ギャンブル依存症の夫(妻)と離婚できる? 慰謝料や養育費はどうなるかを弁護士が解説
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令和2年7月、海外のカジノサイトを使用して賭博を行ったなどとして、新宿にあるインターネットカジノ店が摘発され、経営者らが逮捕されたと報道されました。インターネットでカジノができるようになれば、夫(妻)のギャンブル好きに拍車がかかる可能性があるでしょう。
また、日本には多くのパチンコ店が存在し、ギャンブルといえばパチンコだ、と認識している方もいらっしゃると思います。パチンコは違法なものではありませんが、自分の夫(妻)が平日も休日も関係なくのめりこんでしまっていたら、不安に思わない人はいないでしょう。ギャンブルを原因とする借金があることが発覚すれば、離婚を考えはじめたとしても不思議ではありません。
ところが、夫(妻)がギャンブルをしたり借金をしたりしていても離婚できないケースがあります。今回は、夫(妻)のギャンブルを理由に離婚できるケースや、借金のある夫(妻)から慰謝料や養育費をもらえるのかなどの疑問に、弁護士が回答します。
1、ギャンブルを理由に離婚できるケース
ギャンブル依存の問題は少なからず存在します。冒頭で紹介した事件のように違法なギャンブルでなくても、パチンコやスロットをはじめ、競輪・競馬・競艇・オートレースなどにあればあるだけお金をつぎ込んでしまうケースもあるでしょう。夫(妻)のギャンブル依存が家族の生活費にまで影響が出れば、離婚を考えることはごく自然なことです。
では、ギャンブル依存の夫(妻)が離婚に合意してくれないとき、どうすれば離婚ができるのでしょうか。
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(1)離婚にも種類がある
離婚には種類があります。具体的には、「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」の4種です。
まず、夫婦で話し合って離婚するのが「協議離婚」です。離婚届を出せば離婚が成立します。相手のギャンブルについて悩んだ結果、離婚を切り出し、相手が合意すれば、特に何の問題もなく、離婚することができます。
もし、話し合いをしても、相手が離婚することに了承してくれないときは、離婚調停を行うことになります。調停とは、家庭裁判所の一室で、調停委員を加えて行う話し合いです。交互に呼び出され、離婚についての話し合いをすすめることになります。離婚することに双方合意できれば、調停調書が作成され、「調停離婚」が成立します。
さらに、調停でも離婚が成立しない場合には、家庭裁判所の審判が行われます。この審判で離婚が成立する場合が「審判離婚」です。さらに、夫婦どちらかが審判の内容に納得できなければ裁判へ至るケースもあります。裁判によって離婚を認める判決を受けて離婚するのが「裁判離婚」です。 -
(2)裁判を通じて離婚するために必要な法定離婚事由
裁判を通じて離婚する「裁判離婚」は、ある意味では最終手段となります。夫婦間で合意できていないケースで、裁判所に離婚を認めてもらうためには、法律で決められた「法定離婚事由」が必要です。
では、夫(妻)のギャンブルが離婚を希望する理由だった場合、「法定離婚事由」にあてはまり裁判で離婚が認められるでしょうか?
●悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、民法752条で定められた「夫婦の扶助義務」を正当な理由なく果たさないことをいいます。具体的には、以下のようなケースが悪意の遺棄とみなされる可能性があります。- 収入のほとんどをギャンブルへつぎ込み、生活費を渡さない
- ギャンブルが仕事だと言い張り、定職へ就かない
- ギャンブルにのめり込み、家に帰ってこなくなる
●婚姻を継続しがたい重大な事由
夫のギャンブルを理由に離婚したいと考えても、悪意の遺棄にあてはまらないこともあります。そのようなケースでは、法定離婚事由のひとつである「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があること」にあてはまるかどうかで判断されることになります。
たとえば、以下のようなケースが「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があること」にあてはまる可能性があります。- 借金のせいで返済額が生活を圧迫している状況
- ギャンブルばかりして育児や家事をまったく手伝わない
- ギャンブルが高じて犯罪に手を染めた
ただし、ただのギャンブル好きというだけで、しっかり仕事をして、家計に影響を出さず、育児や家事も手伝ってくれる夫であれば、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があること」にあてはまると判断してもらうことは難しいでしょう。
2、離婚の際に受け取れる慰謝料や養育費
もし、夫(妻)のギャンブルを理由に離婚が成立したら、夫(妻)に借金があっても慰謝料や養育費をもらえるのでしょうか?
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(1)慰謝料について
慰謝料は相手の不法行為がなければ請求することができません。つまり、夫(妻)のギャンブルが法定離婚事由にあてはまり不法行為と認定されれば、慰謝料の請求ができます。ただし、夫(妻)のギャンブルが夫婦生活にどれほどの影響を与えたのか、相手の財力などによって請求できる慰謝料の金額に幅があります。
さらに、慰謝料の金額は、相手の年収や年齢、子どもの年齢や人数、婚姻期間の長さなどによっても異なります。慰謝料請求のために裁判をしても、裁判所は夫(妻)自身の生活を考慮に入れて慰謝料の金額を決めます。よって、夫が多額の借金をしている、不動産などの財産がないなどの状態であれば、受け取れる慰謝料の金額は少額になる可能性が高いです。
ただし、相手と協議を行い相手が合意したときは、慰謝料額に上限はありません。それでも、相手が慰謝料の金額に納得してくれなければ協議離婚は成立しませんので、相手とよく話し合って落としどころを見極める必要があるでしょう。相手との話合いが難しければ、弁護士に依頼して交渉してもらいましょう。 -
(2)養育費について
夫(妻)のギャンブルを理由に離婚が成立した場合、夫(妻)に借金があっても養育費を請求できます。養育費は、あなたの生活費ではなく、子どものためのお金だからです。仮に夫(妻)が自己破産をしたとても、養育費の支払いは免除されません。
しかし、夫(妻)やあなた自身の収入、子どもの年齢、人数などによって養育費の金額は変わります。裁判の際は、養育費算定表を基準にして、養育費が決められることになります。
ベリーベスト法律事務所では、養育費算定表に基づいた養育費計算ツールを用意しています。まずは、こちらでおおよその養育費を確認してみてください。
養育費計算ツール
離婚の際、養育費の取り決めをしたときに、強制執行条項を入れて公正証書を作成しておけば、支払いが滞ったときに、直ちに給料や財産を差し押さえることが可能です。ただし、相手が定職に就いていないときや、自営業などで収入が不安定なケースでは、差し押さえる給料や財産自体がないため、回収が難しいこともあるでしょう。
3、まとめ
今回は、夫(妻)のギャンブルを理由に離婚できるケースや、借金のある夫(妻)から慰謝料や養育費をもらえるかについて解説しました。
「離婚できるかどうかわからないけど離婚したい」「定職に就いていない相手から慰謝料や養育費をもらえるか不安」などで悩んでいるときは、弁護士に相談するとよいでしょう。離婚を成立させるために必要なことなど、法律の専門家ならではの意見をアドバイスしてもらうことができます。
ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士も、状況に適したアドバイスを行います。配偶者のギャンブルで悩んでいる方は、ひとりで考え込まず、まずは相談してください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています