オレオレ詐欺の受け子をやってしまった! 刑罰や逮捕後の流れを解説
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令和元年中に新宿区内で発生した特殊詐欺の件数は105件、被害総額は約3億520万円と依然として高い水準で推移しています。
平成30年の統計でも特に被害額の大きいオレオレ詐欺は、気づかずに詐欺グループの一員として加担してしまうこともあるようです。たとえ、犯罪を行っている自覚がなかったとしても、逮捕されるリスクは当然あります。
この記事では、オレオレ詐欺の受け子で逮捕された場合の刑罰や逮捕後の流れ、減刑のためにできることについて、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。
1、オレオレ詐欺の刑罰
オレオレ詐欺の多くは、組織的に行う犯罪です。
役割ごとに分担され、指揮を執る「主犯格」、その指揮のもとに電話をかける「かけ子」、実際にお金を受け取る「受け子」、そして振り込みによってお金をだまし取るケースでは現金を引き出す「出し子」が存在し、役割ごとに罪の重さが違う傾向があります。
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(1)詐欺罪
詐欺罪とは、「人を欺いて財物を交付させた」場合に成立する犯罪です。(刑法第246条)
刑罰を受けた場合、10年以下の懲役刑が科されます。
オレオレ詐欺においては、役割ごとに罪の重さに違いはあるものの、主犯格だけでなく、受け子やかけ子も詐欺罪を科せられる可能性があります。
なお、詐欺罪は組織的な犯行が多く、悪質性が高いと考えられているため、起訴される可能性が他の犯罪よりも高くなっています。 -
(2)窃盗罪
窃盗罪とは、他人の財物を窃取することで成立する犯罪です。(刑法第235条)
先述したように、詐欺罪では、「人を欺いて財物を交付させた」ことが要件になります。しかし、出し子の多くは被害者の口座から不正に金銭を引き出したにすぎず、人を欺いたとまではいえない場合があります。そこで、オレオレ詐欺の「出し子」は詐欺罪ではなく窃盗罪で逮捕される可能性があります。
窃盗罪として刑罰を受けた場合には、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。 -
(3)執行猶予か実刑か
オレオレ詐欺によって詐欺罪に問われた場合、前述の通り有罪となる可能性が高いでしょう。しかし、必ず実刑が下り、刑務所に入らなければならないわけではありません。執行猶予付き判決が下る可能性があるためです。
執行猶予とは、早期に社会復帰できるよう、刑の執行を一定の期間猶予する制度をいいます。たとえば、「懲役1年、執行猶予3年」の判決を言い渡された場合、3年間罪を犯すことがなければ刑罰権が消滅され、刑務所に行く必要はなくなるのです。
執行猶予がつくかどうかは、いくつもの要件を総合的に考慮して判断されます。執行猶予付き判決となる可能性がある要素- 反省している
- 前科・前歴がない
- 被害金額が少ない
- もらった報酬が少ない
- 法務局への供託もしくは被害弁償がされている
- 未成年である
- 監督者が存在する
上記はあくまでもオレオレ詐欺で逮捕された際に執行猶予がつく可能性があるポイントです。最終的に執行猶予を付けるかの判断をするのは裁判官になります。
少しでも執行猶予の可能性を高めるには、速やかに弁護士に相談されることをおすすめします。
2、オレオレ詐欺で逮捕された後の流れ
ここでは、逮捕された後の流れをお伝えします。
詐欺事件は犯罪の性質から組織犯罪である可能性が高く、証拠隠滅の可能性が高いなどの理由から取り調べは厳しいものとなることが予想されます。
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(1)逮捕から送致
逮捕されると、まず警察による48時間以内の取り調べが行われます。
その後、検察庁に身柄が移されて24時間以内の取り調べが行われ、この間に勾留の必要性を判断されます。
なお、この72時間の間に被疑者と接見できるのは弁護士のみに限られます。たとえ家族であっても直接会ったり電話をしたりすることはできません。
また、オレオレ詐欺のような組織犯罪の場合、事前に逮捕された際の対応を組織から指示されていることがあります。さらには、組織側が自分たちお抱えの弁護士を派遣して情報を収集しようとすることもあるでしょう。しかし、しょせん組織にとって受け子やかけ子は捨て駒でしかありません。組織の指示に従ってもよい結果につながることはほぼありません。
場合によっては、より厳しい取り調べを受けることになるので、組織の指示に従わず、適切に応じることが賢明です。 -
(2)勾留から勾留延長
勾留は原則10日間ですが、検察が裁判所に勾留延長請求を行い、認められればさらに10日間延長される可能性があります。
オレオレ詐欺は組織的な犯罪であるため、事件を明らかにするために時間がかかることから、勾留が最長の20日間になるケースが多いでしょう。
また、原則として勾留中は家族や友人等の面会が可能です。しかし、オレオレ詐欺の場合はまだ逮捕されていない人物と連絡をとることによって証拠が隠滅されることを防ぐため、接見禁止処分が下される可能性があります。接見禁止処分が下ると勾留期間に入っても弁護士以外とは面会や手紙のやり取りができません。 -
(3)起訴・不起訴
勾留期間の満了までに起訴または不起訴が判断されます。
起訴された場合は勾留が継続され、保釈されない限り裁判が終わるまで身柄を拘束されるのが一般的です。
また、不起訴になれば釈放されますが、オレオレ詐欺の受け子は複数の被害者のもとに派遣されることが多い立場にあります。被害者が複数いる場合、1件ずつ別の事件として扱われるため、一つの事件で不起訴になっても別の事件で再逮捕されるケースは少なくありません。
なお、勾留期間に再逮捕されると、最大で23日間身柄の拘束が延長されます。
3、減軽のために弁護士にできること
オレオレ詐欺は悪質な犯罪です。取り調べが厳しいものになる傾向にあるため、最初の対応が重要となります。
途中で供述を撤回するなどの行為は、警察官や検察官の心証を悪くするため避けたいところです。ここでは不起訴を目指すために弁護士ができることについて紹介します。
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(1)取り調べについてのアドバイスと弁護活動
逮捕から勾留までの72時間で、接見が許されているのは弁護士のみです。
厳しい態度で接する警察官や検察官に囲まれて不安もあるでしょうし、突然の逮捕による動揺も相まって冷静に応対するのは難しいと考えられます。弁護士が接見することで取り調べへのアドバイスが可能となります。
また、弁護士に依頼すれば、家族からの差し入れを渡したりメッセージを伝えたりすることができるため、精神的な支えにもなるでしょう。
さらに依頼を受けた弁護士は、被疑者に対する弁護活動を行います。具体的な再犯防止策の提案や監督者の確保、犯罪組織との断絶など、より適切な結果へ導くための弁護活動が可能です。 -
(2)示談交渉や被害弁償
起訴されてしまったとしても、執行猶予付きの判決を目指すためには、示談の成立や被害弁償がほぼ確実に必要となるでしょう。
示談成立の有無は起訴・不起訴の判断にも大きく影響するため、できる限り早い段階で被害者との交渉を始める必要があります。
しかし、加害者の親族が交渉を試みても被害者と面会にすら応じてもらえない可能性が高く、時間がかかってしまうことも珍しくありません。被害者側からしてみれば、詐欺グループからの報復は恐ろしいものですし、だまされた怒りもあり、加害者の親族には会いたくないというのが本音でしょう。
その点、弁護士であれば交渉に応じてもらえるケースが多く、示談書に今後一切の接触はしないなどの条件を加えて被害者との和解を目指します。 -
(3)接見禁止処分に対する不服申し立て
弁護士は、接見禁止処分に対する不服申し立てを行うことができます。
オレオレ詐欺の場合、証拠隠滅などのおそれから勾留期間中には接見禁止処分の可能性があることは先述した通りです。
しかし、接見禁止処分が下されたとしても家族に会いたいという気持ちがあるでしょうし、実際に面会することで安心感につながるでしょう。
4、弁護士に依頼するタイミング
オレオレ詐欺の受け子で逮捕された場合、たとえ初犯だったとしても実刑判決が下される可能性があります。
また、詐欺と知らずに関わってしまったとしても、すでにオレオレ詐欺自体が社会問題になって久しいこと、バイト代が高額だったなど詐欺にかかわっていることに気づける要因が多いはずです。そのため、知らなかったという主張が認められない可能性があります。
また、一度取り調べ中に証言したことは記録に残ります。あとから覆すことは非常に難しくなるのです。そのため、取り調べなどにおいては初期段階から弁護士のアドバイスを受け、適切に受け答えすることが重要です。
さらに、弁護士を通じて被害者に対して損害賠償と謝罪を行う示談を行ったほうがよいでしょう。示談を成立させて被害者が処罰感情を和らげたかどうかは、起訴不起訴の決定から裁判で処罰を下す際の判断材料のひとつとなりえます。
不当に重い罪に問われてしまう可能性を少しでも回避するためにも、逮捕された場合は速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
今回は、オレオレ詐欺の受け子で逮捕された場合の刑罰や逮捕後の流れについてお伝えしました。
アルバイトと思っていたら実はオレオレ詐欺だったという方もいらっしゃるでしょう。しかし、これだけオレオレ詐欺が世間一般に認識されている以上、知らなかったでは済まされない可能性が高いといえます。
ご自身やご家族がオレオレ詐欺に関与してしまいお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスまでご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています