オンカジ・インカジ含む違法カジノは利用者も逮捕される可能性がある
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令和5年2月、新宿区内にある「違法カジノ」が警視庁に摘発されました。雑居ビル内でインターネットカジノ店を営んだ常習賭博容疑で店員8名、客4名が賭博容疑で現行犯逮捕されたことが報道されています。
歌舞伎町など新宿区内の繁華街ではたびたび違法カジノが摘発されています。一斉摘発の際には、冒頭の事件のように運営者だけでなく利用客も事情を尋ねられて捜査の対象になってしまいます。偶然居合わせただけでも逮捕されてしまうことがあるので、利用は厳に慎むべきでしょう。
このコラムでは、オンカジ(オンラインカジノ)、インカジ(インターネットカジノ)を含む違法カジノの利用で適用される犯罪や罰則、逮捕された場合の流れについて、新宿オフィスの弁護士が解説します。
1、「違法カジノ」とはどのような場所なのか?
わが国では、ギャンブルについて法律による厳格な規制が敷かれており、法律の規制に反する場合はすべて違法となります。
まずは「違法カジノ」がどのような場所なのかを確認しましょう。
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(1)無許可のギャンブルが行われている
ギャンブルとは、賭博・博打を指す用語です。賭けごとといえば、競馬・競輪・ボートレース・オートレースなどのように投票券を購入してオッズに従い配当金が支払われるもの、パチンコ、宝くじやスポーツ振興くじをイメージするでしょう。
これらはすべて法律による規制を受けて厳格に運営されているものであり、許可なく運営・開催することは認められません。 -
(2)日本国内ではインカジ・オンカジ含め「カジノ」は違法
カジノといえば海外では公然と運営されている娯楽施設であり、現地法によって許可や検査を受けた合法ギャンブルが行われる場所として認識されています。しかし、現行の日本法においては、カジノを許可する法律は存在しません。
平成30年に成立したIR整備法、いわゆる「カジノ法案」は国内におけるカジノを解禁するものですが、あくまでもカジノを含む統合型リゾートの設置を目的としたものです。パチンコ店のように市中におけるカジノの開業までもが認められるわけではありません。
つまり、日本国内においてバカラやブラックジャックといったカードゲーム、ルーレット、ダイスを使ったギャンブルを運営する、統合型リゾート以外のカジノは、すべて「違法カジノ」と呼ばれる存在だといえます。
なお、インターネットカジノを行える店舗である通称「インカジ」や「闇カジノ」も違法です。冒頭の事件のように取り締まりを受ければ逮捕される可能性があります。また、自宅などから海外のカジノサイトへ接続して行う「オンカジ(オンラインカジノ)」も日本国内では違法となり、取り締まりの対象です。
■参考:「オンカジは違法! 海外サーバーのオンラインカジノの利用も犯罪に?」
2、違法カジノで逮捕されるケース
違法カジノは法律の規制に反するものであり、運営者である店側と利用者である客側の両方が罪に問われます。
つまり、違法カジノに関与すれば、たとえ客であっても逮捕される可能性があるということです。
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(1)店側・客側の両方が罪に問われる
違法カジノは、運営者である店側だけが罪に問われるわけではありません。そもそもギャンブルは、いくら大規模な施設で運営しようとも利用者がいなければ成立しないので、客側も同様に罪を問われるのです。
違法カジノの収益の多くは暴力団などの反社会的勢力の資金源になっているといわれています。このような現状に照らせば、利用者も厳しく規制を受けるのは当然でしょう。 -
(2)一斉摘発では現行犯逮捕が多い
違法カジノの摘発では、営業中に捜査員が現場に踏み込み、関係者や証拠を確保する「一斉摘発」と呼ばれる手法がとられるケースが多数です。
一斉摘発の場合は、店側・客側を問わずその場にいる全員が捜査の対象となり、実際にギャンブルに興じていれば利用客であっても現行犯逮捕されるおそれがあります。
違法カジノの事例ではありませんが、平成10年にはタレントとして活動していた漫画家が新宿区内の麻雀店で賭け麻雀をしていたところで一斉摘発を受け、現行犯逮捕されたこともあります。 -
(3)後日に通常逮捕されることもある
一斉摘発の際には居合わせなくても、違法カジノから押収した証拠や関係者の供述などから過去の利用が明らかになれば、後日になって逮捕状が発付されて逮捕されるおそれもあります。
逮捕状に基づく逮捕を「通常逮捕」と呼びますが、逮捕後の流れは現行犯逮捕と変わりません。どちらの場合でも身柄を拘束され、警察・検察官による厳しい取り調べを受けることになります。
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3、違法カジノで問われる罪。賭博罪の種類と罰則
違法カジノに関与すると、どのような罪に問われるのでしょうか?
利用者である客側と運営者である店側とで、それぞれが問われる罪を確認します。
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(1)客側は「賭博罪」に問われる
違法カジノを利用した客は、刑法第185条の「賭博罪」に問われます。なお、ほかの賭博に関する罪と区別するために「単純賭博罪」とも呼ばれます。
賭博罪でいう「賭博」とは、偶然の勝負に関して財産上の利益を賭けてその得喪を争うことと定義されています。給料などのような正当な報酬ではなく、単なる偶然の勝敗によって財物を得ようとすることは、社会の風俗を害する行為として厳しく処罰されるのです。
また、何度も賭博を行っていると、刑法第186条1項の「常習賭博罪」に問われる可能性があります。
賭博罪と常習賭博罪の罰則は以下のとおりです。- 賭博罪……50万円以下の罰金または科料
- 常習賭博罪……3年以下の懲役
賭博罪に規定されている「科料」とは、1000円以上1万円未満の金銭徴収を受ける刑罰のことです。両罪を比較すると、賭博罪では比較的に低額な金銭徴収を受けるにとどまるのに対して、常習賭博罪は懲役しか規定されていません。
有罪となれば確実に懲役となってしまうという点に注目すれば、常習賭博罪は重罪だといえます。なお、賭博罪には例外があり「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」は処罰されません。これは、飲食代金やジュースなどのようにごく少額の財物が対象となる場合の例外規定であるため、違法カジノの利用においては適用されないでしょう。 -
(2)店側は「賭博場開帳等図利罪」に問われる
違法カジノの運営者である店側は、刑法第186条2項の「賭博場開帳等図利罪」に問われます。
賭博を行うには胴元が賭場を用意する必要があり、また、賭場の存在が賭博を助長するという構図には間違いがありません。社会の風俗を乱す原因として、賭博場開帳は厳しく罰せられます。
罰則は3か月以上5年以下の懲役で、賭博罪・常習賭博罪よりも格段に重い刑罰が規定されています。
4、違法カジノの利用で逮捕された場合の流れ
違法カジノを利用した容疑で逮捕されてしまうと、その後はどのような流れで処罰を受けるのでしょうか?
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(1)身柄を拘束されて取り調べを受ける
賭博罪・常習賭博罪の容疑で逮捕されると、まず警察に48時間以内の身柄拘束を受けます。この段階では警察署の留置場に身柄を置かれ、警察官による取り調べが行われます。
逮捕された時点で行動の自由は制限されるため、自宅へ帰ることも、会社へ通うことも、携帯電話で家族や会社に連絡することも認められません。
逮捕から48時間以内に検察官へと送致され、そこでもさらに検察官による取り調べを受けます。検察官は被疑者を起訴するか、あるいは不起訴とするかの判断を下すために取り調べを実施し、送致から24時間以内に決断を下さなくてはなりません。しかし、この時点では取り調べが尽くされておらず、判断を下すための材料が足りないことがほとんどです。
そこで検察官は、裁判所に対して勾留の許可を請求します。裁判官が勾留を認めた場合、初回の勾留決定で10日間、さらに勾留延長も認められた場合には追加で最大10日間、合計20日間までの身柄拘束が可能です。
勾留が決定すると、被疑者の身柄は警察に戻され、検察官による指揮を受けながら警察による取り調べが続きます。また、事案によりますが、20日間のうちに2~3回程度は検察官による取り調べも行われ、賭博行為の認否や常習性の有無、反省しているのかなどを確認されます。 -
(2)検察官が起訴・不起訴を判断する
勾留が満期を迎える日までに、検察官は被疑者を起訴するか、それとも不起訴とするのかを判断します。20日間を超える勾留は認められないので、この段階が起訴・不起訴の最終判断となります。
検察官が「罪に問うべき」と判断すれば起訴され、被疑者だった立場から「被告人」に変わります。刑事裁判を待つ間はさらに勾留によって身柄を拘束され、保釈されない限りは判決の日まで釈放されません。
一方で、検察官がさまざまな事情を考慮して不起訴処分とした場合は、刑事裁判は開かれず、即日で釈放されます。実際に違法カジノを利用してしまった場合には、その事実を素直に認めたうえで、運営者である店側の賭博開帳等図利罪の立件に向けて協力的な姿勢を見せれば、不起訴となる可能性も高まるでしょう。ただ、不起訴になるかどうかは事案により異なりますので、自白すれば確実に不起訴になるというわけではありません。取り調べにどのような対応をするかは弁護士との相談が必要になります。 -
(3)刑事裁判で判決が下される
検察官が起訴に踏み切った場合は刑事裁判が開かれ、裁判官が証拠を精査したうえで審理し、有罪・無罪の判決が下されます。
単純賭博罪の場合は罰金・科料のみが規定されているため、有罪判決を受けても金銭徴収を受けるのみでただちに釈放されます。
一方で、常習賭博罪の場合は懲役しか規定されていないので、有罪となれば確実に懲役が科せられます。
執行猶予がつかなければ釈放されずに刑務所へと収監されてしまいます。執行猶予がつくかどうかは、賭博の回数、賭博に使用した金額、反省の有無などさまざまな事情を考慮して判断されます。反省していることは執行猶予をつけるかの判断において重要な要素であるため、違法カジノを利用してしまった場合には、深く反省しており今後は違法カジノを含めたギャンブルに手を染めないと誓う意思を示すことが必要になるでしょう。
5、まとめ
インカジはもちろんオンカジに至るまで、違法カジノを利用すると賭博罪・常習賭博罪が適用され、一斉摘発を受ければその場で現行犯逮捕されてしまうおそれがあります。
また、カジノから押収された証拠などから利用が判明すれば、一斉摘発の場にはいなくても後日逮捕されてしまうこともあるので、逮捕・刑罰に不安を感じている方は弁護士への相談をおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスには、刑事事件の弁護実績を豊富にもつ弁護士が在籍しています。賭博罪・常習賭博罪の容疑をかけられてしまった場合の逮捕の回避や不起訴処分の獲得に向けて全力でサポートしますので、まずはお問い合わせください。
違法カジノを利用したことで逮捕に不安を感じている、すでに容疑をかけられているので取り調べに際する正しい対応を知りたいといった方へのアドバイスも可能です。ご家族からのお問い合わせもお受けできますので、ご本人さまがすでに逮捕されている場合は当オフィスへのご相談をご検討ください。
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