東京の企業が申請できるテレワーク助成金とテレワーク導入時の注意点とは

2020年07月10日
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東京の企業が申請できるテレワーク助成金とテレワーク導入時の注意点とは

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、東京都では時限的に「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」制度を設けるなど、さまざまな企業支援策を打ち出しました。

テレワークは、新型コロナウイルス感染症対策(コロナ対策)としてだけでなく、働き方改革推進のためにも普及が求められている働き方です。

しかし、企業の経営者の方にとっては、導入検討時には「費用はどうなるのだろう」「就業規則などはどう変えたらいいのだろう」といった点が気にかかるものでしょう。

本コラムでは、これらの点を解消できるよう東京の企業が申請できるテレワーク助成金と労務管理における注意点について、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説していきます。

1、東京の企業が申請できるテレワーク助成金制度

東京の企業がテレワークを導入するときには、国または東京都における助成金制度を利用できる可能性があります。それぞれ助成率や要件などが異なるので、会社にとって最もメリットの大きい助成金制度を選択して申請する必要があります。

また、助成対象などは随時変更される可能性もあるので、ホームページなどで最新の情報を押さえておくとよいでしょう。

  1. (1)国のテレワーク助成金制度

    国のテレワーク助成金制度は、現時点では2種類のコースがあります。

    ひとつ目は、通常のテレワークコースです。

    国では「働き方改革推進支援助成金」として、労働時間などの改善および仕事と生活の調和を推進するためにテレワークに取り組む中小企業事業主に対し、導入費用の一部を助成する制度を設けています。

    ふたつ目は、新型コロナウイルス感染症対策(コロナ対策)のための特例コースです。

    このコースは、コロナ対策としてテレワークを導入する事業主を支援するために、時限的に設けられました。そのため、特例コースは、令和2年5月29日までに交付申請書と事業実施計画書などの必要書類をテレワーク相談センターに提出しなくてはなりませんでした。

    特例コースについては、随時ホームページでチェックするなどして正確な情報を得ておくとよいでしょう。

    なお、国のテレワーク助成金の対象企業の範囲は、資本金・出資額や常時使用する労働者の人数によって判断されます。そして、以下のように業種によって、異なる要件が設定されているため、注意しましょう。

    • 小売業(飲食店を含む)……5000万円以下または50人以下
    • サービス業……5000万円以下または100人以下
    • 卸売業……1億円以下または100人以下
    • その他の業種……3億円以下または300人以下
  2. (2)東京都のテレワーク助成金制度

    東京都では、東京しごと財団が「はじめてテレワーク(テレワーク導入促進整備補助金)」という制度を設けています。この助成金制度を利用できれば、基本的にテレワーク環境の構築にかかった費用を100%(従業員数に応じて上限金額あり)助成してもらえる可能性があるため、抑えておきましょう。

    助成金の支給対象となる費用としては、東京都が選定したテレワーク環境を構築するための機器・関連ソフトなどの導入費用やモバイル端末などを整備した費用などが該当します。

    また、テレワークの導入によって就業規則を変更することになった際に、専門家へ作成を委託した費用も含まれるため、隙がない就業規則にするために、弁護士への依頼も検討してみてください。

    ただし、「はじめてテレワーク」は、以下のような要件を満たした会社が対象になります。

    • 東京都が実施するテレワーク導入に向けたコンサルティングを受けていること
    • 都内に勤務している常時雇用する労働者を2人以上999人以下、かつ6か月以上継続して雇用していること
    • 就業規則にテレワークに関する規定がないこと
    • 東京都が実施する2020TDM推進プロジェクトに参加していること


    詳しくは、東京しごと財団の公式ホームページなどで確認されるとよいでしょう。

    なお、新型コロナウイルス感染症の拡大防止および緊急時の事業継続対策として、東京都においては「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」制度が設けられました。しかしこの制度は申請期間がより限定されたものであるため、本コラムでは取り上げていません。

2、「通常コース」と「特例コース」の違いとは?

国が設けるテレワークの2つの助成金制度を比較しながらご説明していきます。

  1. (1)通常コース

    通常コースは、令和2年度に「時間外労働等改善助成金」から「働き方改革推進支援助成金」に名称が変更されました。

    このコースの特色は、成果目標の達成状況に応じてテレワーク導入のためにかかった費用を助成するというものです。

    基本的に、成果目標を達成できれば、かかった費用の4分の3が助成金として支給されます。一方、成果目標を達成できなかったときには、支給される助成金はかかった費用の2分の1に縮減されるため、注意してください。

    ただし、支給される金額は、1人当たりの上限額(達成40万円・未達成20万円)や1企業あたりの上限額(達成300万円・未達成200万円)の範囲に限られます。

    また、テレワークを新規で導入する中小企業事業主だけでなく、テレワークを継続して活用する中小事業主も対象となり、最大2回まで受給が可能です。

  2. (2)特例コース

    特例コースは、令和2年2月17日以降に新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを新規に導入する中小企業事業主を助成するものです。支給を受けるためには、令和2年2月17日から同年5月31日にテレワークを新規で導入し、実際にテレワークを行った労働者が1人以上いなければなりません(少なくとも1人は直接雇用)。

    助成額は、対象経費の合計額の2分の1です(1企業当たりの上限額100万円)。

    通常コースの交付申請を行っている事業主でも、補正や変更申請を行えば特例コースの支給対象になりえます。

    また、特例コースでは、派遣労働者がテレワークを行う場合も助成対象になり、5月31日までに経費として支出されたパソコンやルーターなどのレンタル・リース費用も助成対象になります。

3、テレワークの労務管理上の注意点とは?

在宅勤務やモバイルワーク、サテライトオフィス勤務と形態は多少異なっても、テレワークを利用する従業員には労働基準法の適用があります。

従業員の自宅でテレワークを実施する際の労務管理上の注意点について見ていきましょう。

  1. (1)労働条件を明示する

    労働基準法施行規則では、労働契約締結時に就業場所を明示する必要があることを規定しています。そのため、在宅勤務であれば、自宅を就業場所とすることを明示する必要があります。

  2. (2)労働時間を把握する

    使用者である会社は、労働時間を適正に管理し、従業員の日ごとの始業時刻や終業時刻を確認して記録しなければならないとされています。

    特に、在宅勤務では途中で離席することも少なくないことから、どのような方法で労働時間を管理するのか、会社側と労働者側で話し合い、ルールを確立しなければなりません。

  3. (3)業績評価・人事管理などの取り扱いを決める

    テレワークを実施するには、テレワーク社員の業績評価や人事管理などをどのように取り扱うのかを決めておく必要があります。

    もし、テレワーク従業員と出社する従業員との間で異なる取り扱いをするのであれば、従業員に丁寧に説明するとともに、就業規則を変更しなければなりません。

  4. (4)通信費や情報通信機器などの費用負担を決める

    テレワークを実施する際には、通信費や情報通信機器の購入費用やリース費用などが発生します。そのため、費用負担について、あらかじめ決めておかなくてはなりません。

    なお、テレワークを行う従業員に通信費や情報通信機器などの費用を負担させるときには、就業規則を変更する必要があります。

  5. (5)社内教育の取り扱いを決める

    テレワークを行う従業員について、出社する従業員と異なる社内教育や研修制度と行う場合には、就業規則を変更する必要があります。

4、就業規則の変更における注意点とは?

労働基準法で定められている就業規則の作成・届出事項についてテレワーク導入によって変更が生じたときには、就業規則を変更しなければなりません。

就業規則を変更する際には、労働条件の不利益変更にならないよう注意する必要があります。合理性のない就業規則の不利益変更については、無効とされる可能性があるからです。

なお、就業規則の不利益変更に合理性があるかについては、「労働者が受ける不利益の程度」「労働条件の変更の必要性」「変更後の就業規則の内容の相当性」「労働組合などとの協議の状況」などから総合的に判断されます。

しかし、具体的にどのような変更が不利益変更にあたるのかを判断することは、難しいでしょう。そういったときには、顧問弁護士に相談することがおすすめです。

5、まとめ

本コラムでは、東京の企業が申請できるテレワーク助成金と労務管理などにおける注意点について、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説しました。

テレワーク導入の際は、助成金申請や就業規則の整備などを専門家に相談しながら進めることがおすすめです。

ベリーベスト法律事務所では、ご利用しやすい顧問弁護士サービスをご提供しています。
新宿オフィスの弁護士も、テレワーク導入をはじめとして様々な法律に関するアドバイスをすることができますので、ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています