調停調書の法的な効力とは? 公正調書との違いや作成のメリット

2021年03月09日
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調停調書の法的な効力とは? 公正調書との違いや作成のメリット

東京都が公表している「平成30年東京都人口動態統計年報」によると、平成30年度の東京都での離婚件数は、2万2706件で、前年よりも349件減少しています。しかし、東京都全体の離婚率(人口千対)は、1.70で全国の離婚率(1.68)と比べても若干高い水準にあることがわかります。

離婚は、夫婦間で特に揉めていることがなければ、単に離婚届を市区町村役場に提出するだけで成立します。このように、話し合いで解決する離婚方法を「協議離婚」といいますが、そもそも離婚の話し合いをすることが難しいご夫婦や、離婚時に取り決めた条件を相手が守ってくれるか不安に感じている方もいるでしょう。

離婚には、協議離婚だけでなく調停離婚という方法もあります。また、夫婦で取り決めた離婚の条件は、公正証書に残しておくことも可能です。

いずれの方法をとるべきかについては、それぞれのメリットなどを十分に理解してから決めなければなりません。今回は、調停調書の法的な効力について、公正証書と比較しつつ、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。

1、調停調書とは?

調停調書という言葉を聞いたことはありますか? 普段生活している中ではなかなか聞き慣れない言葉だと思いますが、離婚にあたっては重要なものとなります。

以下では、調停調書とは何か、さらに離婚調停の流れについて説明します。

  1. (1)調停調書とは?

    調停調書とは、調停が成立した際に裁判所が作成する書面で、当事者が合意した内容を記載したものをいいます。調停調書は確定判決と同じ効力を有し、記載された内容には法的な拘束力が生じます。

    そのため、調停調書に記載された内容を守らなかった場合には、強制執行の手続きをとることが可能です

    また、離婚調停の調書には、離婚が成立したという事実だけでなく、親権、養育費、慰謝料、財産分与など、離婚に伴う諸条件についても記載されることになります。つまり、これらすべての条件について法的拘束力が及ぶことになるのです。

  2. (2)離婚調停の流れ

    調停調書は、離婚調停が成立した場合に作成されます。

    では、離婚調停はどのような流れで進んでいくのでしょうか。

    ①離婚調停の申立て
    まずは、家庭裁判所に離婚調停の申立てを行います。申立ては、調停申立書と必要書類を提出し、手数料を納付しましょう。離婚調停の申立てが完了すると、2週間前後で申立人と相手方に第1回目の調停期日の日程が通知されます。

    そして、申立てから1か月~2か月くらい先の日程で、第1回調停期日が行われることになります。

    ②第1回目の調停期日
    調停期日の日は、申立人と相手方が裁判所に出廷することになりますが、申立人と相手方で別々の待合室が用意されていますので、裁判所内で直接顔を合わせる心配はありません。

    指定された時間になると、調停室に呼び出されて、初回説明という調停の進め方に関する一般的な説明が行われます。その後に、調停委員が当事者から具体的な話を聞き取ることになります。

    なお、調停委員からの聞き取りの際も、申立人と相手方は交代で調停室に入りますので、ここでも直接顔を合わせる心配はありません。申立人から30分程度話を聞き、次は相手方から30分程度話を聞き、さらに申立人から話を聞くというように、交互に話を聞かれることになります。

    双方の話を聞いた調停委員が橋渡しをすることにより、離婚や離婚に伴う諸条件について夫婦間の合意が成立すれば、1回目で調停が成立することもありますが、大抵の事案では1回目では合意できず、2回目以降の調停が行われます。

    ③第2回目以降の調停期日
    第2回目以降の調停も、第1回目の調停と同じように、申立人と相手方から交互に話を聞く形式ですすめられます。

    ④調停が成立した場合
    離婚や離婚に伴う諸条件についての合意ができた場合、調停が成立します。

    そして、調停で合意した内容は、調停調書に記載されることになるのです

    ⑤調停が不成立となった場合
    離婚調停が不成立となった場合には、調停は終了します。さらに離婚を求める場合には、家庭裁判所に離婚訴訟を提起することになります。

2、似ているようで違う公正調書

調停調書と似たような言葉で「公正証書」というものがあります。公正証書も離婚の際に作成されることがありますので、両者を混同している方もいるかもしれません。

公正証書とは、公証役場という場所で公証人という方が作成する公文書のことをいいます。離婚の場合は、協議離婚の際に作成されます。

夫婦が話し合いによって離婚する「協議離婚」の際に作成されるものが公正証書で、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて離婚をする「調停離婚」の際に作成されるものが離婚調書であると覚えておくとよいでしょう

3、公正証書と調停調書の効力の共通点・相違点

上記のように、公正証書と調停調書は登場する場面が異なります。また、その効力についても違いがあります。調停調書と公正証書の効力の違いと共通点について見てみましょう。

  1. (1)離婚について

    公正証書で離婚の合意をしたとしても、別途離婚届に夫婦が署名捺印をし、市区町村役場に提出する必要があります。

    調停離婚の場合は、夫婦の一方が記入した離婚届と調停調書を市区町村役場に提出するだけで足ります。

    このように公正証書と調停調書では、離婚届に双方の署名捺印が必要か否かという違いがあります

  2. (2)金銭の支払いについて(養育費、慰謝料、財産分与)

    公正証書では、金銭の支払いに関する取り決めをする際には、通常、強制執行認諾文言が付されます。強制執行認諾文言を付することで、公正証書自体が債務名義となりますので、金銭の支払いが滞ったときには、債権者は、裁判手続きを経ることなく、直ちに強制執行の手続きが可能です。

    上記のとおり、調停調書は確定判決と同じ効力を有するので、調停調書も債権者は裁判手続きを経ることなく強制執行の手続きをすることができます。

    このように強制執行認諾文言が付された公正証書と調停調書は、いずれも改めて裁判手続きを経ることなく強制執行の手続きができるという共通点があります

  3. (3)面会交流について

    子どもがいる夫婦の場合には、離婚時に面会交流について取り決めがなされることがあります。

    調停調書で面会交流の取り決めをした場合、相手が約束を守らない場合には、履行勧告や間接強制という手続きをとることができます

    履行勧告は、義務を守らない相手に対し裁判所が注意をするという手続きをいい、間接強制は、義務を守らない者に対して金銭の支払いを命じるという心理的な圧迫を加えて、自発的に義務の履行を促すという手続きのことです。

    他方、公正証書で面会交流の取り決めをしたとしても、上記のような手続きをとることはできず、面会交流調停を申し立てる必要があります

  4. (4)年金分割について

    年金分割の請求手続きは、当事者の双方が年金事務所に出向かなければなりません。しかし、公正証書によって年金分割の合意をし、必要な事前の手続きを済ませていれば、分割する側だけで請求手続きをすることが可能です。

    調停調書で年金分割の合意をした場合も、分割する側が年金事務所に行き、調停調書を提出することで、手続きをすることができます。

4、調停調書で確認するべきポイント

調停調書に記載された内容には、法的拘束力が生じることになります。そして、一度取り決めた内容について変更するのは容易ではありません。

そのため、調停が成立する段階では、以下の内容をよく確認しておきましょう

  1. (1)確認すべき離婚条件

    離婚調停において、特に確認したほうがよいといえるポイントは以下のものになります。

    ●離婚成立の形態
    離婚調停を申し立てた場合、調停離婚による離婚がほとんどですが、例外的に、協議離婚によって離婚することがあります。

    調停離婚とは、その名のとおり、調停調書に離婚の合意が記載される方法です。

    一方、離婚調停における協議離婚とは、離婚調停の場で夫婦の双方が離婚届に記入をし、「申立人が離婚届を提出する」などの合意をして離婚調停を成立させる方法をいいます

    調停離婚の場合、調停をして離婚をしたことが戸籍に記載されるため、その旨が記載されないよう、離婚調停においても協議離婚を行うことがあるのです

    したがって、調停成立の際には、どのような形態で離婚を成立するかについてよく確認しましょう。

    ●離婚届の届出義務者
    離婚届を夫婦のどちらが提出するのかについてもよく確認しなければなりません。

    調停離婚の場合、調停成立によって離婚が成立し、調停成立から10日以内に、離婚届を市区町村役場に提出しなければなりません。10日の期限を過ぎたからといって、離婚が取り消されるということはありませんが、期限を過ぎた場合には5万円以下の過料の制裁を受けることもありますので注意が必要です。

    調停離婚が成立した場合、調停調書には、次のような記載がされます。

    1. ①「申立人と相手方は、本日調停離婚する」
    2. ②「申立人と相手方は、相手方の申出により、本日調停離婚する」


    ①の場合には、申立人が、②の場合には相手方が離婚届の届出義務者になります。

    離婚にあたっては、戸籍の選択や氏の選択の問題もあり、女性の側が届出義務者になった方が、都合がよいケースが多いようです。そのため、女性の方は、自分が届出義務者となるような記載がなされているかどうかをよく確認するようにしましょう。

    ●慰謝料、財産分与の時期・方法・金額
    離婚にあたって、慰謝料や財産分与の支払いを予定している場合には、その時期・方法・金額について誤りがないかをよく確認してください。

    調停調書は、調停において当事者が合意した内容に基づいて作成されますが、その内容が裁判官や書記官に伝わっておらず、調停条項案が合意どおりになっていない可能性もゼロではありません。内容の確認は必須です。

    また、金銭の支払について、特に分割払いとした場合には、債務者が分割の支払いを滞った場合のペナルティについても記載しておくとよいでしょう。

    ●親権者の指定
    夫婦のどちらが親権者と記載されているかを確認しましょう。

    ●養育費の支払い時期・方法・金額
    子どもがいる場合には、養育費に関する取り決めも必要になります

    養育費の場合、子どもが何歳になるまで支払うのか、毎月の支払額はいくらとするのか、支払先の口座は親権者の口座か子どもの口座か、不測の事態(病気、怪我など)や特別な出費(進学、留学など)が発生した場合に協議の余地があるかどうかなどを確認するようにしましょう。

    ●面会交流の時期・方法・頻度
    面会交流の取り決めをしたとしても、あいまいな内容では後々争いになる場合もあります。

    後日、間接強制をすることも考えて、面会交流の時期、方法、頻度などはできる限り詳細に定めておく必要があります

  2. (2)調停は弁護士のサポートが有効

    上記のとおり、調停調書作成にあたっては、確認しなければならないことが多くあります。

    調停が成立する場合は、裁判所が作成した調停条項案(調停調書の案文)を確認し、その場で調停が成立することが多いです。そのため、調停条項案の内容を確認できる時間はあまりなく、その場ですべてを判断しなければなりません。

    しかし、法律に詳しくない方が調停条項案を見たとしても、法的に問題ないかどうかということを判断することは困難です。調停調書については、記載した内容に誤りがあったとしても、後から変更を求めることは困難ですので、成立の場面で十分に確認しておかなければなりません

    弁護士であれば、調停調書が法的に問題ないかを判断できるだけでなく、離婚や離婚に伴う諸条件の交渉などを任せることもできます。そのため、調停離婚を考えている方は、調停の当初から弁護士に依頼をし、弁護士のサポートを受けることがよいでしょう

5、まとめ

公正証書と調停調書は、似たような言葉ですが、それぞれ異なる特徴のある別の文書になります。協議離婚にあたっては、取り決めた内容を公正証書に残しておくということが有効です。

また、調停離婚でも合意した内容がきちんと調停調書に記載されているかどうかをよく確認しなければなりません。弁護士であれば、公正証書の作成も離婚調停のサポートも幅広く対応することができます。

離婚についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスまでお気軽にご相談ください。

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