ジョブ型雇用とは? メンバーシップ型雇用との違いとメリット・デメリット
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新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、多くの企業ではテレワークを導入するなどして、従来の働きからからの変革を迫られています。時代の変化とともに従来の雇用形態にも変化が生じてきています。
そのような中で注目されているのが「ジョブ型雇用」という雇用形態です。従来の雇用形態であるメンバーシップ型雇用との比較されるジョブ型雇用ですが、従来の雇用形態と比べてどのような特徴があるのでしょうか。
今回は、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違いやメリット・デメリットについてべリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。
1、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用
欧米ではジョブ型雇用が大半を占めるといわれていますが、日本ではまだあまり馴染みのない雇用形態です。そこで、まずは、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の概要とそれぞれの違いについて説明します。
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(1)ジョブ型雇用とは
ジョブ型雇用とは、欧米の企業においては主流とされている雇用形態であり、特定のポストに空きが生じた際にその職務(ジョブ)・役割を遂行できる能力や資格のある人材を社外から獲得、あるいは社内で公募する雇用形態のことを指します(※)。ジョブ型雇用では、労働者の採用時点において職務内容等を明確に定め必要となる人材の採用が行われますが、その特定の職務(ジョブ)やポストが不要となった場合は、雇用自体が無くなってしまいます。
専門的な能力を有する労働者が辞めてしまったという場合に、そのポストを埋めるために同様の資格や能力を有する人を採用するということを行っている企業も多いと思いますが、それを一般化したものがジョブ型雇用という制度です。
(※出典:「Society 5.0に向けた大学教育と採用に関する考え方」) -
(2)メンバーシップ型雇用とは
メンバーシップ型雇用とは、年功序列や終身雇用などが前提とされる多くの日本企業において古くから採用されている日本型雇用形態のことをいいます。
メンバーシップ型雇用では、労働者の採用にあたっては、職種や仕事内容を限定することなく、その人の能力や人柄を評価して採用が行われます。仕事内容や勤務地などについて限定がありませんので、労働者は採用後、企業内での部署の異動や転勤などを命じられることがあります。
ジョブ型雇用が「仕事に人をつける」雇用形態であるのに対して、メンバーシップ型雇用は「人に仕事をつける」という違いがあります。 -
(3)専門的なキャリア形成の重要性を考慮した司法判断も
令和3年1月、専門外の業種への配転命令の有効性を争っていた訴訟について、名古屋高等裁判所は、当該配転命令を無効であると判断しました。
この事案は、運送会社で運行管理を任されていた労働者に対して倉庫勤務を命じる内容の配転命令が出されたものです。裁判所は、専門職である運行管理者の資格を生かして業務にあたっていくことの期待を法的保護に値するものと評価し、また、不慣れな肉体労働を命じられる可能性もあることから労働者が通常甘受すべき程度を著しく超えていた等として、配転命令を無効としました。
従来は、大学職員や外科専門医等高度な技能を持った労働者について配転無効を認めることが多かったですが、当該判例は、運行管理者についても同様の扱いをし、保護の範囲を広げたことに特徴があります。従来のメンバーシップ型雇用の見直しの必要性が叫ばれる中、専門的なキャリア形成の期待と利益を重視していく雇用形態に、意識が変わっていく可能性があります。
2、ジョブ型雇用のメリット・デメリット
ジョブ型雇用には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
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(1)ジョブ型雇用のメリット
ジョブ型雇用のメリットとしては、以下のものが挙げられます。
① 企業のメリット
ジョブ型雇用においては、採用時に職務内容や求めるスキルをジョブディスクリプションによって明示しますので、企業が求める人材を効率的に確保することができます。また、職種を限定することによって、専門的なスキルを有する労働者を育てることができることも企業側の大きなメリットであるといえます。
② 求職者のメリット
ジョブ型雇用では、労働者としても仕事内容、勤務地、勤務時間などの具体的な条件を把握したうえで応募することになりますので、採用後の企業と労働者との間のミスマッチが生じにくくなります。また、特定の業種に特化することができますので、自分の能力やスキルを最大限に発揮することが可能になります。それによって、メンバーシップ型雇用よりも高額な収入を得ることが可能になるケースもあります。 -
(2)ジョブ型雇用のデメリット
ジョブ型雇用のデメリットとしては、以下のものが挙げられます。
① 企業のデメリット
ジョブ型雇用において労働者が行うことができる業務は、ジョブディスクリプションによって定められた内容に限られるのが原則です。そのため、他の部署で人材が不足したという事情があったとしてもジョブ型雇用によって採用された人を異動させることはできません。
また、メンバーシップ型雇用のように異動や転勤などによってさまざまな業務を経験させて人材を育成していくということができませんので、幅広い知識と経験を有する人材を育成したい場合には不向きな雇用形態であるといえます。
② 求職者のデメリット
メンバーシップ型雇用では、さまざまな研修によって必要となるスキルを身に着けていくことができますが、ジョブ型雇用では、自主的な努力によってスキルを磨いていく必要があります。
また前述のとおり、その特定の職務(ジョブ)やポストが不要となった場合は雇用自体が無くなる可能性があります。
3、メンバーシップ型雇用のメリット・デメリット
メンバーシップ型雇用には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
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(1)メンバーシップ型雇用のメリット
メンバーシップ型雇用のメリットとしては、以下のものが挙げられます。
① 企業のメリット
メンバーシップ型雇用では、採用時に職務や勤務地などの限定をしていませんので、会社の都合で労働者の職務内容や勤務地などを変更することが可能です。ある部署で欠員が生じた場合には、別の従業員を異動させるなどの方法によって柔軟に対応することができるという点がメリットといえます。
また、メンバーシップ型雇用は、同じ企業において長期間雇用されることを前提としていますので、労働者に対してさまざまな経験を積ませることによって、将来の管理職候補を育てることが可能になります。
さらに、メンバーシップ型雇用では、新卒一括採用による採用手続きをとっていますので、コストを抑えつつ若く優秀な人材を採用することが可能になるといえます。
② 求職者のメリット
メンバーシップ型雇用では、終身雇用を前提とした採用になりますので、社内において人材を育成しようとする体制が整っているといえます。日常的な研修やトレーニングによって、経験の少ない若手であっても仕事につきやすい制度であるといえます。
特定のスキルがなかったとしても、長期間継続して勤務することによって昇給が見込めるということも、安定した雇用を求める労働者としては大きなメリットといえます。
また、職種や勤務地を限定していませんので、担当している部署が閉鎖されるなどの事情があったとしても異動や転勤などによって、引き続き当該企業で働き続けるということが可能です。 -
(2)メンバーシップ型雇用のデメリット
メンバーシップ型雇用のデメリットとしては、以下のものが挙げられます。
① 企業のデメリット
メンバーシップ型雇用では、労働者に対して定期的に移動や転勤を行い幅広い経験を積ませることができる反面、専門的な知識やスキルを身につけた労働者を育成するということは難しくなります。
また、メンバーシップ型雇用では、労働者のスキルや能力ではなく、基本的には勤続年数や年齢によって待遇が決まってきます。優秀な労働者がいたとしても能力に見合った評価を受けることができない場合が多く、労働者のモチベーションが低下するリスクがあります。
② 求職者のデメリット
メンバーシップ型雇用では、会社都合によって異動や転勤を命じられることになります。結婚して子どもがいる労働者の中には、遠方への転勤を命じられた場合に、単身赴任によって家族とはなればなれにならなければいけなくなるというデメリットがあります。
4、導入には十分な検討と社内体制の整備が必要
ジョブ型雇用は、従来のメンバーシップ型雇用の問題を解決することができる制度であるとして、近年注目されています。
しかし、日本においては終身雇用制度を前提とするメンバーシップ型雇用の文化が根強く残っており、雇用の安定を図ることができるメンバーシップ型雇用にもそれなりのメリットがあります。そのため、ジョブ型雇用を導入するにしても、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へと完全に移行するのではなく、専門的スキルを必要とする部署を対象として限定的に導入していくとよいでしょう。
そして、ジョブ型雇用を導入する場合には、従来の雇用条件や人事評価システムについても見直す必要がありますので、きちんと企業内部の体制を整備してから導入を進めていくようにしましょう。
5、まとめ
ジョブ型雇用を導入する企業も増えてきておりメンバーシップ型雇用中心であった日本の雇用システムが徐々に変わりつつあります。今後、ジョブ型雇用の導入するのであれば、ジョブ型雇用のメリットとデメリットを十分に理解した上で、導入に向けて適切な体制を整備していく必要があります。その際には、企業の実情を十分に把握している顧問弁護士が役に立つといえるでしょう。
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