ゴルフ中のケガで損害賠償を請求するには? 請求方法を新宿の弁護士が解説!
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ゴルフは何歳からでも始めることができるスポーツとして大変人気があります。その一方で、硬い球を高速で飛ばすため、危険が伴うスポーツでもあることを忘れてはなりません。
趣味や会社の接待でゴルフに行き、ボールが当たりそうになったなど、危険な思いをしたことがある方も多いのではないでしょうか。中部地区のゴルフ場325か所を対象にした大学の研究調査によると、年間で159件も救急車が出動する大きな事故が起きていることが報告されています。内訳としては、脱水や熱中症など内科的疾患が55.3%、打球や骨折など外科的疾患が44.7%であり、プレイを楽しむときは注意を払う必要があるでしょう。
しかし、ゴルフ場でいくら気を付けても思いがけないケガを負わされてしまうケースがあります。そこで、本コラムは、ゴルフ場で負傷した場合、損害賠償を請求する相手は誰になるのか、どのような手続きを取るべきなのかなどについて、新宿オフィスの弁護士が解説します。
1、ゴルフ場での事故の実態
ゴルフ場では、さまざまな事故が発生しています。ゴルフは、プレーヤーによっては、時速300キロものスピードでゴルフボールを飛ばせるため、万一他人に当たるなどした場合は重大な事故にもつながるスポーツです。ゴルフ場では、負傷事故はもちろん、死亡事故も発生しています。
しかし、そもそもゴルフ場で他人のボールが当たってケガをした場合に、損害賠償請求ができるのでしょうか? スポーツには多少の危険はつきもののため、相手方に損害賠償請求することにちゅうちょする方も多いかと思います。
しかし、日本では、故意(わざと)や過失(不注意)で相手に損害を与えた場合は、その損害を賠償しなければいけないというルールがあります。これは民法第709条で定められている、「不法行為責任」というものです。
ゴルフ事故では、よほどの特殊な事情がない限り、わざと相手にゴルフボールをぶつけてケガをさせようとする人はいないでしょう。つまり、ゴルフ事故では、うっかりぶつけてしまった、という「過失」によって生じたケガが問題になります。そして、発生したゴルフ事故それぞれの状況によって、誰にどのような過失があり、それがどのようなケガという損害を招いたのか、という判断が必要になります。
つまり、ゴルフ場でのゴルフ事故には、プレーヤーの不注意によるものと、ゴルフ場の安全管理などの問題によるものがあり、それぞれ責任の所在や損害賠償の請求先が異なることになるのです。
過失の程度、つまり「どの程度注意しなければいけないか」という判断については、プレーヤーには、自分の力量などに応じて打球が届く範囲に他のプレーヤーなどがいないことを確認しなければならないという注意義務が課せられていると考えられています。
キャディーの合図で打った打球が隣のホールにいた被害者にぶつかり肋骨を折ったケースでは、「自分の技量に応じ打球が飛ぶ可能性のある範囲を十分に確認すべき義務があり、加害者が十分に確認すれば被害者がいることを確認できた」として、プレーヤーの注意義務違反を厳しく認めた裁判例もあります。(東京地方裁判所平成18年7月24日判決)
以下、それぞれのケースに応じて、さらに詳しく見ていきましょう。
2、プレーヤーに損害賠償責任があるケース
ゴルフ場で発生した事故では、まず事故の相手プレーヤーに対して損害賠償を請求することになります。
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(1)プレーヤーに求められる注意義務の範囲
ゴルフは、ゴルフボールを高速で打ち出すスポーツである以上、プレーヤーには安全に楽しむために自分の力量に応じたプレイをし、状況を確認して危険を避けるよう注意しなければいけないという義務があると考えられています。そこで、プレーヤーがこの注意義務を怠って危険なプレイをして他人にケガをさせるなどの損害を与えた場合には、プレーヤーの過失(不注意)があったとして、不法行為に基づく損害賠償請求ができます。
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(2)プレーヤーの責任を認めた裁判例
過去の裁判例でプレーヤーの過失を認めたものとしては、以下のようなケースがあります。
●同じホールの140ヤード前にいた前の組の被害者プレーヤーにボールが当たりケガをさせた事故
プレイの前後の状況から前の組のプレーヤーがいることを確認できたはずなのに、全体を見渡す場所に移動して確認するなどしなかったことに過失があるとして損害賠償が認められました。(東京高等裁判所判決平成6年8月8日)
●グリーン近くにいた同伴のプレーヤーにアプローチショットが当たりケガをさせた事故
ショットの際に同伴プレーヤーの位置や行動の確認を怠ったことに過失があるとして損害賠償が認められました。ただし、この事故では被害者側の過失も大きいと判断されています。(東京地方裁判所判決平成3年9月26日)
3、プレーヤー以外の責任を認めた裁判例
ゴルフ事故では、加害者プレーヤーのショットによって被害者プレーヤーがケガなどをした場合でも、キャディーの合図が引き金になった場合や、ゴルフ場の構造そのものが事故を招きやすかったなどの事情がある場合があります。このような場合は、実際にケガをさせたのは加害者プレーヤーであったとしても、キャディーやゴルフ場側に責任が認められるケースがあります。
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(1)キャディーの責任を認めたケース
ゴルフ事故における過去の裁判例では、キャディーの業務の性質からキャディーの責任を認めたものがあります。
具体的には- キャディーは、プレーヤーからキャディーフィーを受領して競技者を援助していること
- キャディーは、ゴルフコースの状況などを熟知していること
- キャディーは、ゴルフ場の従業員としてプレーヤーに生じる危険を防止し安全を確保すべき注意義務があること
これがキャディーの責任の根拠とされています。
実際の裁判例では、キャディーの合図で打った打球が被害者に当たってケガをさせた事故で、キャディーの責任を認めたものがあります。(大阪地方裁判所判決平成12年10月26日) -
(2)ゴルフ場の責任を認めたケース
ゴルフ場の構造上、周りが見えにくかったり、思わぬスライスになるようなコースだったりして、ひやりとした経験がある方もいるのではないでしょうか。ゴルフ場に思わぬ穴があり落下してケガをした場合のように、コースに問題がある場合では、ゴルフ場の責任が認められることがあります。
日本の法律では、民法第717条において、土地の設備などに欠点や欠陥があり、それが理由で損害が生じた場合は、占有者や所有者が損害を賠償する責任を負うと定められています。そこで、ゴルフ場が通常備えるべき安全性を備えていなかったために事故が起きた場合は、ゴルフ場を運営管理する会社は事故の損害を賠償するというルールとなっています。
過去の裁判例でゴルフ場の責任を認めたものとして、次のようなものがあります。
●加害プレーヤーのショットが大きくそれ、隣のホールのプレーヤーに当たりケガを負わせた事故
ゴルフコースの構造上、隣のホールからボールが飛んでくる危険があったのにネットを設置するなどの対策を採らなかったことに過失があるとして、ゴルフ場の責任が認められました。この事故では、打球を打ったプレーヤー本人には過失はないと判断されています。(東京地方裁判所判決昭和60年5月29日)
4、ゴルフ事故は弁護士に相談を!
ゴルフ事故では、加害者側のプレーヤーだけでなく、被害者側にも周囲に気を配るなどの注意義務があるとされています。したがって、打球が当たるなどしてケガをした場合でも過失相殺され、損害賠償の金額が大きく減額されることがあります。また、プレーヤーの打球が当たってケガをした場合に、打った本人に損害賠償を求めるべきなのか、ゴルフ場側に責任を求めていくべきなのかについても、コースやプレイの状況を把握した上で請求していく必要があります。
このような判断や、過失の程度の検討を個人でするのは難しいケースが多いでしょう。弁護士ならば、過去の裁判例などをもとに状況にかなったアドバイスや方針を立てることができるので、ゴルフ事故に遭った場合には、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
今回は、ゴルフ事故に巻き込まれてケガをした場合に損害賠償請求できるかどうか、また誰に対してどのような請求ができるかについて説明しました。ご紹介した過去の裁判例からも明らかなように、ゴルフ事故の場合は誰の責任を追及していくかによってアプローチの方法が大きく変わり、それによって受け取る損害賠償額が左右されることもあります。事故当時の状況の把握や、誰の責任を追及していくかの判断、相手方との交渉は、時間がかかる上にそろえる資料も多くなります。
ゴルフ事故でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスまでお気軽にご連絡ください。損害賠償請求事件の実績が豊富な新宿オフィスの弁護士が、あなたを強力にサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています