独身が死亡したら兄弟が相続するの? 相続人と法定相続分

2022年05月02日
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独身が死亡したら兄弟が相続するの? 相続人と法定相続分

新宿自治創造研究所が公表している研究レポートによると、平成27年の新宿区内の家族類型別一般世帯の数は、20万4547世帯であり、そのうち単独世帯は13万2644世帯でした。単独世帯の割合は、64.9%であり、単独世帯が占める割合が非常に多いことがわかります。また、この単独世帯が占める割合は、全国的にみても4番目に高い数字であり、新宿区は、単独世帯の方が多く居住する地域であるといえます。

このように単独世帯や独身の方が増えてくると、心配になるのが自分が亡くなった後の相続の問題です。独身の方が亡くなった場合には、独身の被相続人が有していた財産については、誰が相続することになるのでしょうか。また、生前にできる相続対策としてはどのようなものがあるのでしょうか。

今回は、独身の方が死亡した場合の法定相続人と法定相続分や独身の方が行っておくべき相続対策について、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。

1、独身者の法定相続人は?

独身の人が亡くなった場合には、誰が相続人になるのでしょうか。以下では、独身者の法定相続人と法定相続分について説明します。

  1. (1)法定相続人の範囲

    法定相続人とは、相続が開始したときに被相続人の遺産を相続することができる人のことをいいます。その範囲の人が相続人になることができるのかについては、民法で明確に規定されていますので、相続が開始したときには、民法のルールに従って、法定相続人を判断していくことになります。

    民法では、法定相続人の範囲について、以下のように規定しています。

    ① 配偶者
    被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者は、常に相続人になります。配偶者は、子どもや両親、兄弟等、他に相続人がいたとしても、相続人になることができます。なお、この配偶者とは、婚姻関係にある配偶者のことをいい、内縁の配偶者は含みません。

    ② 被相続人の子ども(第1順位)
    被相続人に子どもがいる場合は、その子どもは第1順位の相続人になります。子どもには、被相続人の実子だけではなく、認知した非嫡出子や養子も含まれます。また、被相続人よりも前に子どもが死亡していた場合には、代襲相続によって子どもの子ども(被相続人の孫)が相続人になります。

    ③ 被相続人の直系尊属(第2順位)
    第1順位の相続人が存在しない場合は、被相続人の直系尊属が相続人になります。なお、直系尊属とは、被相続人の父母・祖父母のことをいい、どちらも存在する場合には、被相続人と親等が近い父母が相続人になります。

    ④ 被相続人の兄弟姉妹(第3順位)
    第1順位および第2順位の相続人が存在しない場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。被相続人よりも前に兄弟姉妹が死亡していた場合には、代襲相続によって兄弟姉妹の子ども(被相続人の甥姪)が相続人になります。

  2. (2)法定相続分の割合

    法定相続分とは、相続が開始したときにどのくらいの割合で遺産を取得することができるのかを定めた割合のことをいいます。独身者の場合には、配偶者は存在しませんので、被相続人の子どものみが相続するケース、被相続人の父母が相続するケース、被相続人の兄弟姉妹が相続するケースのいずれかになります。

    同順位の相続人の法定相続分は等しい割合となりますので、同順位の相続人が複数いる場合には、相続人の数で按分した割合が法定相続分となります。たとえば、被相続人の相続人が、3人の兄弟姉妹のみであった場合には、法定相続分は、それぞれ3分の1ずつになります。

2、法定相続人以外に遺産相続をさせることは可能?

相続が開始した場合には、被相続人の遺産は法定相続人が相続するのが原則です。しかし、以下のような方法をとることによって、法定相続人以外の人に遺産を相続させることが可能となります。

  1. (1)遺言書による遺贈

    遺贈とは、遺言によって遺贈者の財産を受遺者に無償で譲渡することをいいます。遺贈をする相手については、法律上の特に制限は設けられていませんので、法定相続人以外の人に対しても遺贈をすることができます。そのため、お世話になった第三者や法定相続人ではなく甥姪などに遺産を相続させたいと考えた場合には、あらかじめ遺言書を作成しておくことによって、遺産を相続させることが可能になります。

    ただし、他に相続人が存在する場合には、他の相続人の遺留分を侵害しないように配慮する必要があります。遺留分を侵害する内容の遺言書であっても法律上は有効ですが、遺贈を受けた方が遺留分をめぐる争いに巻き込まれてしまうリスクがありますので注意が必要です。

  2. (2)生前贈与

    遺言書による遺贈は、遺言者が亡くなった後に財産を相続させる方法ですが、生前に財産を渡したいという場合には、生前贈与という方法があります。生前贈与とは、贈与者から受贈者に対して無償で財産を渡すことをいい、口頭による合意だけでも成立します。しかし、口頭による合意だけでは後日トラブルになる可能性もありますので、きちんと贈与契約書を作成しておくことをおすすめします。

    なお、生前贈与は、贈与税が課税されることになりますので、高額な財産を一度に渡してしまうと高額な贈与税が課税されるリスクがあるため注意が必要です。生前贈与を利用する場合には、年間110万円までの贈与が非課税となる暦年贈与を利用するなどして計画的に進めていく必要があります。

  3. (3)特別縁故者に対する財産分与の申し立て

    遺贈および生前贈与は、財産を有する本人が主導となって法定相続人以外の人に財産を渡す方法になりますが、第三者の側から財産の取得を申し出る制度として「特別縁故者に対する財産分与」というものがあります。

    これは、被相続人に誰も相続人がいない場合に、被相続人と特別親しい関係にあった人の申し出によって、その人に財産を帰属させる手続きのことをいいます。特別縁故者から財産分与の申し立てがあれば、裁判所の判断によって特別縁故者に対して被相続人の財産が分与されますが、申し立てをすれば必ず財産がもらえるというわけではありませんので注意が必要です。

3、遺言書の作成が大切

独身の方による生前の相続対策としては、遺言書を作成するということがもっとも基本的な対策となります。

  1. (1)遺言書のメリット

    独身の方の場合、相続人がいたとしても兄弟姉妹などが中心になりますが、兄弟姉妹などが先に亡くなってしまうと誰も相続人がいないという事態が生じる可能性があります。また、兄弟姉妹よりも身近で世話をしてくる友人や知人に対して財産を残してあげたいと考えることもあります。

    このように独身の方の場合には、法定相続人以外の人に対して財産を残したいという希望を持たれる方が多いですが、それを実現するためには、遺言書の作成が不可欠となります。遺言書を作成することによって、遺言者自身が誰に対してどのような財産を渡すのかを決めることができますので、元気なうちから遺言書の作成に取り掛かることをおすすめします。

  2. (2)遺言書の種類

    生前の相続対策として利用される遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言という2種類の遺言書があります。

    自筆証書遺言とは、遺言書の全文を遺言者自身が手書きにより作成する遺言書です。紙とペンと印鑑さえあればいつでも遺言書を作成することができますので、もっとも作成に手間のかからない遺言書だといえます。

    公正証書遺言とは、公証役場において公証人が作成する遺言書です。公正証書遺言の作成にあたっては、2人以上の証人の立ち会いが必要になるなど自筆証書遺言に比べて手間のかかる遺言書ですが、形式面の不備によって遺言書が無効になるリスクはほとんどありません。また、公正証書遺言は、公証役場において保管してくれますので、遺言者が亡くなった後、遺言書を見つけてもらえないなどの心配もいりません。

    遺言書の作成を検討されている場合には、手間はかかりますが、将来のリスクを軽減することができる公正証書遺言の作成をおすすめします

4、遺産相続の相談は弁護士へ

将来の遺産相続についての対策をお考えの方は、弁護士にご相談ください。

  1. (1)適切な相続対策をアドバイスしてもらえる

    どのような相続対策を講じるのが最適であるかについては、相続対策を行う目的や具体的な希望によって異なってきますので、最適な相続対策を選択するためには、専門家による診断とアドバイスが必要不可欠となります。

    弁護士は、相続に関して豊富な知識と経験を有していますので、弁護士に相談をすることによって、法的側面だけでなく相続税などの税金面も踏まえたうえで、最適な相続対策を提案してもらうことができます

  2. (2)遺言書の作成についてサポートしてもらえる

    独身の方の相続対策としては、遺言書の作成が中心となってきます。自筆証書遺言および公正証書遺言のどちらを作成するにしても不慣れな方では、形式面や内容面で不備が生じる可能性があります。遺言書の作成をする際には、弁護士が書類の収集から具体的な内容まで細かくサポートいたしますので、安心してお任せください。

    また、独身の方の場合には、遺言書の内容を実現するための遺言執行者を指定しておくことが有効な手段となりますが、遺言書の作成を依頼した弁護士に遺言執行者も依頼することも可能です

5、まとめ

独身の方が亡くなった場合でも子ども、親、兄弟姉妹が相続人になることができますので、直ちに遺産が国庫に帰属してしまうという心配はありません。しかし、子ども、親、兄弟姉妹がいないという場合や法定相続人以外の人に遺産を渡したいという場合には、遺言書を作成するなどして生前に対策を講じておく必要があります。

このような相続対策をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています