口頭弁論とはどんなもの? 弁護士が解説
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民事訴訟において、口頭弁論とは原告と被告の事実の主張及び証拠の提出を公開の法廷で裁判官に対して口頭で行う手続きのことです。第1回口頭弁論の期日までに答弁書を提出したり、第2回口頭弁論が開かれる際には、準備書面を用意したりと、さまざまな対応が必要になります。
裁判になりかねないトラブルを抱えている方や、訴訟手続きについて詳しく知りたい方であれば、実際に裁判が起きた場合に備えて、口頭弁論について理解しておくとよいでしょう。
そこで今回は、裁判全体の流れや口頭弁論の日に行われること、裁判における弁護士の役割について、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスの弁護士が解説します。
1、裁判全体の流れ
まず、裁判全体の流れについて解説していきます。なお、この記事では口頭弁論について解説していくので、民事訴訟の流れを紹介します。
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(1)原告による訴状の提出
原告、あるいは代理人である弁護士によって、訴状などの必要書類を提出します。民事訴訟はこの手続きから始まります。
なお、訴状には以下の内容を記載します。- 原告と被告の氏名、住所
- 被告に求めること(請求の趣旨)
- 請求の原因となること(紛争の要点)
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(2)裁判所が訴状を審査して受領後、被告へ訴状の送付
裁判所が原告によって提出された訴状などの書類を審査し、不備がなければ受理されます。その後、第1回口頭弁論期日を決定するために、約1週間前後で裁判所から原告に連絡があります。また、このタイミングでは被告には連絡されません。
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(3)口頭弁論期日の決定・訴訟係属
原告と裁判所の話し合いによって、第1回口頭弁論期日が決定した後に、裁判所から訴状、呼出状、答弁書催告状、証拠書類などが被告に送達されます。この時点で、裁判所で審理の上判断がされるべき状態になり、「訴訟係属」となります。
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(4)被告による答弁書の提出
被告は送達された訴状を確認し、原告が主張している請求に対して自分自身の主張を答弁書に記載して提出する必要があります。
答弁書には、以下のように記載します。- 請求の趣旨に対して、認める、または認めない(請求の趣旨に対する答弁)
- 紛争の要点に対して、認める、認めない、または認知していない(請求の原因に対する認否)
この時点では、簡単な主張のみで構いません。その後、証拠や証人を用意してから詳しく反論することが可能です。
被告によって記載された答弁書は、第1回口頭弁論期日の約1週間前までに裁判所と原告に送付します。 -
(5)原告による証拠や証人の準備
原告は答弁書が届いたら内容を確認し、それに基づいて証拠書類や証人の準備を進めます。例えば貸金返還請求訴訟の場合、証拠書類の例として、金銭のやり取りがあったことがわかる受領書や借用証書、証拠となる写真や録音テープなど、請求の趣旨に関係するあらゆるものが挙げられます。
また、証人を依頼した場合は、裁判所に証人申請する人や尋問予定時間、尋問する内容などを記載した証拠申出書を提出しなければなりません。 -
(6)審理
審理では、口頭弁論が行われます。内容については、次章で詳しく解説します。
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(7)判決、または和解
口頭弁論が終わり、裁判所が判決を出せると判断した場合、弁論の終結が宣言されます。そして、判決言渡期日が決定し、その日に判決が下されます。
なお、民事訴訟は判決が必ず下されるわけではありません。民事訴訟が進んでいる中で、原告と被告が和解すれば、判決を待たずに裁判は終わります。また、裁判所からも和解を促されるケースもあります。
もし和解が成立すれば、内容を記載する和解調書を作成し、この和解調書は民事訴訟の判決と同一の効力を持ちます。つまり、和解調書の内容を履行しなかった場合、強制執行をすることが可能です。 -
(8)控訴・上告
