コンカフェと風営法違反|逮捕・摘発されないために注意すべきこと
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新宿や秋葉原では現在、お店のテーマを打ち出したコンセプトカフェ、いわゆるコンカフェが増加しています。中には、流行に乗ってコンカフェを経営したいと考える方もいるのではないでしょうか。
しかし一方で、風俗営業法(以下、風営法)違反で摘発されるコンカフェや、店長や経営者が逮捕されたという報道も耳にするところです。
この記事では、風営法に違反することなくコンカフェを経営するために、開業にあたって必要な営業許可や経営する際の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。
1、コンカフェ(コンセプトカフェ)とは
コンカフェとは、お店独自のコンセプトやテーマを取り入れたカフェなどの飲食店のことをいいます。
たとえばメイドカフェは、メイドというコンセプトを取り入れたカフェのため、コンカフェの一例といえます。
そのほか、アニメやゲーム、童話のキャラクターのコスプレ衣装で接客したり、猫などの動物を取り入れたり、漫画とコラボするようなカフェもあります。
コンカフェは「カフェ」となっていますが、昼間に営業しコーヒーや軽食を提供するカフェ業態のお店もある一方、深夜まで営業しお酒も提供するバー業態の店舗もあります。
ガールズバーよりもコンセプトカフェの方がソフトな印象なため求人しやすいという理由から、バー業態のコンカフェにしているという背景もあるようです。
2、コンカフェで風営法違反により逮捕・摘発される事例
コンカフェでは、具体的にどのようなケースが風営法違反で逮捕・摘発されているのでしょうか。事例を元に見ていきましょう。
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(1)コンカフェで逮捕・摘発された事例3つ
- ① 令和4年某日、東京都内のコンカフェの店長・経営者ら3人が逮捕されました。複数回にわたり、未成年のスタッフによる酒の提供・接待を行わせた疑いがあるとのことです。
- ② 令和4年某日、名古屋のコンカフェが無許可でホストクラブのような接待サービスを提供し、風営法に違反した疑いで経営者ら2人が逮捕されました。
- ③ 令和4年某日、東京都新宿区のコンカフェで、客が20歳未満と知りながらアルコールを提供したなどとして経営会社の役員が逮捕されました。
コンカフェによる法令違反事例では、このように、
- 18歳未満を採用し接客させてしまう風営法違反
- 営業許可なく接待をしてしまう風営法違反
- 20歳未満に酒を提供してしまう風営法違反
のケースが考えられます。
以下、詳しく解説していきます。 -
(2)18歳未満を採用し接客させてしまうことによる風営法違反
風営法は、18歳未満の者に客の「接待」をさせることを禁止しています(風営法22条1項3号)。
接待とは、風営法2条3項に定義されており、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」とされています。
警察庁が公表している「接待の判断基準」をまとめると、- (ア)スタッフとの会話やサービスなどを期待して来店する客に対して
- (イ)その期待に応えるために、相手を特定して
- (ウ)積極的に談笑やお酌などのサービスを行うこと
となります。
具体的には、特定少数の客の近くで、継続して談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為は接待に該当すると示されています。
このような「接待」行為を18歳未満の者にさせた場合には、風営法に違反になります。 -
(3)営業許可なく接待をしてしまうことによる風営法違反
接待を伴う飲食営業を行う場合、風営法で定義される「風俗営業」に該当するため、風俗営業許可が必要となります。しかし、無許可で接待をしてしまったことによって摘発されるケースも多数あります。
「接待」とは、前述のとおり、風営法2条3項により「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」とされていますが、お酌をしたり、水割りを作ったりするものの、すみやかにその場を立ち去る場合には「接待」に該当しないとされています。
接待に該当するかどうかの線引きは難しいものがあるため、悩んだ場合は弁護士に相談することをおすすめします。 -
(4)20歳未満に酒を提供してしまう風営法違反
未成年は「未成年者飲酒禁止法」により、飲酒が禁止されています。また、風営法においても20歳未満の人に酒類やたばこを提供することは禁止されています。
令和4年から成人年齢が18歳に引き下げられましたが、飲酒や喫煙は20歳からのため注意が必要です。 -
(5)児童福祉法にも注意が必要
風営法の規制は、18歳未満を接待させることを禁止していますが、児童福祉法の規定にも注意が必要です。
児童福祉法では、15歳未満を接待させること(厳密には、「酒席に侍する行為を業務としてさせる行為」)を禁止しており、これに違反した場合には3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられることになり、風営法違反よりも重い処罰の対象となります(児童福祉法第34条第1項第5号、第60条第2項)。
3、コンカフェの開業に必要な営業許可や対策
コンカフェの営業を風営法に違反せずに行うにはどのような許可が必要となるのか、その対策とともに説明します。
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(1)営業許可は3種類ある
営業許可の取得の方法としては以下の3パターンがあり得ます。
- 飲食店営業許可のみの場合
- 飲食店営業許可及び深夜酒類提供飲食店営業の届出
- 飲食店営業許可及び風俗店営業許可の場合
どのような業態のコンカフェを営業するかどうかによって、取得すべき営業許可の内容が異なります。
・飲食店営業許可のみの場合
たとえば、動物系のコンカフェを考えている場合など、接待は行わず、深夜0時以降の酒類の提供は伴わない営業であれば、飲食店営業許可のみということになります。なお、飲食店営業許可は食品衛生法に基づくもので都道府県知事の許可が必要になります。
・飲食店営業許可及び深夜酒類提供飲食店営業の届け出
接待は行わないものの、深夜0時以降も酒類を提供する場合には、飲食店営業許可のほかに深夜酒類提供飲食店営業の届け出を行う必要があります。バー業態のコンカフェを検討する場合には、この類型にあたります。
・飲食店営業許可及び風俗店営業許可の場合
ボックス席を設けて特定のお客さんにお酌をするなどの接待を行うような場合には、飲食店営業許可のほか風俗営業許可が必要となります。この許可を取得することによって無許可で接待を行ったことを理由に摘発されることはなくなります。
もっとも、深夜0時以降に酒類を提供することは許されません。風俗営業許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出は両方を併用することはできないため注意が必要です。 -
(2)風営法に違反しないための対策
前述のとおり、どのような業態のコンカフェを目指すかによって取得する営業許可が変わる点に注意が必要です。
「接待」をするタイプのコンカフェをするにもかかわらず、風俗営業許可を取得しない場合は、無許可営業となります。
また、接待をしないタイプのコンカフェの経営を検討される場合で風俗営業許可を取らない場合には、接待にならないような店舗運営や仕組み作りが必要となります。
さらに、風俗営業許可を取っていない場合はもちろん、風俗営業許可を取っていたとしても、18歳未満を接待させることはできません。採用面接時には公的な書類を確認し、慎重にスタッフの採用活動を行う必要があります。
4、コンカフェで風営法違反により逮捕された場合の罰金・処罰
風営法違反で逮捕起訴された場合には、以下のような刑事処分を受ける可能性があります。
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(1)18歳未満を接待させた場合
18歳未満の者に客の接待をさせた場合は、風営法第50条第1項第4号によって、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれらが併科されることになります。
また、児童福祉法ではありますが、15歳未満に接待させた場合には、児童福祉法第60条第2項により、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれらの併科が科せられることになり、風営法違反よりも重い処罰の対象となります。 -
(2)風俗営業許可を受けずに接待した場合
無許可で接待を行った場合には、風営法第49条第1号により、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはこれらを併科することとされており、風営法の刑罰の中では、最も重い処罰を受ける可能性がある類型になっています。
5、まとめ
昨今、コンカフェは警察からも注視されており摘発が頻繁に報道されています。風営法に違反した場合には重い処分がなされてしまう可能性があり、お店の構想段階から十分に弁護士と相談しながら進めることが重要といえます。
ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスでは、風営法に関連する相談も随時受け付けております。経営に際してお困りの場合には、お気軽にベリーベスト法律事務所 新宿オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています