任意同行は拒否できる? 任意出頭との違いや逮捕の可能性を弁護士が解説
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警察が犯罪の被疑者を逮捕する際には、いきなり逮捕するわけではなく「まずは事情をよく聞いてから」と段階を踏むことがあります。
令和2年2月に、覚せい剤取締法違反容疑で男性が逮捕されたと報道された事件では、新宿区歌舞伎町の路上で、警察が男性に職務質問したのち、警察署への任意同行を求めたうえ、警察署でその男性を逮捕しました。
任意同行とは、警察等の捜査機関からの求めに応じ、警察署などに同行することをいいます。逮捕と違って強制手続ではないので、拒否することも可能ではありますが、むやみに拒否しても事態は好転しません。
任意同行の流れや法的根拠、任意同行を受けた場合に取るべき正しい行動を学んでおきましょう。このコラムでは新宿オフィスの弁護士が「任意同行」に関するさまざまな疑問を解説していきます。
1、任意同行とは?法的根拠や流れ
そもそも、「任意同行」とはどのような手続きなのでしょうか?法的根拠や流れをみていきましょう。
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(1)任意同行の法的根拠
任意同行とは、犯罪捜査のために警察官に認められた権限のひとつです。警察官職務執行法第2条には、以下のように定められています。
【警察官職務執行法 第2条】
1 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、もしくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者または既におこなわれた犯罪について、もしくは犯罪がおこなわれようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。
2 その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、または交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に附近の警察署、派出所または駐在所に同行することを求めることができる。
この条文のうち、第1項が「職務質問」の法的根拠で、第2項が職務質問に付随して行われる「任意同行」の法的根拠です。
まず、警察官は、これから起こるかもしれない犯罪またはすでに起こってしまった犯罪の被疑者や関係者に対して声をかけて停止させ、その場でその犯罪についての質問をすることが許されています。これが「職務質問」です。
そして、職務質問をする際、その場で行うと対象者が衆人環視の目に晒されてしまったり、交通の妨げになってしまったりする場合は、警察署や交番など最寄りの警察施設への同行を求めることも許されています。これが「任意同行」です。 -
(2)任意同行の流れ
任意同行は、街頭での職務質問に付随しておこなわれるパターンが一般的ですが、ほかの場面でも任意同行を求められることがあります。
たとえば、犯罪の被疑者としてすでに容疑が固まっており、あとは被疑者本人の取り調べが残されているのみという状況では、自宅や職場などに警察官が訪ねてきて任意同行を求められることもあるでしょう。 -
(3)任意出頭との違い
任意同行とよく似た用語に「任意出頭」があります。
任意出頭とは、犯罪捜査のため、被疑者や関係者を取り調べる必要があるときに、警察施設や検察庁への出頭を求めることをいいます(刑事訴訟法198条、同223条)。
任意出頭は、警察官や検察官などから電話や手紙による呼び出しがされ、それに応じて自分から出頭することになります。また、原則として、任意出頭を求められた被疑者または関係者は、出頭を拒み、または出頭後いつでも退去することができます。
警察官が同行するのではなく、自ら出頭するという点で、任意同行よりも緊急性が低い場面で利用される方法といえるでしょう。
2、任意同行は「任意」なので拒否できる
警察官に任意同行を求められても、仕事へ向かう途中であったり、その日は別の用事があったりするため、応じるのが難しいことも多いはずです。
任意同行を求められた際に「仕事があるので」「別の用事があるので」と拒否しても問題はないのでしょうか?
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(1)任意同行は拒否できる
任意同行は、あくまでも「任意」によるものです。強制的な手続きである逮捕と異なり、拒否することは可能です。
ですので、任意同行を拒否したとしても違法ではありませんし、それだけで刑罰を受けるわけでもありません。 -
(2)むやみに拒否しても逃れるのは難しい
しかし、警察官は、犯罪捜査のために任意同行を求めていますので、単に「行きたくない」「別の用事がある」といった理由で拒否しても、その場を逃れるのは難しいでしょう。
単なる目撃者や参考人として任意同行を求められた場合であれば、「後で出頭する」と言って連絡先を伝えておくことで、任意同行を拒否できる可能性があります。
ただし、犯罪の嫌疑をかけられている状態で任意同行を求められた場合、拒否することによって、嫌疑が深まってしまう危険があります。
嫌疑が深まるほど、その場からの解放は困難になりますし、加えて、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されてしまえば、職務質問で時間稼ぎをされているうちに逮捕状を請求され、逮捕されてしまうおそれもあります。
確かに任意同行を拒否することに法律的な問題はありませんが、犯罪の嫌疑がかけられている状態でやみくもに任意同行を拒めば、むしろ逮捕されるなどの不利な状況になってしまうかもしれないことを心得ておきましょう。
3、任意同行に応じたら必ず逮捕される?
ニュースなどで報道される事件では、任意同行の後に逮捕される事例が目立ちます。
そのため、任意同行に応じると必ず逮捕される、という認識をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。
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(1)疑いが晴れれば逮捕されない
警察官が任意同行を求めるのは、犯人または事情を知っていると思しき人物から詳しく話を聞くためです。他方、逮捕は、被疑者が犯罪を行った疑いが相当程度ある場合にとられる捜査手続きです。したがって、任意同行に応じたとしても、警察署で事情を説明することにより犯罪の嫌疑を晴らすことができれば、逮捕されることはありません。
近しい場所・時間帯で事件が発生し、目撃者が供述した人相や着衣といった特徴と自分の特徴が似ていたために任意同行を求められたとしても、いわゆるアリバイなどを詳しく話した結果、犯罪を行ったと疑う理由がないと判断されれば、逮捕されることなく解放されます。 -
(2)逮捕されず在宅事件として進むケースも多い
刑事事件を起こしてしまった人物が任意同行を求められた場合でも、必ずしも逮捕されるわけではありません。
刑事事件の捜査は「任意捜査」を原則としています(刑事訴訟法197条1項)。そして、逮捕することが許されるのは、原則として、その被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断された場合だけです(刑事訴訟法規則143条の3)。
したがって、そのようなおそれが認められない場合は逮捕されず、在宅のまま取り調べなどの捜査を受けることになります。
令和元年版の犯罪白書によると、平成30年中に検察庁へ送致された事件のうち、逮捕によって身柄を拘束されたまま送致された事件の割合を示す身柄率は36.1%でした。
この数字をみると、任意同行を求められ、取り調べなどによって犯罪の容疑が固まってしまったとしても、逮捕される割合は決して高くないということがわかります。
4、任意同行への不安は弁護士へ相談を
任意同行を求められてしまうと、誰でも不安になってしまうのは仕方がありません。任意同行を求められて取り調べを受けた後に帰宅を許された場合でも、「これからどうなってしまうのだろう」と強い不安を感じてしまうでしょう。
任意同行に関して疑問や不安を抱えているなら、弁護士への相談をおすすめします。
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(1)任意同行や取り調べの同行が可能
刑事事件を起こしてしまい、任意同行を求められる可能性があるという方は、事前に弁護士に相談しておくのがおすすめです。弁護士に相談してサポートを依頼しておけば、不意に任意同行を求められた際でも、連絡ひとつでどう対応すればいいのかを相談することができます。
任意同行の際におこなわれる取り調べに付き添うことも可能なので、違法な取り調べや不当な扱いの抑止も期待できるでしょう。 -
(2)逮捕・刑罰の回避に向けたサポートが可能
任意同行を求められたからといって必ず逮捕されるとは限りません。とはいえ、逮捕するか、それとも在宅事件として処理するかを判断するのは捜査機関ですので、安心はできません。
逮捕されてしまった場合、捜査の必要に応じて、逮捕・勾留の期間を合計した最長23日間におよぶ身柄拘束を受けます。仕事や学校に行くことだけでなく、家族や友人・知人などに連絡を取ることさえ許されません。
更に、検察官が起訴に踏み切った場合は、被告人として刑事裁判にかけられてしまい、有罪判決が下されれば刑罰を受けます。
逮捕・勾留による身柄拘束や刑罰を受けてしまう事態を回避するには、弁護士による弁護活動が必須です。身柄拘束を必要としないことを証明する証拠を集めて捜査機関に主張する、被害者との示談交渉を進めるといった弁護活動によって、逮捕や刑罰の回避に向けたサポートが得られます。
5、まとめ
任意同行はあくまでも「任意」の捜査なので、これを拒否することに法的な問題はありません。ただし、任意同行を求められるには犯罪の容疑をかけられているなど特別な事情があるはずなので、むやみに拒否しても容疑が深まり逮捕の可能性を高めてしまうだけです。
刑事事件を起こしてしまい任意同行を求められるおそれがある、任意同行を求められて取り調べを受けたがその後の展開がわからないといった不安を感じている方は、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスへご相談ください。
刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が状況を詳しくうかがい、任意同行を求められた際の対応や事件の今後の流れなどについてアドバイスします。
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