判決言渡期日に判決が伝えられると、訴訟は一旦終了します。ただし、判決が確定するのは判決言渡期日(又は判決書の受取り日)からさらに2週間後です。原告・被告側が判決に同意できない場合は、2週間以内であれば上級の裁判所に判決を改めて審査してもらうために控訴できます。
控訴した裁判所の判決にも納得できなければ、さらに上級の裁判所に上告することが可能です。この場合も、2週間以内に判断して、手続きしなければなりません。
2、口頭弁論の日に行われることとは
口頭弁論ではどのようなことが行われるのでしょうか。口頭弁論の概要とともに、確認していきましょう。
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(1)口頭弁論と陳述擬制
口頭弁論では、裁判所が原告と被告それぞれの主張を口頭で直接聞きます。裁判所が第1回口頭弁論期日を指定し、原告と被告が出廷します。
ただし、第1回口頭弁論期日は被告の予定を考慮せずに日程が決められるため、被告が欠席せざるを得ないケースもありえます。
そこで、第1回口頭弁論期日にのみ、被告には陳述擬制が認められています。陳述擬制とは、事前に答弁書を提出しておくことで、口頭弁論に欠席した場合でも答弁書の内容を陳述したものとみなすという民事訴訟の扱いのことです。しかし、第1回口頭弁論期日までに答弁書を用意していない場合や、第2回口頭弁論期日以降は適用されません。 -
(2)第1回口頭弁論期日に行われること
第1回口頭弁論期日には、原告と被告が事前に提出した訴状や答弁書などの準備書面に基づいて、裁判長にそれぞれの言い分を伝えます。なお、あらかじめ準備書面を提出しているため、内容を口頭で説明することはありません。裁判官が訴状や答弁書を陳述するかどうか確認してくるので、「陳述します」と回答すれば、準備書面の内容で問題ないことになります。事前に提出した書類の内容を口頭で確認する理由は、口頭で述べられた主張が裁判の基礎となると定められているからです。
原告と被告の主張に矛盾がみられた場合、裁判長から質問や、次回の口頭弁論までに準備して明らかにするようになどの指示があります。 -
(3)第2回口頭弁論期日以降から行われること
口頭弁論の回数に決まりはありません。必要性が認められれば何回でも実施され、原告と被告の言い分が矛盾している部分について、精査や確認が続けられます。
このように、原告と被告の主張が食い違っている部分を整理して明らかにする作業を「争点整理」といいます。そして、争点について証拠による立証が必要な場合は、証拠の追加提出や弁論準備手続き、証人尋問、当事者尋問などが行われます。
約1〜2か月ごとに口頭弁論が開かれ、原告が用意した準備書面を被告に提出し、被告はそれに対する準備書面を提出する、という流れを繰り返すことになります。原告と被告の主張が出し尽くされた段階に入ると、和解協議や集中証拠調べ(尋問)が実施されます。
3、裁判における弁護士の役割
民事訴訟において、弁護士は以下のようなことを行うことが可能です。
- 原告の代わりに裁判を起こす
- 原告・被告の代わりに法的な主張を行う意代理人の立場となる
さらに、弁護士は依頼人から訴えたい内容を聞き、アドバイスすることも重要な役割です。依頼人が提供する証拠や、相手方の主張などから裁判を適切に進めるべく、どのような主張をするべきか提案してくれます。証人を依頼するときは、証人とのやり取りや、証人から争点を解決するような事実を引き出すことなども役割のひとつです。
また、相手方の言い分や準備書面などから、依頼人の主張を修正するように促したり、新しい証拠を探したりしてくれます。そして、裁判の妥協点を判断し、適切な和解を提案することも弁護士にしかできないことです。
4、まとめ
この記事では、裁判全体の流れや口頭弁論で行われること、弁護士の役割について解説しました。
口頭弁論は裁判において、判決に直接関わってくる重要な手続きです。1回だけ行われるのではなく必要と判断されれば、2回、3回と開かれます。その際には、証拠を追加で提出したり、証人を立てたりしなければなりません。さらに、相手方の主張や準備書類に対して、自分が有利になる主張を考えることが必要です。
ただし、争点を解決したり、裁判を有利に進めたりするためには、適切な法解釈が不可欠です。そのため、これから民事訴訟を起こしたい方は、実績豊富な弁護士に相談することがおすすめです。裁判のサポート以外にも、相手方との交渉や、必要であれば和解への提案もしてくれます。
裁判になりかねないトラブルを抱えている方、民事訴訟を起こしたいが自分ひとりでは裁判を進めるのが不安な方は、ベリーベスト法律事務所 新宿オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています