、その時点で同居している親の言いなりになったりしている可能性があります。したがって、裁判所は、子どもの意思のみならず、子どもの生活環境や親の経済状況などといった周辺事情を考慮して、慎重に判断することになります。 -
(2)「父親が親権を勝ち取るのは難しい」と言われる理由
大きな理由は「継続性の原則」が認められないためです。
「継続性の原則」とは、「離婚後も現状から大きく環境を変えないこと」を優先する考え方です。親権争いの裁判において、この「継続性の原則」が重視される傾向にあります。
一般的に母親の方が子どもと過ごす時間が多いため、離婚後も母親と過ごす方が「継続性の原則」に当てはまると判断されやすく、父親が親権を勝ち取るのは難しくなるのです。
2、父親が親権を持つ場合の懸念点
父親が親権を持つ場合の懸念点は、仕事をしている時間が長く、子どもと過ごす時間を作りにくいことでしょう。そうなると、子どもが精神的なサポートを求めているときに気づいてあげられないといった問題が起こりえます。
もちろん、これは母親が親権を持った場合でも起こりえることです。ただ、一般的に父親の方が仕事が忙しく、このような状況に陥りやすいと考えられます。
親権を獲得しようとするならば、子どもにとって何が最善なのかよく考えることが大切です。
3、父親が親権を勝ち取るためにはどうすればいいの?
「父親がどうしても親権を勝ち取りたい」という場合はどうすればよいのでしょうか。以下に解説いたします。
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(1)子どもと過ごす時間を増やす
まずは、子どもと過ごす時間を増やしましょう。15歳以上の子どもの場合は、子どもの意思も尊重されるため、父親と暮らしたくないと思われてしまうと親権を獲得するのは難しくなります。
また、子どもとの時間を増やすために生活スタイルを変えることも、親権を獲得できた後のことまで考えると必要でしょう。「子どものために生活スタイルを変えた」ということは、親権争いでも有利に働きます。
家庭裁判所の調査官が子どもへの愛情の深さをはかる際にも、子どもと過ごす時間の多さは考慮されます。子どもと遊びに行ったことを日記に記しておくのもよいでしょう。子どもと一緒に時間を過ごした時間の多さや頻度を示す根拠にすることができます。 -
(2)離婚後、子どもの監護体制が整うようにする
離婚後父親が親権を持った場合にも、子どもの監護体制は整っているということをアピールしなければなりません。父親の下で、子どもが健全に養育されるだろうと調査員に判断してもらう必要があります。
子どもの就学状況や親の労働環境なども考慮されます。父親が親権を持つ場合も子どもの就学状況に変化はないか、父親の労働環境は子どもとの時間をとれるようなものなのか、等が調査されるポイントです。 -
(3)相手方と別居する場合は、子どもと住むようにする
相手方と別居している場合、子どもと同居していて生活が安定しているなら、親権を獲得できる可能性は高くなります。
父親との生活が長く続いていたのに母親に親権を持たせると、子どもは引っ越しをしなければならず、場合によっては転校をして生活環境がガラッと変わることになります。父親との生活が良好であるなら、わざわざ子どもの環境を変えさせるべきではないと裁判所が判断することが多いのです。
4、まとめ
離婚後父親が親権を獲得できる確率は、過去の統計上確かに低いといえます。しかし、可能性はゼロではありません。前述の通り、調査員がどちらが親権者として適切か判断するポイントがあり、それらの点を考慮して生活環境を整えることができれば父親も親権を勝ち取ることができる可能性があります。
ただ、一人では対応できないことも多いと思います。相手方と話し合いで決着がつかない場合は、調停で争うことになります。ひとりで解決しようとせず、ぜひベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士までご相談ください。
弁護士が親身になってお話をうかがい、ご相談者さまのご希望に沿ったアドバイスとサポートをいたします。
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