借金で家賃が支払えずに家賃を1ヶ月滞納! 家賃を任意整理したら強制退去になる?
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賃貸住宅の管理会社による協会である「日本賃貸住宅管理協会」の「賃貸住宅市場景況感調査」では平成30年4月1日から9月30日の間に、東京都新宿区を含む首都圏で家賃を滞納した入居者の割合は月初では5.8%、月末でも4%にのぼっていることがわかりました。2ヶ月以上滞納している入居者の割合は1.5%となっています。
不動産を所有している大家さんにとって、家賃滞納は死活問題です。したがって、大家さんは家賃を滞納する入居者に毅然とした対応をとります。滞納が続けば強制退去や給与の差押えをしてくる可能性もあるので、入居者は迅速に適切な対応をとる必要があります。
そこで、ベリーベスト法律事務所新宿オフィスの弁護士が、家賃を滞納した場合の対策についてわかりやすく解説したいと思います。
1、家賃滞納の許容範囲は? 何ヶ月までなら許される?
賃貸借契約は貸主と借主の信頼関係を破壊する行為があれば契約を解除できると解釈されています。そして、家賃滞納が3ヶ月以上継続し、督促しても支払いの意思がないと判断される状態が続くと、信頼関係が破壊されると一般的には考えられています。つまり、大家さんや管理会社とコミュニケーションをとることなく、一方的に家賃を滞納している場合は3ヶ月がデッドラインになる可能性が高いでしょう。
もっとも、家賃保証会社と保証契約を結んでいる場合は、もっと早い段階で厳しい督促が実行される可能性があります。
「家賃保証会社」とは、入居者が家賃を滞納した場合に、大家さんに家賃を立て替えて支払うサービスを提供している会社です。大家さんが家賃の滞納を家賃保証会社に通知して、家賃保証会社が家賃を立替え払いします。家賃保証会社が大家さんに家賃の滞納を知らされてから、立替払いをするまでの時間は家賃保証会社によって異なります。なかには最短3日で立替えを実行できる家賃保証会社もあるようです。
家賃保証会社は大家さんに家賃を立替えた後に入居者に連絡します。早ければ滞納してから数日後には電話で連絡が入ることもあります。電話を無視すると、保証人を立てていれば保証人にも連絡が入ることになります。
つまり、家賃保証会社が間に入っている場合は、3ヶ月ではなくもっと早い段階で、法的手段を含めた督促が行われる可能性があるので、注意が必要です。
2、家賃を滞納した場合の督促方法は?
もちろん、毎月決められた期日までに払うことが当然ですが、体調を崩した、銀行に行く時間がなかったなどの理由で、家賃を滞納してしまうこともあるかもしれません。その場合、どのような対応がなされるかは、家賃保証会社によって異なります。
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(1)家賃保証会社が滞納分を立て替えていない場合
家賃を滞納した場合、まずは大家さんや管理会社が入居者に電話で督促を行います。本人に連絡がとれなければ、連帯保証人や保証人に督促することになるでしょう。それでも、支払いがされず電話にも出ない場合は、督促状が送付されます。電話での督促と同時並行で督促状を送付するケースもあります。
この段階で、支払い時期や方法を相談して、約束を破らなければ次のステップに進むことはありません。連絡を一切無視するなど不誠実な対応をとっていると次の督促手段に移行します。
複数回の督促にもかかわらず、支払わない場合は「内容証明」が送付されます。「期限内に支払わなければ契約を解除する」などの強い文言が記載されているでしょう。内容証明自体に強制力はありませんが、送付した日付、内容などを郵便局が記録するので、「受け取っていない」という言い訳は通用しません。それでも家賃を支払わなければ、強制退去を求められます。退去に素直に応じなければ、訴訟などの法的手続きをとられることになるでしょう。 -
(2)家賃保証会社が滞納分を立替えた場合
家賃保証会社が大家さんに滞納分を立て替えた場合は、立て替えたあと数日で督促がスタートします。
最初は電話による督促です。電話に出なければ連帯保証人や保証人に連絡が行きます。連帯保証人や保証人にも連絡がとれない、支払う意思がないと判断された場合は、訪問による督促が行われます。それを無視していると、内容証明によって督促する通知が届きます。
内容証明まで無視してしまうと、賃貸借契約が解除され、訴訟など法的手続きがとられることになるでしょう。
裁判に出廷しなければ、そのまま敗訴となり給与や資産が強制的に差し押さえられてしまいます。
3、家賃を滞納した場合にできる対策とは
家賃を滞納してしまった場合、まずやるべきことは大家さんや管理会社に速やかに連絡して、支払い予定日を伝えることです。連絡しづらいと感じるかもしれませんが、一番してはならないことが、「連絡をしないこと」や「連絡を無視すること」です。家賃の滞納が1ヶ月分であればなおさら、滞納が長期化してしまう前に連絡をすることをおすすめします。万が一、現在支払えるめどが立たない場合でも、遅れてしまうものの必ず支払う旨をきちんと伝え、頭を下げましょう。
しかしながら、お金がなければ家賃を支払うことはできません。働けるときはまだよいのですが、働けないときなどは、どうしたら家賃を工面できるのか、しっかり考える必要があります。
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(1)自治体に助けを求める
●「住宅確保給付金」
家賃が支払えないために住む場所を失う可能性がある方が利用できる公的制度が「住宅確保給付金」です。給付なので返済する必要はありませんが、支給要件は厳しく設定されています。
①申請日において65歳未満であって、離職等後2年以内の者で、②離職等の前に世帯の生計を主として維持していたこと、③ハローワークに求職の申込みをしていること、④国の雇用施策による給付等を受けていないこと、という条件を満たす人が支給対象者になります。その他、給付金を受けるためには収入要件・資産要件・就職活動要件を満たす必要があります。
●生活福祉資金貸付制度
現在働いている方は、住宅確保給付金は申請できないので、生活福祉貸付制度の利用を検討しましょう。
この制度は、低所得者や高齢者、障害者の生活を経済的に支えるとともに、その在宅福祉及び社会参加の促進を図ることを目的とした貸付制度です。低所得者世帯とは市町村民税非課税程度の世帯とされているので、市町村民税を課税されていない方は、この制度を利用できる可能性があります。
貸付対象世帯と認定されれば、例えば、債務整理のための費用や、滞納した公共料金を支払うためであれば60万円を限度で借りることができます。
●生活保護を受ける
生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的とする公的制度です。
①預貯金や生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却等し生活費に充てること、②働くことが可能な場合はその能力に応じて働くこと、③年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合はまずそれらを活用すること、④親族等から援助を受けることができる場合はまずそれらを活用すること、これらの条件を満たさなければ生活保護は支給されません。また、働いている場合は、最低生活費の不足分のみが支払われることになります。
なお、生活保護費から借金を返済することは認められていません。したがって、借金がある人が生活保護を申請すると自己破産をすすめられることがあります。
生活保護を申請してから結果が出るまでが最長14日かかりますし、支給日は自治体によって異なります。したがって、家賃をすでに滞納している場合は、素早く申請しなければ、次の家賃も支払えなくなってしまいます。 -
(2)家族や大家さんに頭を下げる
公的支援制度は、スピード感に欠ける上に受給できる条件が厳しいため、すでに滞納している家賃の支払いに充当するのは困難です。すぐに家賃を支払いたい気持ちは理解できますが、ない袖は振れません。まずは支払えるめどについて大家さんや家族に話をして、頭を下げるのもひとつの手かもしれません。
4、生活を圧迫する借金を減額する債務整理とは?
家賃を滞納しその後なんとか支払うことができたとしても家賃を滞納してしまった原因を解決しなければ、何度も滞納を繰り返してしまうことになります。家賃滞納の原因が借金にあるのであれば、債務整理を行うことによって、生活を立て直す必要があるかもしれません。
債務整理には以下の4種類があります。
●過払い金請求
グレーゾーン金利が存在していた時期に借金をしていた場合、払いすぎた利息を請求することを「過払い金請求」と呼びます。たとえば、平成19年以前に借金をし、今もなお返済を続けている場合は、過払い金が発生している可能性が高く、過払い金により残りの借金が全額返済できるだけでなく、戻ってきたお金で家賃を支払える可能性が高いです。過払い金請求の時効は、取引終了後から10年間とされています。現在すでに借金を完済していても、取引終了後から10年経過していなければ過払い金は請求可能です。過去に高い金利でローンを組んでいた記憶がある方は、弁護士に相談してみることをおすすめします。
●任意整理
任意整理とは、直接各金融業者と交渉して、将来利息や遅延損害金などを免除してもらい、毎月の支払額も減額してもらって、分割和解を組む手続きのことをいいます。特に過払い金が発生している場合は、借金の大きな減額が見込めます。個人再生や自己破産とは異なり、裁判所に申立てをせずに、依頼を受けた弁護士が金融機関などの債権者と直接交渉をします。
任意整理をすると一定期間クレジットカードやカードローンの契約ができなくなります。
●個人再生
個人再生とは、裁判所に申し立てて借金を減額し、3年から5年で無理のない範囲で返済できるようにする制度です。住宅や車など高額な財産を手放さずに債務の整理を行うことができます。
一定期間クレジットカードやカードローンの契約ができなくなることは任意整理と同じです。
●自己破産
自己破産とは、不動産や車など、20万円以上の財産をすべて処分した上で、借金を全額返済不要な状態にすることをいいます。
一定期間クレジットカードやカードローンの契約ができなくなる上、手続き中に特定の職業に就けなくなるなどの制約もあります。
5、家賃を任意整理の対象にできる?
結論を先に申し上げると、家賃も任意整理の対象となります。そもそも債務整理の対象外となる債務は、税金や社会保険料、罰金、従業員への給与など限られたものしかありません。債務整理の対象外となるものを「非免責債権」と呼びます。家賃は非免責債権と規定されていないので、任意整理を含めた債務整理の対象となります。
具体的には、弁護士に依頼して滞納した家賃の減額を求めることができます。ただし、家賃を任意整理の対象にした場合は、立ち退きを求められるリスクがあるので、おすすめはできません。借金を任意整理する場合も、家賃は対象外にしておくほうがよいでしょう。すでに賃貸住宅から引っ越し実家に戻っており新たに家を借りる必要がない場合は、家賃の任意整理を選択肢に入れてもよいでしょう。
6、債務整理を弁護士に相談するメリットとは
借金が原因で家賃を滞納している場合は、家賃を支払えるような環境を整えることが重要です。借金の返済のために家賃が支払えなくなっている場合は、債務整理を行うことで、家賃を支払えるようになる可能性があります。
債務整理は自分で行うこともできますが、弁護士に相談することをおすすめします。借金問題の実績が豊富な弁護士であれば、依頼者それぞれの状況を踏まえた上で適切なアドバイスをすることができます。
弁護士であれば、借金の期間や金額によって、どのような債務整理の方法が適しているのかを判断するとともに、すべての手続きを代理人として行うことができます。弁護士に依頼すれば、借金や家賃の督促などの対応を含めた債務整理のすべてを任せることができます。
7、まとめ
借金が原因で家賃を滞納してしまった場合、やるべきことは家賃滞納の原因となった借金を整理することです。
ベリーベスト法律事務所新宿オフィスには債務整理問題に精通した実績が豊富な弁護士が在籍しています。家賃滞納や借金で悩んでいる方は、お気軽にご相談ください。お客様に寄り添い最適なアドバイスをいたします。
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