InstagramなどSNSへわいせつな画像を投稿したら犯罪? 問われうる罪
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令和5年8月、女児を盗撮した動画をSNSなどを通じて共有していた男が逮捕される事件が報道されました。Instagram(以降「インスタ」)やX(旧Twitter)などSNSの流行で誰でも気軽に写真や動画を投稿し、不特定多数の人と共有できる時代になりました。しかし、一歩使い方を間違えると、あなたも犯罪者になる可能性があります。
本コラムでは、インスタをテーマに、わいせつ画像の掲載で問われる罪から、拡散、わいせつ画像の保存など、SNSを利用するときの注意点をベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。
1、インスタにわいせつ画像を載せるのは犯罪?
「わいせつな行為」とは、「徒らに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ、一般人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」をいいます。
こうしたわいせつな行為の画像や写真を投稿することでどんな罪に問われるのでしょうか。
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(1)インスタにわいせつ画像を載せたときに問われる罪は?
可能性が高いのは、刑法175条で定められた「わいせつ物頒布罪」です。刑法175条1項では、以下のように定義されています。
- わいせつ物頒布罪……わいせつな文書、図画、記録媒体などを頒布、または公然と陳列すること。電気通信の送信により、わいせつな電磁的記録などを頒布することも同様
- 法定刑……2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料。または懲役および罰金を併科
つまり、わいせつ画像を不特定または多数の人が閲覧・再生・入手できる状態にした場合、「わいせつ物頒布罪」が成立します。
なお、不特定または多数の人とは、見知らぬ人だけではありません。自分のフォロワーしか見ることのできないアカウント非公開の設定でわいせつ画像を公開した場合であっても、わいせつ物頒布罪が成立することがあります。
罪にこそ問われていませんが、プロ野球の若手選手が全裸で飲酒している画像をSNSに公開し、球団から処分を受けたというケースもありました。フォロワー限定での公開とはいえ、多くの専門家が「わいせつ物頒布罪にあたりうる」と指摘し、単なる悪ふざけでは済まされない事態になりました。 -
(2)併せて問われる罪は?
そのほか、問われる可能性のある罪としては、以下のようなものがあります。
●児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ禁止法」)
18歳未満の児童のわいせつな画像をインターネット上に陳列した場合には、児童ポルノ禁止法違反となり、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が併科されます(児童ポルノ禁止法7条1項)。
過去に、好奇心から自分のわいせつな画像をインターネット上に陳列した16歳の少女が児童ポルノ公然陳列罪、わいせつ電磁的記録公然陳列罪の容疑で書類送検されたこともあります。
●公然わいせつ罪(刑法174条)
不特定または多数の人が認識できる状態でわいせつな行為をすることは、「公然わいせつ罪」に問われます。わいせつ動画をインターネット上で生配信した場合は、多数の人が閲覧できる状況となるため、公然わいせつ罪に問われる可能性があるでしょう。法定刑は、6月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料となっています。
●私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(以下「リベンジポルノ防止法」)
過去に付き合っていた異性や元配偶者の性的な画像や動画をインターネット上に無断で公表すると、リベンジポルノ防止法違反となります。法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。
2、わいせつ画像のアップだけじゃない、SNS利用時の注意点
SNSの危険なところは、他人が投稿したものへのリアクションも罪に問われる可能性があるという点です。
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(1)わいせつな画像の拡散やお気に入りも犯罪?
SNSならではの機能である拡散(リポスト)やお気に入りへの登録も、わいせつ物頒布罪や児童ポルノ禁止法違反にあたる可能性があります。なぜなら、拡散することによって、自分のフォロワーを含む不特定または多数の人が改めてその画像や動画を閲覧できるようになるからです。
X(旧Twitter)であれば、お気に入りへの登録もタイムラインに表示される仕様になっているので、結果として、不特定または多数の人が閲覧できてしまう状況になります。
いずれも、自分が発信して公然と陳列しているという状況を作り出していることになり、罪に問われる可能性が生じるといえるでしょう。 -
(2)インスタ上のわいせつ画像を保存するのは違法?
では、わいせつ画像を自分のスマホやパソコンのハードディスクに保存する行為はどうでしょう。原則として、私的利用目的で保存している場合は違法ではありません。しかし、有償で販売する目的で所持している場合は、わいせつ物頒布罪(刑法175条2項)に該当します。
また、わいせつ画像が児童ポルノ画像であった場合は、単に所持していただけでも「児童ポルノ単純所持罪(児童ポルノ禁止法7条1項)」に該当し、罰せられます。
自分が所持しているだけなので発覚しないだろうという考えは間違いです。違法サイトからダウンロードした際は、IPアドレスの追跡などにより捜査が進み発覚することもあります。 -
(3)インスタを通じた出会いからも事件に発展
インスタでの出会いがきっかけで事件に発展することもあります。
SNS経由で起きた事件としては、平成29年に発覚し社会に衝撃を与えた、座間市9遺体事件を覚えている方もいるでしょう。SNSを通じて出会った男女が容疑者に殺されてしまったという痛ましい事件です。わいせつ画像に関する犯罪とは内容が異なる事件ではありますが、気軽に見知らぬ方とつながることができるSNSの利点が悪用されました。
また、性犯罪関連については令和5年7月に改正法が施行されています。これに伴い、インスタなどSNSを通じて性的目的で子どもと仲良くなり、手なづけたうえでコントロールする「グルーミング」行為も規制の対象となりました。詳しくは以下のコラムをご確認ください。
【弁護士が解説】不同意性交等罪への改正で、性犯罪の規定はどのように変わるのか
「4、性的目的で子どもを手なずけてコントロールする「グルーミング」も犯罪に」
3、まとめ
SNSは身近で便利なツールである一方、使い方を誤れば犯罪にも発展します。インスタを含むSNSの機能が進歩し、あらゆるサービスが利用できるようになった反面、法的に行ってはいけない行為やその根拠規定はまだ整理されていません。いつの間にか自分が犯罪者になっていたということもありうるのです。
万が一、インスタなどSNSを利用してわいせつな画像をアップしてしまったあと、警察などから連絡がきたときは、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスまでご相談ください。インターネット犯罪に詳しい弁護士が、状況に合わせて適切なアドバイスとサポートを行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています