身内が詐欺で逮捕。 家族にできることは? 新宿の弁護士が回答します
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令和3年6月16日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う特例貸付金「緊急小口資金」をだまし取ったとして、暴力団組員の男が新宿区内で逮捕されました。
詐欺被害は毎年多く報告されていますが、加害者としてある日突然身内が逮捕されてしまったら家族には何ができるでしょうか。
本コラムでは、逮捕後にどのようなことが起こるのか、また家族はどのような対応をするべきなのか、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。
1、たくさんある詐欺の種類
詐欺とは、他人の財産をだまし取ることを言います。結婚詐欺、フィッシング詐欺、オレオレ詐欺など、さまざまな詐欺を耳にしたことがあるかと思います。相手の不安をあおり、発生していない料金を要求する架空請求も詐欺のひとつです。
昨今では、架空の暗号資産事業への投資話を持ち掛けお金をだまし取る仮想通貨詐欺が増加しています。また、オレオレ詐欺や還付金詐欺などの振り込め詐欺が依然として横行するなど、巧妙な手口でお金をだまし取る詐欺は残念ながら未だ数多く存在しています。
また、昨今の詐欺は、大規模な組織によって行われることが多いのが特徴的です。実行犯は組織の末端人物であり、アルバイト感覚で雇われた10~20代の若者が、犯罪の自覚のないまま詐欺行為に加担してしまう場合もあります。
2、詐欺罪の量刑は?
詐欺罪の刑罰は、刑法246条により10年以下の懲役と定められています。ただし、複数の詐欺を行っていた場合や、組織的犯罪に関与していた場合には刑罰が加重されることもあるので注意が必要です。
また詐欺罪には罰金刑はなく、有罪判決を受ければ必ず懲役刑になります。また、犯行の途中で逮捕された場合など、実際に相手のお金などを受け取ることができなくても、詐欺未遂罪として罪に問われる可能性があります(第250条)。たとえば、相手がお金を準備しようとした最中に、銀行員などが気付いて通報し逮捕された、などのケースが代表的です。
上記のように、詐欺罪は重い罪であると言えます。しかし、初犯である、示談が成立している、被害額の程度が軽い、などの個別的事情がある場合には執行猶予がつく可能性があります。
3、逮捕後の流れ
詐欺罪で逮捕された場合、その後、どのような手続きがあるのでしょうか。どの程度の期間身柄が拘束されてしまうのか、家族として面会できるのか、などのことが気になるでしょう。ここでは、逮捕されてから有罪・無罪が決まるまでの流れをご説明します。
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(1)警察による逮捕と取り調べ
詐欺罪で逮捕されると、まず警察での取り調べが始まります。
そもそも逮捕とは、逃亡や証拠隠滅の可能性がある場合に身柄拘束を行うことが認められる措置です。警察に逮捕された場合は、最長48時間ものあいだ、帰宅することはもちろん、会社や友人に直接連絡をとったり、家族と面会して話をしたりすることができません。
なお、逮捕は原則、以下のような状況があるとき、行われることになります。- 被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある
- 被疑者が住所不定なときや、正当な理由なく出頭の求めに応じない
- 逃亡や証拠隠滅の危険性がある
- 裁判所が発行する逮捕状がある
ただし、現行犯逮捕や緊急逮捕など、逮捕状がなくても逮捕されることがあります。詐欺事件の場合は、現金や通帳を受け取りに行った受け子が通報を受けた警察に現行犯逮捕されるケースなどが考えられるでしょう。
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(2)検察での取り調べと勾留
検察官は、再度取り調べを行い、起訴をするか不起訴とするかを決定します。しかし、検察は、送致を受けてから24時間までしか身柄の拘束を行えません。多くの場合、24時間の捜査だけでは起訴するかどうかまで決めることは難しいです。
そのため、被疑者が証拠隠滅をしたり逃亡したりする危険性がある場合、検察は裁判所に勾留請求をします。裁判所が勾留を認めると、被疑者は最長20日間ものあいだ、身柄の拘束を受けたまま取り調べが行われることになります。
したがって、逮捕されてから換算すると、最長23日間も身柄を拘束されてしまう可能性があるのです。勾留が続けば当然、会社や学校を休み続けることになります。その影響を最小限にするには、検察が勾留請求をする前に、弁護士に依頼して弁護活動を始められているかが非常に重要な鍵となります。
なお、逮捕されてから送致を受け、勾留の可否が決定するまでの合計72時間は、家族であっても自由に面会することができません。しかも、詐欺事件の場合は組織的な犯罪であるケースも多いことから、勾留されてからも接見禁止の制限を受けることがあります。
弁護士は、逮捕期間中や接見禁止期間中であっても、時間や回数にとらわれず被疑者と接見することができる唯一の存在です。 -
(3)起訴・不起訴の決定と刑事裁判
検察での捜査の末、被疑者を起訴するか、不起訴処分にするかの判断が下されます。起訴とは、検察から裁判所へ「この被疑者は刑事裁判を受ける必要があります」と訴えを起こすことです。
ここで不起訴となった場合は、刑事裁判が開かれることもなく、直ちに釈放されます。警察や検察で取り調べを受けたという前歴は残りますが、前科がつくことはありません。
しかし、起訴されると、被疑者と呼ばれる立場から被告人と呼ばれる立場に変わり、刑事裁判が始まります。起訴された後も身柄の拘束を受けている場合は、裁判が終わるまで引き続き身柄の拘束が続くことになるため、保釈を請求するケースが多いでしょう。
裁判にかかる期間は、事件の内容によって大きく異なりますが、最終的には有罪か無罪かの判断が下され、有罪の場合は量刑が決定されます。
なお、日本の刑事裁判では、起訴後の有罪率は99%を超えるとも言われています。詐欺罪は計画性が高く悪質と判断される傾向がありますので、たとえ末端の関与者(オレオレ詐欺の受け子など)だったとしても、実刑を含めた重い判決が出ることも珍しくありません。
4、示談について
刑事事件における示談では、被害者に対して謝罪するとともに賠償を行い、被害者から宥恕文言(ゆうじょもんごん。許したという意味の言葉)を得ることを目指します。なぜなら、示談が成立していれば、当事者間において事件が解決したといえるからです。よって、多くの場合、示談が成立しているかどうかが、検察官の起訴・不起訴の判断に大きく影響します。
先ほども述べたように、日本の刑事裁判ではいったん起訴されると無罪となることは大変難しいため、示談を成立させ、不起訴処分となる可能性を高めておくことがとても重要になります。
さらに、起訴されてしまったとしても、示談が成立していれば量刑が軽くなる可能性が出てきます。特に詐欺罪の被害者は何よりも被害回復を望むものです。だまし取った金銭を返還し示談を成立させることは、処分決定において大きな意味を持つでしょう。
5、家族にできること
前述した通り、逮捕後は速やかに弁護活動を開始することが大切です。家族が逮捕されてしまったら、可能な限り早く弁護士に刑事弁護の依頼をしましょう。
警察・検察との折衝には豊富な法律知識や刑事事件の経験が不可欠であり、被疑者本人や家族が警察・検察との折衝をすることは容易ではありません。刑事弁護を弁護士に依頼することで、長期間の勾留及び前科がつくことを回避できる可能性が高まると言えるでしょう。さらに、弁護士なら逮捕後72時間以内でも身柄拘束されている被疑者と自由に面会ができるため、家族からの言葉を伝えたり、差し入れをしたりすることを通して、被疑者の心身のケアにも役に立ちます。
また、被害者の心理として加害者本人やその家族からの直接交渉には嫌悪感を抱き、交渉に応じてくれないことがほとんどです。こういった感情を取り除きスムーズな交渉をするためにも、弁護士の存在は大きいと言えるでしょう。
6、まとめ
詐欺罪のような刑事事件は時間との勝負です。あなたのお身内が詐欺の容疑で逮捕されてしまった場合、早い段階で弁護士のサポートを受けられなかったことによって警察・検察で不利な調書を作られてしまい、冤罪となってしまうケースも珍しくありません。
大切な人が詐欺罪で逮捕されてしまい不安な方は、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスにご相談ください。新宿オフィスの弁護士が、親身になって対応します。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています