利用規約には同意が必要! その理由と効果を発揮するための適切な方法とは

2020年11月18日
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利用規約には同意が必要! その理由と効果を発揮するための適切な方法とは

インターネットで商品を購入しようとしたときに、長々とした利用規約が出てきて、目を通すのも嫌になってしまった……という人は少なくないでしょう。このような経験があると、たとえ自分が事業者の立場であっても、ユーザーから利用規約への同意を得ることに意味があるのかと疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

結論から言えば、利用規約に同意は欠かせません。もし同意がなければ、さまざまなトラブルに巻き込まれる可能性が非常に高くなります。

この記事では、利用規約における同意の役割とは何か、法律を遵守しながら同意を得るためにはどうしたらいいかなどを、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説しています。

1、利用規約における「同意」の役割

利用規約とは、サービスを提供する事業者が、そのサービスについて設けたルールをいいます。利用規約の内容は、サービスの内容やビジネスモデルによってさまざまですが、サービスの利用に際しての禁止事項や、禁止事項が行われた場合の措置、免責事項などについて定められているのが一般的です。

ただ、利用規約は、単に設けるだけでは不十分で、サービスを利用するユーザーの同意が不可欠です。なぜなら、利用規約は、ユーザーからの同意を得てはじめて、契約内容に組み入れることができるからです。

逆に、同意が得られなかった場合、利用規約をユーザーとの契約関係に適用することができません。その場合、ユーザーは利用規約に拘束されませんので、仮にユーザーが利用規約で禁止している行為をしたとしても、事業者は何も言えなくなってしまう危険があります。

しかも、その結果ユーザーや第三者との間でトラブルが発生した場合、その責任が事業者になかったにもかかわらず、多額の損害賠償金を支払わなければいけない可能性もあります。

2、利用規約に同意がなかったら? 起こりがちなトラブル

利用規約にユーザーの同意がなかった場合、事業者は、ユーザーの行動を利用規約によって制限することができません。以下にありがちなトラブルケースを挙げましたので、一緒に見ていきましょう。

  1. (1)提供するサービスの二次利用が許されてしまう

    サービスやコンテンツに関する著作権や利用権の所在を定めた利用契約につき、ユーザーの同意が得られていなければ、悪質なユーザーに二次利用されてしまうおそれがあります。

    自社のサービスやコンテンツが不正に二次利用されてしまうことで、サービスの希少価値が失われ、売上に悪影響が出る可能性も否定できません。

  2. (2)他の人に不快感を与える投稿を削除できない

    ユーザーが自由に情報を発信できるようなサービスの場合、不適切な投稿等を禁止する、不適切な投稿等に対しては削除等の措置を取るといった利用規約が設けられることが一般的です。しかし、このような利用規約について同意が得られていなければ、他者に不快感を与える投稿がされてしまったとしても、その投稿を事業者の判断で速やかに削除することが難しくなります。

    他者に不快感を与えるような投稿がなかなか消えないという状況は、既存のユーザーが離れてしまったり、新規のユーザーが来なくなったりする原因となるでしょう。

  3. (3)ユーザーによるサーバーへの妨害を防げない

    利用規約では、禁止事項として、サーバーやネットワークへの妨害行為が挙げられるのが一般的です。もし同意が得られなければ、妨害行為を受ける危険が高くなったり、妨害行為に速やかに対処することができない可能性があり、その結果サービスの質が低下し、ユーザー離れが起きることも考えられるでしょう。

  4. (4)サービスを取りやめることができなくなる

    事業を運営していると、別のサービスを提供したいなどの理由で、もともとのサービスを取りやめたいときが出てくることもあるでしょう。しかし、サービスの終了や停止に関する利用規約に同意を得ていないと、サービスを取りやめたときにユーザーから「納得ができない」と言われてしまい、トラブルに発展する可能性があります。

3、利用規約の同意を適切に取る方法

前章でご紹介したトラブルは、ほんの一例で、他にもさまざまなケースがあります。いずれにしても、トラブル回避のためには、ユーザーに対してきちんと利用契約の同意を求めることが大切です。では、具体的にどのような方法を取ればいいのでしょうか。

  1. (1)改正民法が定める定型約款

    同意を得る適切な方法を考えるにあたっては、利用規約をめぐる法律について理解する必要があります。

    令和2年4月1日に施行された改定民法により、次の要件を満たす利用規約が「定型約款」と定義づけられました(民法548条の2)。

    • 不特定多数のユーザーを相手方として行う取引について設けられた利用規約であること
    • 利用規約の対象である取引の内容が画一的であり、画一的であることが当事者双方にとって合理的であること
    • ユーザーと話し合わずに設けられた利用規約であること


    このため、オンライン上のサービスを対象とした利用規約、保険約款、電気やガスなどの供給約款は、その多くが改正民法上の「定型約款」に当たることになります。

  2. (2)定型約款のみなし合意

    改正民法では、利用規約が「定型約款」に当たる場合、その利用規約が契約の内容になる要件として、以下の事由を挙げています(民法548条の2第2号、同548条の3)。

    • 定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約内容とする旨をユーザーに表示していること
    • 定型約款の条項に、ユーザーの権利を不当に制限し、またはユーザーの義務を不当に加重するものが含まれていないこと
    • サービス利用の合意前または合意後の相当期間内に、ユーザーから請求があった場合は、遅滞なく、相当な方法で定型約款の内容を示すこと


    これらの要件を満たせば、利用規約にユーザーからの同意を得たとみなされます。ですので、たとえば、「サービスを開始した時点で、利用規約に同意したものとみなす」旨をあらかじめ明示したうえで、その利用規約をユーザーに表示していれば、たとえユーザーが利用規約の内容を把握しないままサービス利用を開始したとしても、その内容に同意したものとみなされます。これを「みなし合意」といいます。

  3. (3)利用規約の同意を得る方法

    改正民法を踏まえれば、みなし合意を得れば問題はありませんが、後にトラブルが発生する危険を考えると、事前にユーザーからしっかりと同意を取っておく方が無難でしょう。

    事前の表示で同意を得る方法にするなら、たとえば、ユーザーが必ず見る画面(サービスの購入画面など)に利用規約を記載し、利用規約を全てスクロールした後にチェックボックスで同意したことを意思表示してもらう、といった方法が挙げられます。その画面に利用規約の全文を表示するのが難しい場合は、別ページに利用規約を記載し、リンクですぐにアクセスできるようにするといいでしょう。

4、利用規約とともに、定めておきたいもの

利用規約は、サービスを滞りなく運営するために不可欠なルールです。しかし、サービスの内容によっては、他にも定めておきたいルールがあります。ここでは特に重要な、プライバシーポリシーと特商法に基づく表記について、ご紹介しましょう。

  1. (1)プライバシーポリシー

    プライバシーポリシー(個人情報保護方針)とは、サービス提供に際してユーザーの個人情報を取得する場合に、作成しなければいけないルールを意味します。

    個人情報をどのような方法で取得して管理をするのか、なぜ取得するのか、何に利用するのかなどを定める必要があります。特に、第三者への提供や開示を行う可能性がある場合には、その要件や手続きなどを記載するのも忘れないようにしましょう。

    必要事項をまとめたら、ひとつのウェブページにまとめて会社のウェブサイトやサービスサイトのトップページから飛べるようにすることが大事です。

  2. (2)特定商取引法に基づく表記

    特定商取引法(特商法)が適用される、訪問販売や通信販売、特定継続的役務提供などの取引を行う事業者は、公正な取引をするために必要な事項をユーザーに表示する義務を負います。

    具体的にいうと、事業者は、氏名や住所だけでなく、サービスの販売価格や商品を渡す時期、契約解除に関する事項などを公開しなければいけません。これらが表示されていることで、ユーザーは安心してサービス提供を受けられるようになります。

    特商法に基づく表記は、プライバシーポリシー同様、ひとつのウェブページにまとめましょう。トップページにリンクを貼りつけたら、サービスを提供する前に、きちんと表示されるかチェックしてください。

5、利用規約などの作成代行は弁護士へ

利用規約は、サービス提供にかかわる契約と同様に重要なものであって、その作成・運用には細心の注意を払わなければなりません。ユーザーから同意を得ることに気を付けるのはもちろん、適切な内容の規約を作成することが大切です。特に、事業者が一方的に有利になったり、逆にユーザーが一方的に不利になったりするような利用規約は、事業者の信用性に大きな悪影響を及ぼします。また、上述のとおり、社会通念上あまりにも不当な条項は、そもそも契約内容となりません。

もし、利用規約に関して分からない部分や曖昧なところがあるときは、迷わず弁護士に相談することをおすすめします。弁護士からアドバイスやリーガルチェックを受ければ、ユーザーと事業者の利益を担保しつつ、法的に安心な利用規約が作成できるでしょう。

また、弁護士であれば、利用規約の作成代行をすることも可能です。最初から作成を依頼することで業務の手間が省けたり、トラブルへの不安を持たなくて済んだりとメリットが多いので、併せて検討してみてください。

6、まとめ

利用規約の同意は、事業者とユーザー、双方がストレスフリーな関係を築きます。会社の将来を考えても、なぜ必要か、何をすればいいのかは、ぜひおさえておくようにしましょう。

ただ利用規約に関しては、民法の改正もあり、複雑な部分があることは否めません。ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士であれば、事業者やサービスに応じて最適な手段が提供できます。作成代行はもちろん、法改正に伴う既存の利用規約のチェック、変更するときのアドバイスなども可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています