住宅ローンの連帯債務は離婚したらどうなる? 適切な解決方法とは
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東京都福祉保健局が公表している婚姻・離婚件数についての統計資料によると、令和3年度の東京都新宿区内での離婚件数は484件でした。他方で、新宿区に住まわれている世帯の持ち家率は36.2で、もし住宅ローンを組み戸建てやマンションを所有して住まわれている方は、地価の高さもありそれなりの負担を抱えていると考えられます。
夫婦が自宅やマンションを購入するときには、住宅ローンを借りて購入することが多いでしょう。自宅を購入する時には、将来離婚することなど想定していませんので、配偶者を連帯債務者や連帯保証人にして住宅ローンの借入れをしている方も相当数いると思います。
夫婦が円満に婚姻生活を継続していれば特に問題は生じませんが、さまざまな理由で離婚をすることになったときには、住宅ローンの連帯債務者に配偶者が残った状態では問題が生じることもあるため、注意が必要です。
今回は、住宅ローンの「連帯債務」を中心に、離婚したい夫婦が知るべきポイントをベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。
1、まずは確認! 住宅ローンでの連帯債務とは
自宅を購入する際に、住宅ローンを利用しているのであれば、まずは住宅ローンの契約内容を確認する必要があります。夫婦が住宅ローンを利用しているときの契約形態は、連帯債務、連帯保証、ペアローンのいずれかです。
以下では、それぞれの契約形態について説明します。
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(1)連帯債務とは
連帯債務とは、夫婦のうちの一人が主債務者となって住宅ローンを借り、もう一方が連帯債務者として同じくその住宅ローンの借り入れをする方法のことです。同一の住宅ローンを主債務者、連帯債務者として借り入れをすることになりますので、連帯債務者も主債務者と同じ返済義務を負うことになります。
連帯債務型の住宅ローンのメリットは、夫婦が共働きで双方に収入があるときには、収入合算をして住宅ローンの審査をすることで、一人の収入で審査をするよりも多くの金額を借り入れることができるという点です。また、主債務者と連帯債務者の両者が住宅ローン控除を利用することができます。 -
(2)連帯保証とは
連帯保証とは、夫婦のうち一方が主債務者となって住宅ローンを借り、もう一方が連帯保証人として、主債務者の住宅ローンの支払いを保証する方法のことをいいますs。
連帯債務型の住宅ローンと異なり、連帯保証人は、主債務者の支払いが滞ったときに、主債務者と連帯して返済額を支払う責任を負うことになります。
連帯保証型の住宅ローンでは、連帯保証人が直接の債務を負うわけではないため、連帯債務型の住宅ローンと異なり、住宅ローン控除を使用することはできません。 -
(3)ペアローンとは
ペアローンとは、夫婦がそれぞれ別々の住宅ローンの契約者になり借り入れをする方法のことをいいます。連帯債務型の住宅ローンが1本の住宅ローンを2人で借り入れるイメージであるのに対し、ペアローン型の住宅ローンは、それぞれが住宅ローンを借り入れるため2本の住宅ローンを借り入れるというイメージになります。
連帯債務型の住宅ローンでは、夫婦がお互いに住宅ローン全額について支払い義務を負うのに対して、ペアローン型の住宅ローンでは、それぞれが借りた金額についてのみ支払い義務を負います。また、ペアローン型の住宅ローンの場合、夫婦2人とも団体信用生命保険(いわゆる団信)に加入することが可能です。
2、連帯債務者が離婚するときには
離婚にあたって住宅ローンの契約形態を確認したところ、連帯債務型の住宅ローンだった場合、どのように対応していけばよいのでしょうか。
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(1)離婚をしたとしても連帯債務を抜けることはできない
連帯債務型の住宅ローンの場合、夫婦のどちらも住宅ローン全額について支払い義務を負うことになります。そして、離婚をして別居をすることになったとしても、連帯債務から抜けることはできません。住宅ローンは、金融機関と夫婦との関係ですので、離婚や別居という家庭内の個人的な事情を金融機関に対して主張することはできないのです。
その結果、主債務者が住宅ローンの支払いを怠った場合は、離婚をしてすでに自宅に住んでいないにもかかわらず、金融機関から連帯債務者に対して支払いの催促の連絡が行くことになります。連帯債務者の地位から外れない限り、離婚をしたとしても完済までずっと支払い義務を負い続けなければなりません。 -
(2)主債務者が全額支払うと約束したときは?
では、離婚にあたって、主債務者の夫が今後住宅ローンを全額負担すると約束したときは連帯債務者の地位を外れることができるのでしょうか。
たとえば、離婚時の財産分与の際、自宅は主債務者である夫が取得する代わりに住宅ローンも夫が全額を負担して支払うという約束をすることがあります。しかし、これはあくまでも夫婦間の合意に過ぎませんので、この合意に関与していない金融機関を拘束する法的効力はありません。
したがって、このような合意をしたとしても、金融機関に対して連帯債務者の地位を外してもらうように求めることができないので注意が必要です。夫が住宅ローンの支払いができなかったときには、たとえ合意をしていたとしても、妻は金融機関に対して連帯債務者として住宅ローンを支払っていかなければなりません。
3、連帯債務を抜ける方法
離婚にあたって連帯債務者の地位を残した状態だと、上記のようなデメリットがありますので、可能であれば連帯債務者の地位を外したいと考える方も多いでしょう。連帯債務者の地位を外す方法としては、以下のものが考えられます。
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(1)連帯債務者の差し替え
新たな連帯債務者の候補者を見つけて、金融機関が連帯債務者の変更に同意してくれれば、元々の連帯債務者はその地位を外れることが可能です。
代わりの連帯債務者となる候補者としては、元々の連帯債務者と同程度やそれ以上の支払い能力が必要になってきます。また、金融機関が了承してくれるのであれば、連帯債務者ではなく、他の不動産などの担保を提供するという方法も可能です。
離婚にあたって、自宅を出ていくことになったのであれば、自宅に引き続き居住する元配偶者の親族などに連帯債務者を代わってもらうように頼んでみるとよいでしょう。 -
(2)住宅ローンの借り換え
連帯債務者の地位を外す方法としては、住宅ローンの借り換えをするという方法もあります。新規の住宅ローンでどちらか一方の名義のみの住宅ローンを利用することができれば、元々の住宅ローンの連帯債務者はその地位を外れることが可能です。また、金利負担の低い金融機関を見つけることができれば、主債務者としても月々の返済額をおさえることができるといったメリットがあります。
もっとも、連帯債務型の住宅ローンを利用しているケースでは、夫婦双方の収入を合算して住宅ローンの審査を通過していることが多いため、借り換えの際に収入合算者がいない状態で借り換えの審査が通るかどうかは難しい側面もあるといえます。特に、住宅ローンを利用してからあまり期間がたっていない状態だと、借入額も相当額残った状態ですので、借り換えをするというのはより難しくなるでしょう。 -
(3)自宅の売却
自宅を売却して、住宅ローンを完済することができれば、当然連帯債務者の地位を外れることができます。自宅の売却価額がローン残高を上回るようであれば、この方法で問題なく連帯債務者の地位を外れることが可能です。
しかし、自宅の売却価額がローン残高を下回るときには、自宅を売却したとしても、ローンは残ってしまします。自宅が売却できたとしても、ローンが残った状態では、連帯債務者の地位も残ってしまいますので、主債務者と共に引き続き返済をしていかなければなりません。
また、自宅を売却するためには、主債務者の協力も必要になってきますので、連帯債務者一人で進めることもできないことにも、注意が必要です。自宅の売却を検討している方は、自宅の査定を行い、売却予定額と住宅ローンの残高とを比較しながら慎重に判断するようにしてください。 -
(4)自己破産
連帯債務者の地位を外れるための最終的な手段として、自己破産をするという方法もあります。
他にも借金があり、支払いが困難になっているという状況や、主債務者が自己破産をしたため連帯債務者に請求が来ているという状況であれば自己破産をするメリットがあります。しかし、自己破産をすると原則として手持ちの資産については債権者への返済にまわさなければならなくなりますので、それなりの資産がある状態では選択しにくい方法かもしれません。
4、住宅ローンなどの離婚に関する相談は弁護士へ
住宅ローンのある自宅を所有している夫婦の離婚については、弁護士に相談することがおすすめです。
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(1)連帯債務者の外れ方についてアドバイスをもらえる
連帯債務者の地位を外れるためには、主債務者や金融機関の協力や了解を得なければすすめることができません。自宅の資産価値や住宅ローンの残高などを踏まえて適切な方法を判断し、交渉していくためにも専門家である弁護士の協力は必要です。
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(2)離婚時の財産分与についてサポートを受けられる
住宅ローンのある自宅を所有している夫婦が離婚をするときには、財産分与の方法で争いになることが多いです。
離婚後自宅は夫婦のどちらが居住するのか、その場合の名義はどうするのか、住宅ローンはどちらが負担するのか、連帯債務者や連帯保証人の地位をどう処理するのかなど、非常に複雑な問題が生じます。
これらの事項について、財産分与に関する正確な知識と経験がなければ適切に処理することが難しいといえますので、専門家である弁護士にサポートを受けて進めることが必要です。
5、まとめ
夫婦が離婚するときの住宅ローンの処理について、どのような契約形態で住宅ローンを借りているかによって、対応が異なってきます。すでに住んでいない自宅のローンを離婚後も負わなければならないとなると、経済的な負担は大きくなってしまいます。
しかし一般的に、離婚を検討する段階では冷静な話し合いが難しい状態に陥っているケースが少なくありません。話し合いを適切に進めるためにも、弁護士に対応を委任するなどの手段を検討してみてはいかがでしょうか。離婚にあたって、住宅ローンの処理についてお悩みのときは、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています