「遺産分割協議」でよくあるトラブルと、弁護士に依頼するメリットとは?

2019年09月13日
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「遺産分割協議」でよくあるトラブルと、弁護士に依頼するメリットとは?

「相続」は「争続」とも言われるように、争いに発展しやすいものです。仲の良かった兄弟姉妹が相続をきっかけとするトラブルで、絶縁状態になるということもめずらしくありません。なぜ、トラブルに発展してしまうのでしょうか。
親が死亡したようなケースでは、相続前は、親の財産だったものが、相続によって突然相続人の財産になります。相続人がひとりであれば、相続をするか放棄するかの判断だけなので、あまり問題は生じません。しかし、相続人が複数の場合には、相続財産の分割割合や財産の処分をめぐって対立が発生します。

また、相続手続きには、相続放棄や相続税の納付など期限があるものがあります。
相続人間でのトラブル防止や、重要な期限がいつの間にか過ぎていたという失敗を防止するためにも弁護士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。

今回は、遺産分割協議でよくあるトラブル事例を見ていきつつ、弁護士に依頼するメリットについて、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。

1、遺産分割協議

「遺産分割協議」という言葉自体は聞いたことがあっても、いざ、具体的にどのようなことをするのか聞かれると明確に答えられる方はほとんどいないのではないでしょうか。遺産分割協議とはどのようなものなのかについて、基礎的な部分について解説していきます。

  1. (1)遺産分割協議とは

    遺産分割協議とは、遺産を相続人間でどのように分割するか相続人同士で協議をすることです。より具体的に言うと、相続人の誰がどの相続財産を相続するのか、また、相続財産を売却して金銭分配する場合には、誰にいくら分配するかなどについて、相続人全員で協議することです。
    遺産分割協議は、遺言がない場合、あるいは遺言があってもそれと異なる財産分配をする場合に必要になります。
    遺言がある場合には遺言に従わなければならないと思っている方も多いと思いますが、遺言の内容が相続人だけに関するものなら、相続人全員が合意すれば遺言と異なる内容で遺産分割協議をすることも可能です。ただし、被相続人は、遺言で5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁ずることができるので、その場合には、その期間遺産分割をすることはできません。

  2. (2)遺産分割協議書の必要性

    被相続人が亡くなれば遺族は精神的につらい状態になります。このような精神状態で、お金なんかどうでもよいという気持ちになり、よく考えずに遺産分割協議に合意してしまう方がいます。しかし、のちに冷静になり、「もらえる物はしっかりともらうべきだった」などと考え、合意内容と異なる主張をする相続人が現れ、相続人間でトラブルになることがあります。そのため、合意内容は文書にしておくことが必要です。それが「遺産分割協議書」です。遺産分割協議後のトラブルを避けるために、「遺産分割協議書」の作成は必須といえます。

2、遺産分割協議の流れ

  1. (1)相続人間に争いがない場合

    相続人同士で分割について話し合い意見がまとまった場合には、合意内容について遺産分割協議書を作成することになります。争いがない場合でも、後になってトラブルにならないよう、相続財産や相続人の存在をしっかりと調査し、正確に遺産分割協議書を作成しなければなりません。また、行政手続き(税務手続きも含む)や登記手続きなどを行う必要もあります。これらの手続きを個人でやるのは大変ですし、何より複雑な権利関係を正確に文書にすることは非常に困難です。これらの手続きに関しては法律を熟知している弁護士に依頼するのが確実です。

  2. (2)相続人間で協議がまとまらない場合

    遺産分割協議をしても話がまとまらなければ、法的な手続きに入るしかありません。具体的には、遺産分割調停や遺産分割審判の申立てをすることになります。

    遺産分割調停手続きを利用する場合には、相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所に申し立てます。申立てに必要な費用は、被相続人ひとりにつき1200円と連絡用郵便切手代になります。申立てに必要な書類としては、以下のようなものです。

    • 申立書1通およびその写し(相手方の人数分)
    • 被相続人、相続人の戸籍謄本(戸籍等全部事項証明)
    • 相続人全員の住民票または戸籍附票
    • 不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し、有価証券写しなど

    調停手続きは、調停委員が当事者の双方から話を聞いて助言や具体的な提案を行い、合意に向けて調整を行います。調停で合意に至れば、その内容で遺産分割は確定します。この調停で合意に至らなかった場合には調停は不成立になり、基本的に審判手続きに移行します。

    審判手続きでは、期日が指定され、当事者は裁判所に出頭して、主張・立証を行うことになります。期日が開かれる回数や期間については争点の多さによって違いますので、一概には言えません。当事者による主張・立証が尽くされると、裁判官は審判を下します。裁判官は当事者による主張・立証をふまえ、もっとも合理的と考えられる内容で審判を下しますが、不動産などは不平等が生じないよう任意売却が命じられ、現金化し分配されることが多いようです。そのため、結果的に相続財産の受取総額が減少し、誰も満足しないという結論になることもあります。審判の後、審判書が送達されてきますが、送達後2週間が経過すると審判は確定します。

3、遺産分割協議でよくあるトラブル

ここでは遺産分割協議でよくあるトラブル事例を見ていくとともに、遺産分割協議で弁護士に依頼するメリットをご紹介します。

  1. (1)トラブル事例

    ● 相続人間で分割割合について意見がまとまらない
    相続においては、誰もが多く財産をもらいたいと思うものです。機械的に法定相続分で分割すれば問題が起きないように思うかもしれませんが、「同居して介護もしていたのだから多く財産をもらうのが当然」という主張や、逆に「同居していて家賃を払わなくてすんだのだから、その分少なくすべき」というように、個別の事情を持ち出して少しでも多く財産をもらおうとします。

    ● 不動産の処分で意見が対立
    特に相続財産に相続人たちの実家の不動産がある場合に問題になることが多いです。実家に対する思い入れは人それぞれで、「思い出の家だから売りたくない」という意見と、「お金がすぐ欲しいから売却すべき」という意見が対立することがあります。また、実家に住み続ける相続人に資力がなく、他の相続人へ代償金を支払うことができないといった問題もあります。更に、代償金を払う場合でも不動産の評価額について争いになることがあります。

    ● 愛人、内縁の妻、隠し子とのトラブル
    被相続人が資産家で、遺言に愛人や隠し子に多額の財産を遺贈するとの記載があった場合に妻やその子どもとの間でトラブルが発生します。法定相続人には遺留分(最低限の取り分)がありますので、仮に「全額愛人○○に遺贈する」となっていても、一定の財産は受け取ることが可能です。

    ● 生前に多額の贈与がある
    たとえば、「亡くなる前に末っ子に家を買ってあげた」、あるいは「ひとりだけ大学に行かせてもらった」というような場合です。これを「特別受益」といいます。民法では、共同相続人中に、被相続人から特別に贈与を受けたものがあるときは、相続財産の中に、その贈与の価額を加えて算出することで調整しています。ただ、どこまでを特別受益とすべきかについて民法に明確に定められていないので、その点について争いになることがあります。

  2. (2)遺産分割協議で弁護士に依頼するメリット

    以上のようなトラブルを回避するためには、やはり弁護士に依頼することが一番です。遺産分割協議で弁護士に依頼するメリットとしては、次のようなことがあります。

    • 第三者の弁護士が間に入ることで感情的な対立を避けられる
    • 協議がまとまらず調停になった場合でも手続きをまかせられる
    • 法的なアドバイスをもらえることで他の相続人からも納得感が得られやすい
    • 審判が長期化するような場合でも手間がかからない
    • 書類の作成や手続きなどを行ってもらえる

    なお、相続が開始してからはもちろん、遺言の作成など事前の対策についても弁護士に依頼することができます。事前対策を行っておけば、多くのトラブルは避けられます。

4、まとめ

身内の不幸という悲しい出来事の後に、親族間で争いが生じるというのはできれば避けたいものです。しかし、実際には多くの相続トラブルが発生しているのが現実です。これを避けるためには、相続財産を明確にしておくこと、遺言を書いておくこと、日頃から親族間でコミュニケーションをとっておくことが大事になります。

相続は多くの部分について事前に対策がとれます。早めに弁護士に相談し事前の対策をとることをおすすめします。

当事務所には、相続案件の経験豊富な弁護士がおりますので、相続対策に必要なサポートを行うことが可能です。遺産相続についてのご相談はベリーベスト法律事務所 新宿オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています