インターネットの悪質な書き込みで受けた風評被害を加害者に損害賠償する方法

2019年07月11日
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インターネットの悪質な書き込みで受けた風評被害を加害者に損害賠償する方法

新宿にお勤めの方や通勤で乗り換えなどをする方は、東日本大震災の被災県の人々が風評被害の払拭(ふっしょく)に向けて農産物や観光地のアピールを行っている光景を目にしたことがあるでしょうか?
誤った認識やうわさが広まってしまうと、人々に植え付けられた悪印象を変えることは難しいものです。多くの地域や企業が風評被害による売上減少に悩まされています。風評被害は、大きな災害だけではなく日々のインターネットの書き込みや投稿からも発生することが多く、風評被害により閉店に追いやられるお店もあります。
そこで、今回はインターネットで風評被害を受けた会社やお店がとるべき対策、損害賠償請求を行う方法を解説します。

1、風評被害とは何か? どのような実害が発生する?

風評被害の明確な法律の定義はありません。一般的には、不正確で曖昧な情報が流れた結果、多くの人々が「問題がある」と認識してしまい、サービスや商品の価値が下落したり、信用が失墜してしまい社会的・経済的な被害を受けることをいいます。
近年起こった風評被害で代表的なものが、東日本大震災の原発事故です。放射性物質によって空気や水、食料が汚染されているという誤った認識が広がり、甚大な風評被害が発生しました。

インターネット上のデマや悪質な書き込み、嫌がらせなどでも風評被害は発生します。具体的には以下のような実害が生じる可能性があります。

  • 来店者減少による売上の激減
  • 顧客との取引停止
  • 労働力の確保が困難になる
  • 店舗・企業のイメージダウン


付いてしまったマイナスイメージを拭い去ることは難しいものです。放置している時間が長ければ長いほど、売上減少などのお店や会社の経営に直結する被害は大きくなります。

2、風評被害を受けたら、加害者に損害賠償請求は可能?

インターネットで会社やお店が風評被害を受けた場合、実際の書き込みの内容や、発生した損害に応じて損害賠償請求が可能になるケースもあります。
風評被害による損害賠償請求では、風評被害によって減少してしまった利益を請求できます。また、風評被害の原因となる誹謗中傷を書き込んだ犯人を特定するためにかかった費用や、裁判費用、弁護士費用なども請求できる可能性があります。

ただし、減少した利益を請求する場合は、風評被害によって減少したという「因果関係」を証明しなければなりません。
日本の民事訴訟では、損害賠償請求をする者が原則的に因果関係の証明責任を負います。
したがって、自分で証拠をそろえて、風評被害の原因となった行為と風評被害によって減少した利益の因果関係を立証し、裁判官に認めてもらう必要があります。なお、訴訟を起こさなくても、加害者と交渉して損害賠償請求をすることもできます。

損害賠償請求は企業や個人が自分で行うことができます。しかし、手続きが煩雑であること、加害者との交渉や訴訟手続きには専門的知識が必要であることなどから、弁護士に依頼することをおすすめします。

3、風評被害の損害賠償請求手順

  1. (1)投稿の削除依頼

    風評被害の損害賠償請求を行う前にまず当該書き込みの削除を検討したほうがよいでしょう。先ほど解説したように、誹謗中傷などの悪質な書き込みを放置しておくと、風評被害が拡大してしまうからです。

    誹謗中傷やデマなどの書き込みの削除は書き込まれている媒体によって削除手順は異なります。もっとも、多くの場合は「サイト管理者」や「サイト管理会社」に連絡して削除依頼を行います。Facebookのような規模の大きいサイトであれば、削除依頼フォームが用意されていますので、手順に沿って削除依頼を出しましょう。この削除依頼に応じてもらえなければ、裁判所に削除請求の仮処分を申し立てることになります。

  2. (2)発信者情報開示請求

    削除請求と同時並行で進めなければならないのが、発信者の特定です。誹謗中傷などを書き込んだ本人が特定できなければ、損害賠償請求を行うことはできません。誹謗中傷した発信者を特定するために「発信者情報開示請求」を行います。この制度を使ってインターネット上で、第三者を誹謗中傷するような内容を書き込んだ発信者の住所や氏名、電話番号などの情報の開示をプロバイダに請求することができます。この手続きは、裁判を起こさなくても行うことができるのですが、任意で情報開示に応じるプロバイダは多くないのが実情です。

    したがって、発信者を特定するためには裁判で発信者情報開示請求を行うことになります。
    発信者情報開示請求により、相手の身元が判明したらようやく損害賠償請求を行うことができます。損害賠償請求では、風評被害によって被った被害や慰謝料、発信者情報開示請求にかかった費用や、弁護士費用などが請求可能になるでしょう。

  3. (3)刑事告訴も視野に入れて

    民事上の損害賠償請求とともに、刑事告訴も検討しましょう。根も葉もないうわさや誹謗中傷を書き込んだ場合、名誉毀損(きそん)罪、侮辱罪、信用毀損および業務妨害罪に問われる可能性があります。
    警察が捜査を行い、検察官に起訴されて、裁判所が有罪の判決を出せば相手に刑事罰が科せられます。

4、風評被害で損害賠償請求を行った実例

風評被害を引き起こした書き込みを削除、発信者を特定するだけでも多くの手続きが必要で、なおかつ損害賠償請求を行うことは非常に難しいと感じるかと思います。しかし、弁護士に依頼することで損害賠償請求訴訟をして勝訴した事例は少なくないので、その1例をご紹介します。

●ネット掲示板への書き込みに対して損害賠償が認められた事件(運送会社)
ある運送会社に雇用されていた従業員が、有名なインターネット掲示板「2ちゃんねる」上に「不当解雇」というスレッドを作成し、掲示板内に「業務は多忙で休日もほとんどない」、「今の社長は2代目。まさにボンボンです」、「いきなりの解雇通知である。納得出来ず、社長に抗議すると懲戒解雇にすると言われ同意書にサインしろと恫喝された」などと、同運送会社の会社や社長、専務に対する誹謗中傷コメントを書き込んでいました。これを受けて、会社や社長、専務が「会社の営業上の信用等が棄損された」として、この従業員に名誉毀損に基づく損害賠償請求をしました。

東京地方裁判所は、「被告がインターネット上に本件書き込みを行った結果、原告らの名誉、信用等について社会から受ける客観的評価が低下したことは明らかである」と判断。被告に対し、会社に100万円、経営者と専務に30万円ずつ支払うよう、命じました。
(東京地裁平成14年9月2日判決)

5、風評被害を受けたら、まずは弁護士に相談すべき

インターネットで風評被害を受けた際に重要なのは迅速な対応です。まずは証拠を保存してから、サイトの管理者に削除を依頼しなければなりません。インターネットにアップされている時間が長ければ長いほど、風評被害は拡大し、書き込みがあちこちに転載されたり、検索履歴に掲載されたりして、収拾がつかなくなってしまいます。

しかし、個人でプロバイダに連絡をしても直ちに対応してくれるケースはあまり多くありません。もちろん個人でも削除請求をすることは不可能ではありませんが、弁護士に依頼することをおすすめします。個人名で削除依頼を行うより、弁護士名で行った方が、プロバイダに被害の深刻さが伝わり削除成功率が高まる傾向にあるためです。

また、風評被害に精通する弁護士に依頼すれば、発信者を特定して、損害賠償請求や刑事告訴の手続きも行うための準備も速やかに行うことができます。更に、削除に応じてもらえなかった場合も速やかに次の策を講じることができるので、スピード感を持って対処できるでしょう。

損害賠償請求を行うつもりであれば、なおさら初期段階で弁護士に依頼することをおすすめします。裁判に必要な証拠集めや手続きの進め方等、弁護士なら適切なアドバイスをすることができます。

6、まとめ

インターネットで悪質な書き込みを発見したら、実際の被害が発生する前に速やかに弁護士に依頼して削除の手続きを進めた上で、損害賠償請求を視野に入れるとよいでしょう。
また、悪質な書き込みには刑事責任を問うことが可能です。泣き寝入りせずに積極的に立ち向かいましょう。
ベリーベスト法律事務所の新宿オフィスには、風評被害の損害賠償請求の経験がある弁護士が在籍しています。被害が拡大する前にぜひ相談してください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています