窃盗の手助け(幇助)をするとどうなる? 関わった人も逮捕される?

2021年07月01日
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窃盗の手助け(幇助)をするとどうなる? 関わった人も逮捕される?

東京都を管轄する警視庁の統計によると、令和元年度の窃盗犯の認知件数は7万3988件、窃盗犯の検挙件数は3万4309件、検挙人員は2万4902人でした。警視庁の過去の統計と比較すると、他の刑法犯と同様に窃盗犯についても年々減少傾向にあることがわかります。

窃盗とは、他人の財物を盗む犯罪ですが、実際に自分が窃盗をしたわけではなくても、友人や知人が窃盗をするのを手伝ったという場合にも逮捕される可能性があります。法律上は、直接窃盗行為をする人を正犯、手伝いをした人は幇助犯と呼び区別されています。窃盗の幇助犯とはどのような場合に成立し、逮捕された場合にはどのような流れで進んでいくのでしょうか。

今回は、窃盗の幇助について、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。

1、窃盗の「幇助犯」とは

「幇助犯」という単語は普段の生活では聞きなれない言葉です。

以下では、幇助犯とはどのようなことを指すのか、どのような場合に窃盗の幇助犯が成立するのかを説明します。

  1. (1)幇助犯とは

    幇助犯とは、実行行為以外の方法で正犯者の実行行為を容易にさせることをいいます(刑法62条1項)。正犯者とは、実際に犯罪行為に及んだ人をいい、実行行為とは、窃盗罪でいうところの物を盗む行為のことです。

    すなわち、幇助犯は、犯罪の実行犯の手伝いや手助けをしたことによって成立する犯罪のことをいいます

  2. (2)幇助犯の処罰

    幇助犯でも犯罪は成立しますが、犯罪の直接的な行為をしたわけではないため、実際に犯罪を行った正犯者よりも刑は軽くなっています。

    刑法では、「従犯の刑は、正犯の刑を減軽する」と規定されおり(刑法63条)、減軽の方法については、刑法68条によって、「有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる」「罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の二分の一を減ずる」と規定されています

    そのため、窃盗罪の法定刑が「十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」であることからすると、窃盗幇助犯は、減軽により5年以下の懲役または25万円以下の罰金の範囲で処断されます(ただし酌量減軽がない場合)。

  3. (3)窃盗の幇助犯の具体例

    窃盗の幇助犯は、物を盗む行為をする正犯者の手伝いや手助けをすることによって成立します。その具体例としては、以下のものが挙げられます。

    • 正犯者を犯行現場まで案内すること
    • 正犯者が窃盗行為をしている間、周囲を見張っているたこと
    • 正犯者に対して犯行現場のセキュリティ対策などを教えてあげること
    • 正犯者にバールなどの犯罪行為をするための道具を貸し与えること
    • 正犯者を励まして犯罪行為をさせること


2、幇助犯の成立要件について

刑法上は、「正犯を幇助した」場合が幇助犯であると規定するだけで、具体的な要件については記載されていません。そのため、幇助犯の成立要件については、判例や学説などによって、以下のように考えられています。

  1. (1)幇助行為

    幇助犯が成立するためには、幇助犯によって幇助行為がなされたことが必要です。

    幇助の方法については、特に制限はありませんので、凶器や金銭の貸与、犯行現場への案内といった物理的な方法による幇助だけでなく、助言や激励といった精神的な方法による幇助も含まれます

  2. (2)幇助の故意

    幇助犯が成立するには、幇助行為の結果、正犯者の犯罪行為が容易になるということを認識していることが必要になります

    たとえば、知人に頼まれて工具を貸したところ、それが犯罪行為に利用されたとしても、貸した本人が犯罪行為に利用されることを認識していなかったときには幇助犯は成立しません。

  3. (3)正犯者による実行行為

    幇助犯による幇助行為がなされたとしても、正犯者による実行行為の着手がなければ幇助犯は成立しません。

    たとえば、空き巣のための道具としてバールを提供していたとしても、正犯者が思いとどまって空き巣を行わなければ幇助犯として処罰されることはありません。

  4. (4)幇助の因果関係

    幇助犯は、幇助行為が正犯者の実行行為を容易にしたというような関係がなければ成立しません。これを幇助の因果関係といいます。

    幇助の因果関係としては、幇助行為によって正犯者の実行行為が物理的・心理的に容易になったといえれば足りると考えられています。

3、窃盗するようにそそのかした場合は?

窃盗の手助けではなく、窃盗をするようにそそのかした場合には、幇助犯ではなく教唆犯が成立する可能性があります。以下では、教唆犯について説明します。

  1. (1)教唆犯とは

    教唆犯とは、他人をそそのかして、犯罪を実行する決意をさせることをいいます(刑法61条1項)。教唆行為については、特に手段や方法の制限はありませんので、明示的な方法だけでなく黙示的な方法による教唆も含まれます。

    教唆犯の具体例としては、犯罪方法や手口を教えることによって、正犯者に犯罪実行の決意をさせることが典型的な例です。ただし、単に「何か犯罪をしてこい」というものでは足りず、「○○を殺してこい」、「○○を盗んでいこい」といった具体的な内容であることが必要になります。

  2. (2)幇助犯と教唆犯の違い

    幇助犯と教唆犯は、どちらも直接犯罪行為をしないという共通点があります。

    しかし、幇助犯は、すでに犯罪行為を決意した人に対して、その犯行を容易にさせる犯罪類型であるのに対して、教唆犯は、いまだ犯罪行為の決意をしていないに人に対して、犯罪の実行を決意させるという違いがあります

    そのため、幇助犯と教唆犯は、正犯者に犯罪行為の決意を生じさせたかどうかによって区別されることになります。

4、窃盗の幇助で逮捕された場合の流れ

窃盗の幇助犯は、直接窃盗行為をしたわけではありませんが、正犯者と同様に逮捕される可能性のある犯罪類型です。窃盗の幇助で逮捕された場合には、以下のような流れで刑事手続きが進むことになります。

  1. (1)逮捕・取り調べ

    窃盗の幇助で逮捕された場合には、警察官によって身柄が拘束され、警察署で窃盗事件に関する取り調べが行われることになります。犯行に至った経緯や動機、共犯者との関係などについて詳しく取り調べられることになります。

    法律上、警察は、逮捕から48時間以内に検察官に送致するかを決めなければなりません。そして、警察から送致を受けた検察官は、さらに被疑者の取り調べを行ったうえで、送致から24時間以内かつ逮捕から72時間以内に、被疑者の身柄を解放するか、勾留を請求するかを決めなければなりません。

  2. (2)勾留

    検察官が勾留請求をして、裁判所が勾留を認める決定をした場合には、その後10日間の身柄拘束が継続することになります。勾留中は、引き続き取り調べが行われ、実況見分などを行うなどして犯行状況を明らかにしていくことになります。

    勾留については、延長をすることが認められていますので、検察官が勾留延長請求を行い、裁判所が勾留延長を決めた場合には、さらに最大で10日間の身柄拘束が継続することになります。

    そのため、逮捕されてからの身柄拘束期間は、最大で23日間にも及ぶことがあります。窃盗の幇助犯は、直接の実行行為をしたわけではありませんが、共犯者である以上、口裏合わせや証拠隠滅を防止するために正犯者と同様に長期間の身柄拘束になる可能性も十分にあります

  3. (3)起訴または不起訴

    検察官は、勾留期間の満了までに、窃盗の幇助をした被疑者を起訴するかを決めなければなりません。起訴された場合には、保釈をされない限りは、そのまま裁判が終了するまで身柄拘束が継続することになります。

    仮に、不起訴処分となったときには、その時点で事件が終了しますので、釈放されることになります。不起訴処分になれば、たとえ逮捕されたという事実があっても前科になることはありません。

5、弁護士がサポートできること

窃盗の幇助犯で逮捕されたときには、早期に弁護士に相談するようにしましょう。

  1. (1)被害者との示談交渉

    窃盗事件は、被害者が存在する犯罪ですので、早期の釈放や有利な処分の獲得を目指すのであれば、被害者との示談を早期に成立させることが重要となります

    窃盗事件は、被害者が被った金銭的な損害を回復することによって、被害の回復を図ることが可能です。しかし、犯罪被害にあった方は、加害者に対する恐怖や恨みからなかなか示談に応じてもらえないこともあります。加害者自身やその家族が被害者と交渉をしようとしても拒否されてしまうことも珍しくありません。

    そのような場合には、弁護士が被害者との交渉を行うことによって、示談を成立させることができる可能性が高まります。弁護士は、交渉の専門家ですので、被害者の被害感情に配慮した交渉を行うことが可能ですし、被害者としても弁護士が窓口になってくれる方が安心といえます。

    早期に示談を成立させることによって、検察官の不起訴処分の判断や裁判官の量刑判断でも有利に働くことになりますので、早めに弁護士に相談をするようにしましょう

  2. (2)取り調べに対するアドバイス

    被疑者が逮捕中に面会することができるのは、弁護士だけです。多くの方は、これまでの人生の中で警察に逮捕されたり、取り調べを受けるという経験がないため、突然逮捕されてしまうと非常に不安な気持ちになります。

    取り調べにおいて事実と異なる内容の調書がとられてしまうと、後日それを覆すのは非常に困難になってきますので、早期に弁護士によるアドバイスを受けることが重要となります。弁護士による面会は、法的なアドバイスを受けることができるだけでなく、被疑者本人にとっては精神的な支えにもなります。

    逮捕された方のご家族は、早めに弁護士に相談をし、面会の依頼をするようにしましょう。

6、まとめ

窃盗行為を手伝ったり、助言をしただけであっても窃盗の幇助犯として逮捕され、起訴される可能性があります。安易に犯罪行為に手を貸すことがないようにすることが何よりも大事ですが、仮に窃盗の幇助行為をした場合であっても、弁護士による適切なサポートを受けることによって、不利益を最小限に抑えることが可能になります。

窃盗の幇助をしてしまった方や幇助犯として逮捕された方のご家族は、早めにベリーベスト法律事務所 新宿オフィスまでご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています