ガールズバーでの接待行為は風営法違反? 新宿の弁護士が解説

2022年06月27日
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ガールズバーでの接待行為は風営法違反? 新宿の弁護士が解説

令和2年10月、東京都新宿区歌舞伎町や新宿区道玄坂などのガールズバー8店舗が風営法違反(無許可営業)の疑いで摘発され、経営者や従業員らが逮捕されました。

新宿歌舞伎町にも数多くのガールズバーがありますが、ガールズバーの開業を考えている方の中には、いわゆる風営法(正式名称「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」)に違反しないか心配している方も多いのではないでしょうか。

ガールズバーとは主に女性店員が働くバーのことをいい、キャバクラやスナックと異なり風俗営業の許可は不要のように思えます。しかし、接客の方法や設置機材によっては風俗営業の許可が必要となり、許可を取らないと風営法違反になるおそれがあるのです。

そこで本コラムでは、ガールズバーと風営法をテーマに、摘発されるケースや違法となる接待行為とは何かを中心に、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説していきます。

1、ガールズバーとは

  1. (1)ガールズバーの定義

    一般的に、ガールズバーは女性バーテンダーが中心となって酒類を提供しカウンター越しに接客する店と考えられています。つまり、客への「接待」を行わないことを前提にした業務形態の店になります。このため、「風俗営業許可」を必要としません。

  2. (2)ガールズバーの開業に必要な手続き

    ガールズバーを開業するためには、適切な手続きを行う必要があります。手続きを行わないまま営業をすると、取り締まりを受けることになるでしょう。

    ①飲食店営業許可申請
    食品衛生法の規定に従って都道府県知事の許可が必要になります。ガールズバーも飲食店に該当するためこの許可が必要です。保健所の窓口へ申請します。

    ②深夜酒類提供飲食店営業の届け出
    深夜時間帯に酒類を提供するための届け出です。警察署に提出します。ここでいう深夜時間帯とは、午前0時(一部地域は午前1時)から午前6時までを指します。

2、風営法における接待とは

接待行為をともなう営業を行う場合、「風俗営業許可」が必要です。
風営法第2条3項は、接待を「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」としています。

しかし、これだけではどのような行為が接待とみなされるか判別が難しいところです。以下、具体的に見ていきましょう。

  1. (1)接待とみなされる行為

    いわゆるキャバクラやホストクラブでは客の横にはべり、歓談したりお酌をしたりします。これは風営法における接待にあたります。

    他方、カウンターが設置してあるガールズバーであっても、特定の客と長い時間会話をしていれば、もはや世間話とはいえず接待とみなされる可能性が出てきます。どの程度が「長い時間」であるのか明確な基準はないものの、数十分にわたり特定の客と会話をしていれば、警察に接待にあたると判断されても不思議ではありません。また、カウンター越しでも客と手を握り合ったまま談笑すれば、接待とみなされてもおかしくありません。

    線引きが曖昧なだけに難しいですが、カウンター越しであれば問題ないなどの認識があるようでしたら、改める必要があります。

    ほかにも、たとえば次のような場合は接待とみなされる可能性が高いでしょう。

    • 客とカラオケをデュエットする
    • 特定少数の客に対してダンスや歌唱を披露する
    • 客と一緒にダーツなどのゲームをする
    • キャスト(店員)の指名や同伴制度がある
  2. (2)接待ではない行為

    一方、以下のような行為はそれだけでは接待とはみなされないでしょう。

    • 注文されたお酒をカウンター越しに提供する
    • お酌をしたり水割りを作ったりするがすぐにその場を離れて後方で待機する
    • あいさつやちょっとした世間話をする
    • 演奏、上演行為


    ホテルのディナーショーのように、不特定多数の客に対して歌唱や楽器の演奏、ダンスなどを披露する行為も風営法の接待には該当しません。

  3. (3)深夜営業と風俗営業許可は併用可能?

    ここまでの内容を見て、深夜時間帯も営業しつつ、接待行為も行うガールズバーを開業したいと考える方がいるかもしれません。しかし、深夜における酒類提供飲食店営業と風俗営業許可の併用はできません。

    これは、地域の治安や環境を守ることが主な理由です。仮に風俗営業許可を取得した場合、接待行為は可能ですが、深夜時間帯の営業は不可能ということになります。他方、深夜における酒類提供飲食店営業を届け出た場合、深夜時間帯の営業は可能ですが、接待行為ができません。

    どちらの申請を選択するべきかについては、ご自身がどのような店を開業したいのかによって変わってきますので、事前にしっかり考えておきましょう。

3、ガールズバーが摘発されるケースと処分内容

ガールズバーが違法営業となる場合、主に以下のケースが挙げられます。

  1. (1)風俗営業許可を受けずに接待を行う

    無許可営業に該当し、風営法第49条の規定により「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、又はこれの併科」が科されるおそれがあります。

  2. (2)風俗営業許可を受けながら深夜営業をしている

    深夜酒類提供飲食店営業届出の規定に違反することになるため、風営法54条の規定により「50万円以下の罰金」が科されるおそれがあります。

  3. (3)そのほかのケース

    酒を提供する場所は児童の福祉に有害だとみなされるため、18歳未満の者を働かせていると、風営法のみならず、労働基準法(第62条第2項)や児童福祉法(第34条第1項)など、複数の法律に違反するおそれがあります。

    また20歳未満の客にお酒を提供すると、未成年者飲酒禁止法違反になり、店側が処罰対象となります。

    これらの違法営業を続けると逮捕され、長期間の身柄拘束を経て懲役刑や罰金刑が科せられ、前科がつく可能性があります。罰を受けずに済んだ場合でも、営業停止や営業許可取り消しなどの行政処分がくだされるおそれもあります。

4、風営法違反を犯さないために

健全にガールズバーを営むためには、下記のような取り組みをするといいでしょう。

  1. (1)接待行為をしない環境を整える

    風営法違反になるか否かは、「ガールズバー」「キャバクラ」などの呼称ではなく、実態が重要になります。風営法に抵触しないよう、接待行為を回避するために店内の構造やルールを整理しましょう。

    • 指名、同伴、アフター制度を作らない
    • カウンターを設置してカウンター内で接客する
    • カラオケやダーツなどの遊戯設備を置かない


    こうすることで、従業員のみならず客としても「女性店員がいる一般的なバーだな」と認識を持ちやすくなり、積極的な接客に期待しなくなります。警察の立ち入り調査が入った場合でも、接待行為ができない状況を主張することができます。

  2. (2)弁護士などの専門家へ相談する

    開業前の段階で、法律上の留意点をアドバイスしてもらいましょう。
    各種届け出や許可申請の書類に関しても、一般の方が作成するには非常に骨が折れる作業となりますので、それらの手続きに関しても一任するとよいでしょう。

    従業員採用や仕入れ先との契約など、ガールズバー経営に際して必要となる契約関係についてもサポートを受けることができます。

5、まとめ

今回はガールズバーの開業をお考えの方に向けて、風営法やそのほかの法律に抵触するケース、対処法を解説しました。

ガールズバー経営では、接待行為によって風営法違反になるケースが多く見受けられます。実態としてどのような接客をしているのかが重要なポイントとなりますので、健全な経営のためにもどのような接客が違法となるのか、ぜひ知っておきたいところです。

また、法律上の注意点や手続き上の問題など、少しでも疑問に感じることがあれば、弁護士に相談されるとよいでしょう。ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスでも、開業や経営に関するご相談をお受けしています。

ガールズバーの経営をお考えの方、現在経営していてお悩みがある方は、お気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています