サイバー犯罪に加担!? 詐欺サイト制作ではどのような罪に問われるのか?
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令和3年3月に警察庁が発表した資料によると、令和2年の新型コロナウイルス感染症に関連するサイバー犯罪が疑われる事案は、詐欺や不審メール、不審サイトなどで887件にのぼりました。
もしあなたが詐欺サイト制作などのサイバー犯罪に加担してしまった場合、どのような罪に問われるのでしょうか。
本コラムでは、サイバー犯罪に対して科される可能性がある罪と、もしサイバー犯罪に加担してしまった時に取るべき方法について、ベリーベスト法律事務 新宿オフィスの弁護士が解説します。
1、サイバー犯罪とは
サイバー犯罪とはコンピューターネットワーク上で行われる犯罪を総称したものであり、ネット犯罪ともいいます。
インターネットやハード機器の普及・高度化にともない、サイバー犯罪とよばれるものは年々多様化しています。代表的な例は、以下のとおりです。
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(1)コンピューターを利用した犯罪
- 第三者のホームページを改ざんしたり、消去する。
- 大量のEメールを送り付け、サーバーをダウンさせる。
- 銀行や証券会社のオンラインシステムを、不正に操作する。
- 第三者のアカウントなどを入手し、住所や氏名など個人情報を改ざんする。
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(2)ネットワークを利用した犯罪
- 第三者を脅迫したり、恐喝するようなEメールを送り付ける。
- 掲示板に特定の第三者を誹謗中傷する内容を書き込んだり、ホームページに掲載する。
- 金銭をだまし取る目的で、販売サイトを運営する。
- インターネット上で大麻や覚せい剤、無修正ポルノなどを販売する。
- インターネット上で違法賭博、ねずみ講などを勧誘する。
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(3)不正アクセスに関する犯罪
- 第三者のコンピューターに不正に侵入する行為。
- 第三者のEメールアドレスやHTTP cookieなどの識別子を頒布する行為。
2、サイバー犯罪は問われる罪が多数
サイバー犯罪の多様化と複雑化にともない、各種法律も整備され罰則は多様化しています。以下では、サイバー犯罪において問われる罪の一例についてご紹介します。
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(1)不正アクセス禁止法違反
不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)第2条第4項によりますと、不正アクセス行為とは以下の3つをいいます。
- インターネットやLANなどの電気通信回線を通じて、アクセス制御機能を持つパソコンなどの電子計算機にアクセスし、第三者のパスワードや生体認証など識別符号を入力して認証させ、アクセス制御機能により制限されている機能を利用可能な状態にする行為。
- インターネットやLANなどの電気通信回線を通じて、アクセス制御機能を持つパソコンなどの電子計算機にアクセスし、本来の識別符号以外の情報や指令を入力し、アクセス制御機能を作動させて、アクセス制御機能により制限されている機能を利用可能な状態にする行為。
- インターネットやLANなどの電気通信回線を通じて、ほかの電子計算機からアクセスを制御されている電子計算機にアクセスし、本来の識別符号以外の情報や指令を入力し、アクセス制御機能を作動させて、ほかの電子計算機からアクセスを制御されてい機能を利用可能な状態にする行為。
つまり、不正アクセス行為とはインターネットを悪用して、アクセス制御のある他人のパソコンやスマートフォンにアクセスすることです。これに目的は関係ありません。
不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反には、同法第11条の規定により3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。 -
(2)電子計算機損壊等業務妨害罪
電子計算機損壊等業務妨害罪は、ウイルス攻撃などによって業務用のパソコンやスマートフォンなどを破壊、あるいはその記録を損壊させ、もしくはそれに虚偽の情報や不正な指令を与えるなどして誤作動などをさせることにより業務を妨害した場合に成立します。
電子計算機損壊等業務妨害罪は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます(刑法第234条の2)。 -
(3)電子計算機使用詐欺罪
電子計算機使用詐欺罪は、第三者のコンピューターやシステムに意図的に不正な情報を流して、財産上の利益を不正に得た場合に成立します。たとえば、金融機関のサイトの不正アクセスして自身の口座にお金を振り込ませる行為、インターネットの販売サイトで第三者名義のクレジットカードの情報でモノやサービスを購入することが電子計算機使用詐欺に該当します。
電子計算機使用詐欺罪は、10年以下の懲役が科せられます(刑法第246条の2) -
(4)不正指令電磁的記録に関する罪
不正指令電磁的記録に関する罪とは、正当な理由がないのにもかかわらず、第三者がパソコンなどの電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせなかったり、その意図に反する動作をさせるような不正な指令を与えるプログラミングやコンピューターウイルスなどの電磁的記録の作成・提供・使用・取得・保管を行うことをいいます。
不正指令電磁的記録に関する罪に対して科される刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です(刑法第168条の2)。
3、逮捕されるとどうなるのか
次に、逮捕されたあとの大きな流れを確認していきましょう。
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(1)逮捕
捜査や被害者の訴えにより容疑が固まると、警察や検察は、裁判所に逮捕状を発布することを請求します。この請求が認められて裁判所から逮捕状が発布されてから、被疑者として逮捕されることになります。
逮捕されると、警察署に設置されているの留置所や拘置所などで身柄を拘束されることになり、容疑を固めるための取り調べを受けます。この時点における警察での取り調べは、48時間以内と決められています。この48時間以内に警察が検察官への送致(送検)が妥当と判断した場合、送検されます。 -
(2)勾留
送検されると、検察官は送検されてから24時間以内に引き続き10日間の身柄拘束(勾留)が必要かどうかを取り調べのうえで判断します。
被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあると、検察官が裁判所に勾留請求をし、それを裁判所が適当と認めると引き続き10日間勾留され、取り調べを受けることになります。検察官が勾留期間が10日では足りないと判断した場合には、勾留期間が10日間延長されることもあります。
つまり、逮捕されてから起訴されるまで、最長23日間も身柄を拘束され続ける可能性があるのです。 -
(3)起訴
起訴または不起訴の処分は、逮捕されてから23日が経過する前に検察官が決定します。
起訴されてから刑事裁判が始まるまで、約1か月以上の期間を要することがありますが、起訴された時点で保釈が認められない場合、引き続き勾留されることになります。
刑事事件の場合、第一審(1回目の裁判)は、地方裁判所で行われます。もし第一審の判決に納得がいかない場合は高等裁判所、さらに高等裁判所の判決を不服とする場合は、最高裁判所へ上告することになります。
4、逮捕される前・逮捕された後に弁護士ができること
最後に、逮捕される前、もしくは逮捕された後に、弁護士が行えるサポートについてご紹介します。
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(1)自首
自首とは、警察や検察などの捜査機関が、サイバー犯罪の事実を把握する前、あるいは捜査機関が犯人を特定する前に、捜査機関に出頭して、「私はサイバー犯罪を行いました」と事実を申し出ることをいいます。
自首することにより、急な逮捕を避けることや刑の軽減を期待することができます。そして自首に際し、弁護士はあなたに同行することが可能です。 -
(2)示談
示談とは、当事者間の合意により争いを解決することをいいます。刑事事件の示談の場合、被害者への被害の回復とともに、被害者が加害者への処罰を求めないこと(宥恕の意思)を示談内容に含めることになります。
もちろん、示談の成立がただちに不起訴・無罪の獲得へつながるわけではありませんが、その事実が考慮され、起訴猶予や不起訴処分、あるいは略式起訴による罰金刑というような、比較的軽い処分で済む可能性が高くなります。
示談を行う場合、被害者は加害者、またはその家族と直接会いたくないケースがほとんどです。第三者である弁護士が間に入ることで、示談について話し合いを進められる可能性が高まります。 -
(3)逮捕直後の面会
一度逮捕されると、少なくても72時間が経過するまでは「接見禁止」となります。これにより、たとえ親族であろうと逮捕された人に面会することはできません。
ただ、接見禁止の期間中であろうと、弁護士は職権で被疑者と面会することが可能です。
逮捕直後のすみやかな面会により、弁護士は今後想定される取り調べの流れや黙秘権など、逮捕された人の権利に関するアドバイスを行うことができます。
5、まとめ
これまでご説明したとおり、サイバー犯罪に対して科される刑罰は、決して軽いものではありません。もしあなたがサイバー犯罪に加担してしまった時は、今後科されるであろう刑罰をできるかぎり軽くするためにも、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスでは、サイバー犯罪をはじめとする刑事事件に関するご相談を承っております。ぜひお気軽にご連絡ください。
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