器物損壊の容疑で逮捕されてしまうケースとは? 早期解決のためにできること
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令和3年4月、公園の遊具などに接着剤をまいたとして、男子高校生5人が器物損壊と建造物損壊の容疑で警視庁に逮捕された、という報道がありました。
他人の物を壊したり汚したりする行為は器物損壊罪に問われる可能性があります。器物損壊の容疑で逮捕されて有罪になると懲役刑や罰金刑などが科されます。
そこで、本コラムでは器物損壊の容疑で逮捕された場合の、罰則の詳細や逮捕後の流れ、早期解決するためにできることについて、新宿オフィスの弁護士が解説します。
1、器物損壊に該当するケースとは
まずは、器物損壊等罪の概要と罰則などを解説します。器物損壊に該当するケースしないケースなども合わせて説明してありますので、こちらで把握しておきましょう。
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(1)器物損壊等罪とは
器物損壊等罪は、刑法第261条に以下のように規定されている犯罪です。
「他人の物を損壊し、又は傷害した者は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」
器物損壊等罪は親告罪です。親告罪とは、告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪をいいます。告訴は、被害届とは異なり、単に被害を申告するだけでなく、犯人を処罰することを望む意思を含む必要があります。器物損壊罪の場合、壊された物の所有者の告訴が、検察官が被疑者を起訴するための条件になります。
器物損壊容疑で逮捕される場合、器物損壊を行っている最中に逮捕される「現行犯逮捕」と、しかるべき捜査の後に逮捕状が発布され逮捕される「通常逮捕」の2つの可能性があります。
器物損壊等罪は、犯行当時に事件が発覚しなくても、後日、所有者の申告により捜査が開始され、犯人が特定される可能性があるので、その場で逮捕されなければ今後も逮捕されないと考えることは早計です。 -
(2)器物損壊に該当するケース、しないケース
次に具体例を挙げながら器物損壊に該当するケースとしないケースについて、解説します。
●故意ではない場合
器物損壊罪は、簡単に言うと「わざと他人のものを壊した場合」に成立します。したがって、わざとではなく不注意で壊してしまった場合は、器物損壊罪は成立しません。
たとえば、「店舗で商品の食器をうっかり落として割ってしまった」、「自動車のドアを開けるときに誤って隣の車のドアにぶつけてしまった」などのケースは、器物損壊罪に問われることはありません。しかしながら、民事上の責任として壊してしまった物に対する損害賠償義務を負うことになりますので、所有者と話し合いの上、現状復帰に必要な金額を支払うことになります。
もっとも、飲酒運転によって、他人の家を破壊してしまったなど、運転者に重大な過失があって他人の建造物を破壊してしまった場合は、道路交通法の「運転過失建造物損壊罪」に問われる可能性があります。運転過失建造物損壊罪で有罪になった場合は6ヶ月以下の禁錮または10万円以下の罰金が科されます。もちろん、刑事罰と合わせて、壊してしまった建物の損害賠償義務も負わなければなりません。
●記憶がないほど酔っていた場合
刑法第39条によって、「心神喪失者の行為は、罰しない」と規定されています。ただし、酔っていたことを理由にしても、心神喪失に該当するとはみなされないケースの方がほとんどです。飲んでいて記憶がないと主張したとしても、罪を免れる可能性は低いと言えるでしょう。
●子どもが壊してしまった場合
刑法では14歳未満の少年は罰しないと定められています。
14歳以上の少年であれば少年事件として、家庭裁判所で今後の処遇が決められることになります。
他方、14歳未満の少年が他人の物を壊しても、逮捕されたり懲役刑や罰金刑などに処されたりすることはありません。しかし、14歳未満の少年であっても、児童相談所が少年を家庭裁判所の審判に付することが適当であると認めた場合には、少年を家庭裁判所に送致することになります。家庭裁判所に送致されて以降は、14歳以上の少年事件とほぼ変わらない流れとなります。
なお、親が14歳未満の少年に、他人の物を壊すように指示した場合は、指示した親に器物損壊罪が成立する可能性があります。また、14歳未満の少年でも物を壊せば、刑事責任は負いませんが、被害者に対して民事上の損害賠償責任は負います。
●ペットが壊してしまった場合
ペットが他人の物を壊した場合は、ペット自身や飼い主が器物損壊罪に問われ、刑事罰を受けることはありませんが、飼い主が民事上の損害賠償責任を負うことはあります。ただし、飼い主がペットをけしかけて、わざと物を壊させた場合は、器物損壊罪に問われる可能性があります。
●身内の物を壊してしまった場合
家族や親族の物をわざと壊した場合も、器物損壊罪が成立する可能性があります。ただし、前述したとおり、器物損壊罪は親告罪であるため、身内の方が警察に届け出なければ罪に問われることはありません。
●壊そうとして壊れなかった場合
器物損壊罪に未遂罪はありません。したがって、壊そうとして壊れなかった場合は、罪は成立しません。ただし、少しでも傷がついている、汚れて元に戻らなくなった、などの場合は器物損壊罪が成立する可能性があります。
2、器物損壊事件の早期解決のために
続いて、器物損壊罪に該当する行為をしてしまった場合、器物損壊罪の容疑で逮捕されてしまった場合、などの早期解決の方法を解説します。
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(1)示談交渉
前述の通り、器物損壊等罪は親告罪であるため、被害者と示談を成立させて、告訴状を取り下げてもらえれば、罪に問われることはありません。したがって、早期解決を求めるのであれば、逮捕される前・逮捕された後にかかわらず、速やかに被害者との示談に着手する必要があります。
器物損壊における示談は、壊れたもの、汚したものを現状復帰するための費用を示談金として支払うことになります。民法において、原則「物」には慰謝料の支払いは発生しないと考えられているため、壊れてしまったものの時価額を限度に賠償することになります。しかし、時価額以上を任意で支払うことになるケースは少なくないでしょう。たとえば、壊れてしまったものが被害者にとって愛着がある物の場合や、被害者感情が強く示談が難しい場合には、慰謝料を上乗せしなければ示談できないケースも多々あります。
示談は、被害者と加害者が直接行うこともありますが、多くの犯罪被害者は被害者感情が強いので当事者同士ではうまく話がまとまりにくいものです。早期解決を目指すためにも、交渉の経験が豊富な弁護士に示談の代行を依頼することを強くおすすめします。
早期に示談が成立して被害者に告訴状を取り下げてもらえれば、起訴されないだけでなく、身柄拘束されている場合は釈放される可能性が高まります。釈放されれば、早期に社会生活への復帰が可能になるでしょう。 -
(2)早期釈放を目指す
器物損壊で被疑者が逮捕された場合、警察は48時間以内に被疑者を釈放するか、事件を検察官に送致します。検察官は被疑者を受け取ってから24時間以内に被疑者を釈放するか、裁判官に勾留請求します。被疑者が勾留されるとその後最大20日間も身柄拘束が続きますので、勾留されないための弁護活動が必要です。
そもそも、勾留とは、証拠隠滅や逃亡の恐れがあるとき、住所が不定のときなどに取られる措置です。器物損壊の場合、器物損壊の事実を認めて反省の態度を示していること、定職に就いていること、きちんと住まいがあること、などを主張することで、勾留を回避できる可能性があります。身柄拘束の影響を最小限に抑えるために、早期に弁護士に依頼して、勾留回避のための弁護活動を開始してもらいましょう。 -
(3)不起訴の獲得を目指す
日本では、起訴されてしまうと99.9%が有罪となります。したがって、起訴を回避するために示談を進めなければなりません。器物損壊等罪においては、示談を成立させて告訴状を取り下げてもらえれば、検察は起訴ができなくなります。
3、器物損壊を否認する場合
身に覚えがない器物損壊の容疑で逮捕された場合は、早急に弁護士に弁護を依頼しましょう。
ただし、通常逮捕された場合は、警察も器物損壊の証拠を確保した上で逮捕していると考えられます。無実を主張するのは非常に困難です。また、起訴された場合の、有罪率は非常に高く裁判で無罪を勝ち取ることは難しいので、起訴前に、証拠不十分による不起訴処分などに持ち込む必要があります。
また、取り調べで不利益な供述をして供述調書に記録されてしまうと、裁判で証拠として扱われてしまいます。逮捕されたら、すぐに弁護士に弁護を依頼し、適切な助言を受けたほうがよいでしょう。
4、まとめ
故意に他人の物を壊した場合は、器物損壊罪に問われる可能性があります。器物損壊罪は親告罪ですので、示談を成立させれば、早期の社会復帰も可能です。
まずは、被害者との示談を弁護士に依頼しましょう。ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスでは、器物損壊罪で逮捕された方やそのご家族からのご相談を広く受け付けております。まずはお気軽にお問い合わせください。逮捕の影響を最小限にすべくサポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています