割り込み運転したら煽り運転として通報された! 前科がつく可能性は

2024年03月14日
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割り込み運転したら煽り運転として通報された! 前科がつく可能性は

警視庁が令和3年に実施した交通量調査の結果をみると、新宿区は東京都内でも比較的車両の交通量が多いエリアであることがわかります。やむを得ず強引な割り込みをせざるを得ないドライブシーンがあるかもしれません。他方で、警視庁が公表する統計資料「令和5年中における交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」によると、令和5年中に「追越し・通行区分」違反として取り締まりを行った件数は全国で154371件もあることがわかっています。

では、意図的ではないにもかかわらず、急な割り込みや進路変更を行ったことにより「煽り運転をされた」と通報されてしまったら、前科はついてしまうのでしょうか。本コラムでは、割り込み・急な進路変更などが「あおり運転」にあたるのか、通報されてしまった場合はどのように対応するべきなのか、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。なお、実際に警察から刑事事件の容疑をかけられてしまったときは、まず弁護士に相談してください。

1、「割り込み運転」はあおり運転にあたるのか?

法改正による厳罰化も相まって、社会の「あおり運転」に対する関心は増すばかりです。
ニュースではあおり運転で摘発された容疑者の実名が報じられ、You Tubeなどの動画投稿サイトでは個人が撮影した交通トラブルの動画が数多く公開されています。

あおり運転で摘発された事件や悪質なあおり運転の動画をみると、執拗に妨害行為をしたり、車を降りて暴力沙汰に発展したりといったケースが多いようですが、割り込み運転はあおり運転にあたるのでしょうか?

  1. (1)「あおり運転」にあたる10の行為

    あおり運転にあたるのは、道路交通法第117条の2の2第11号に示されている10の行為です。
    いずれも「他の車両等の通行を妨害する目的」があり、さらに「他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法」で次の違反行為があると、法的にあおり運転が成立します。

    • 対向車線へのはみ出しや逆走(通行区分違反)
    • 急ブレーキ(急ブレーキ禁止違反)
    • 極端に車間距離を詰める(車間距離不保持)
    • 急な進路変更(進路変更禁止違反)
    • 危険な追い越し(追い越し方法違反)
    • 執拗なパッシング(減光等義務違反)
    • 執拗なクラクション(警音器使用制限違反)
    • 幅寄せ・蛇行運転など(安全運転義務違反)
    • 高速道路での低速走行(最低速度違反)
    • 高速道路での駐停車(高速自動車国道等駐停車違反)


    そもそも、あおり運転とは、後方から追い上げた車が車間距離を詰める、執拗なクラクション・パッシングで威嚇するなどの方法で「進路を譲れ」と煽る行為を指す俗称でした。
    ここで挙げた10の行為のなかには、本来どおりの悪質な行為も含まれますが、ほかにも妨害・威嚇・嫌がらせといったさまざまな運転行為があおり運転として扱われます。

  2. (2)割り込み運転はあおり運転にあたる危険が強い

    前方や側方を走っている車の前に急な割り込みをする行為は、進路変更禁止違反(同条11号ニ)や安全運転義務違反(同条11号チ)にあたるものと考えられます
    割り込みをする前に車間距離を詰めたり、クラクションやパッシングで威嚇していたりすると、別の違反が成立するおそれもあるでしょう。

    割り込み後に急ブレーキをかけたり(同条11号ロ)、わざと低速で走行したり、進路をふさいで停止させたりする行為(第11号リ参照)もあおり運転にあたる可能性があります。

    急な割り込み運転等によって周囲の車に危険を生じさせてしまえば、あおり運転として通報され、摘発されるおそれは極めて高くなると考えるべきです。

2、あおり運転は犯罪になる! 罪名や罰則

従来、あおり運転は悪質ながらも「運転マナーの違反」という程度の評価で、積極的な取り締まりはおこなわれていませんでした。
しかし、法改正がなされた現在では、運転マナーの違反では済まされない「犯罪」として扱われます。

あおり運転はどのような犯罪になり、どのような罰が科せられるのでしょうか?

  1. (1)あおり運転は「妨害運転罪」

    あおり運転に該当する道路交通法第117条の2の2第11号に示されている違反行為は「妨害運転罪」と呼ばれます。
    通行区分違反や急ブレーキ禁止違反といった通常の交通違反ではなく、妨害運転罪という犯罪として扱われることになり、窃盗や暴行・傷害などと同じように事件としての処理が待っています。

  2. (2)妨害運転罪に対する罰則

    妨害運転罪を犯した運転手には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
    通常の交通違反では、違反切符を切られて点数を加算されたうえで反則金を納付すれば罪には問われないという「交通反則通告制度」が適用されますが、妨害運転罪はこの制度が適用されません

    また、刑罰が科せられると同時に、違反点数も加算されます。

    あおり運転の違反点数は25点なので、これまでに免許停止・取り消しなどの処分を受けたことがない方でも一発で免許取り消しになり、さらに2年間は免許の再取得が認められません。

    なお、妨害運転をして他の車を高速道路等で停止させ、道路における著しい交通の危険を生じさせた場合は5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
    さらに違反点数35点が加算され、3年間は免許を取得できません。

3、あおり運転で通報された! どうやって対応する?

急な割り込みや強引な車線変更をしてしまい、相手からあおり運転として警察に通報されてしまった場合はどのように対応すればよいのでしょうか?

  1. (1)相手がわかる場合は真摯に謝罪する

    現場で事故やトラブルになって相手と連絡先を交換していた、相手の車に会社名などが表示されていたなど、相手が特定できる状況なら、連絡を取って真摯に謝罪するのが賢明です。

    妨害目的や悪意があったわけではなくても、割り込みによって相手に不安を感じさせたり、危険の回避を強いたりしたなら、まずは怪我や車の故障などはなかったかを気遣うべきでしょう。

  2. (2)警察からの取り調べには誠実に対応する

    通報を受けて現場に急行してきたパトカーに停止を求められた、捜査によって特定され後日になって警察署への呼び出しを受けたといった状況なら、警察の要請には素直に応じましょう。

    取り調べにおいて誠実な態度で自分の主張を尽くせば、あおり運転の疑いを晴らすことができるはずです。

    割り込みが違反行為にあたる場合は切符処理を受けるかもしれません。
    しかし、通常の交通違反として点数の加算と反則金の納付を求められるだけなので、刑罰は科せられないし、ほかの違反で点数が累積していなければ免停・取り消しは受けずに済みます。

  3. (3)あおり運転ではない証拠を集める

    相手が「あおり運転を受けた!」「怖い思いをした」と警察に申告していれば、警察から厳しい追及を受けるおそれもあります。
    あおり運転ではないことを説明しても信用してもらえないかもしれません。

    自分の車のドライブレコーダーの映像を検証したうえで警察に提出する、同乗者に証言を依頼するなど、あおり運転ではないことの証拠を積極的に集めておきましょう

4、誤解で通報されたら弁護士に相談を

急な割り込みや強引な車線変更などによってあおり運転の疑いをかけられてしまった場合は、自分だけの力では解決できないケースもあります。

厳しい刑罰や多大な不自由を伴う行政処分に不安を感じているなら、すぐに弁護士に相談してサポートを求めましょう。

  1. (1)相手との和解を目指した交渉を一任できる

    誤解によってあおり運転の疑いをかけられた場合でも、急な割り込みや強引な車線変更などの違反があれば「事件性がない」とはいえません。
    なぜなら、交通違反は「道路交通法違反」という犯罪であり、あまりにも件数が多いことから簡易的に処理するために交通反則通告制度、いわゆる「切符制度」が適用されているに過ぎないからです。

    事件を穏便に解決するには、相手との和解を実現する必要があります。
    しかし、あおり運転の疑いをかけられている立場では、和解を目指した話し合いをもちかけても「脅された」などと無用なトラブルを招いてしまうかもしれません。

    相手との和解を目指した交渉は、公平・中立な立場である弁護士に一任するのが最善です
    事件化の回避を実現できる可能性が高まるのはもちろんですが、弁護士にすべての対応を任せることで、慰謝料などを含めた示談金が不当に高額化してしまう事態の回避も期待できます。

  2. (2)厳しい処分の回避を目指した弁護活動が期待できる

    あおり運転の疑いが晴れず妨害運転罪として捜査が進むと、逮捕や刑罰の危険が増します。
    割り込みをしたことは事実でもあおり運転ではないことを主張するには、客観的な証拠をもとに法的な面から「妨害運転罪は成立しない」と証明する必要があります。
    また、仮に刑事手続きが進んでも、相手との示談が成立すれば検察官が刑事裁判を見送る「不起訴処分」を下したり、裁判官が軽い刑罰を選択したりといった有利な結果が期待できるでしょう。

    妨害運転罪の容疑で逮捕や刑罰を回避するには、法律の深い知識や刑事手続きに関する経験が求められます
    直ちに弁護士に相談して、弁護活動を依頼しましょう。

5、まとめ

急な割り込みや強引な車線変更、車間距離を詰めた運転、パッシングやクラクションによる威嚇は「あおり運転」にあたるおそれがあります。
妨害目的でこれらの行為をはたらけば「妨害運転罪」として厳しい処分を受けるのは当然ですが、あおり運転に対する社会の関心が高まっているため、妨害する意図がなくても「あおり運転だ!」と通報されてしまうことがあるかもしれません。

実際に警察からあおり運転の疑いをかけられている旨の連絡が来ていて対応に困っていたり、厳しい処分に不安を感じていたりする方は、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスにご相談ください。
交通事件や刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、穏便な解決に向けて全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています